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第1166話 『認識阻害』も偶には仕事する

「飛空艇召喚!!」


 俺が高らかに言い放った途端、雲一つない真っ青な空に、にじみ出るようにして現れる白銀の〇。

 夢の中でなら今朝ぶり、現実だと実に四日ぶりのダンデライオン号である。


 ん? 何だろう? 『四日ぶりじゃなくて四か月ぶりだろ!』ってツッコまれているような気がするな。

 この世界に来てから一月ちょっとしか経ってないのに、『四か月ぶり』なんてツッコミ、意味分かんないからスルーするけど。


 さて、俺にとっては数日ぶりにはなるが、既に見慣れた光景。

 シャーロットやシュリ、アレク君達にとっても同様の飛空艇登場シーン。

 レイアちゃんだと未だ数回程度なので慣れていないせいか、なんとなく目がキラキラしている。


 しかしレウスさん、ゴルナさんの二人は、初めて見せる召喚シーンのはずなのに至って平静だった。

 火龍の王とその妻ともなると、飛空艇が現れた程度では心は動かされない様だ。


 まぁこの二人はいい。本命は別にあるからな。

 いきなり飛空艇が召喚されるなんて度肝を抜くようなシーンなのだ。

 火龍姿になったレイアちゃんにビビっていたエレさんなら、きっとこの登場シーンにも吃驚仰天してくれている事だろう。


 いや、もしかしたら驚きの余りジョバーっとやっちまってるかもしれん。

 中身はともかく、見た目だけは見目麗しい女性にジョバーをさせてしまったかと思うと、ちょっと申し訳ない気持ちになるな。

 せめて何か一言断ってからの方が良かったのか? なんて思いながらエレさんの様子を伺うと、彼女の脚元に水たまりが……なんて事は無く、至って平静だった。


 あれ? ビックリしてジョバーは?

 もしくは、「こんな素晴らしい飛空艇を召喚できるなんて、ショータは間違いなく迷い人なんだね。キャー素敵! 抱いて!」なリアクションは?


 ま、そんな両極端なリアクションまでは期待していなかったけど、よもや完全にドスルーされるのは想定外だったな。

 って、そうか。エレさんは日頃からフベルトゥス商会の飛空艇を見慣れているのか。

 だからいきなり飛空艇が現れても、特に驚いた様子が見られないのか。


「……えーっと、それが迷い人の証拠ってヤツなのかい?」

「え?」

「え? じゃないだろ。なんかいきなり叫んだから、もしかして迷い人の証拠ってヤツを見せるのかと思ってたけど、何も起きないじゃないか。まさか、今叫んだのがその証拠ってヤツなのかい?」

「いや、違いますけど……え? 分からない?」

「なにかあるのかい? さっき叫んだ言葉からすると、飛空艇を呼ぶような感じだったけど」


 まさか、冗談とかからかってるとかでは無く、マジで分からないのか?

 町の近くだからと少し高めに召喚したけど、それでも全長45m(目測)ものラグビーボールは、見失うようなサイズではないのだが。


 ……って、そうか、『認識阻害』か。

 エレさんには船が認識しにくくなる『認識阻害』の効果が出てしまったのか。

 レイアちゃんにしろレウスさん達にしろ、普通にダンデライオン号を認識してたからな。

 つい機能の存在を忘れていたぜ。


 となると、エレさんに飛空艇の存在を認識させるには、機能からの除外対象に指定しないとなのか。

 そのためには彼女を『船員』に指定する必要があるのだけど、それには船に乗せる必要がある。

 そのためにはエレさんに飛空艇の存在を認識してもらわないと……と堂々巡りになるな。

 ま、もう少し低い高度で召喚しなおせば済むんだけどな。


 三度目の再召喚で、ようやくエレさんにも飛空艇の姿をお披露目できた。

 町が近いからと小刻みに高度を下げたのが手間取った原因だが、まぁ認識阻害の効果範囲が分かったので良しとする。


 もっとも、エレさんにすら認識されないのなら、ちょっと離れた町の人では尚更認識できないだろうって事に気づいたのは、エレさんが認識した後だった。

 まさしく後の祭り状態だな。


 そんなちょっとした苦労話が入りつつ、エレさんは飛空艇の姿を目の当たりにしたんだけど、なんだか反応がおかしい。

 初めはダンデライオン号の偉容に声を失っているのかと思ったけど、どうにも違う感じだ。


 次に思い至ったのは、ダンデライオン号の姿だ。

 よくよく考えたら、ダンデれもん様の姿は世間一般の飛空艇とはまるで違う。

 まぁ俺の知る世間一般の飛空艇ってフベルトゥス商会の船しか知らないけど、それでも白銀のラグビーボールと帆船では別物に思われても仕方ないだろう。


 ま、そこはそういうモンだと納得してもらうしかない。

 世間一般で認識されている姿とかけ離れていようとも、スキルで『飛空艇召喚』と謳われている以上、ダンデライオン号は飛空艇なのだから。

 つまりウチの飛空艇が正しい『飛空艇』であり、他所の飛空艇は飛空艇に似た『何か』ってことだ。

 暴論は認める。

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