1話 転生と、出会いと。
「うぅ……なんていいお話……」
私、レティシア・アヴェリス(18歳)は視界がぼやけて目頭がじんわりと熱くなった。
瞳からぽろぽろっと、 あたたかな涙があふれる。
何をしているのかって?泣く練習だよ……ってのは冗談として、本を読んでいて涙していたのだ……。。
恥ずかしいけれど。
やっぱり人物が居なくなるシーンはとても悲しい。
生き様が見えたところで、なんでいなくなるのだとほんとうにほんとうに胸が…っっ…
そうして、うっっと胸を押さえているとスパーン!と扉が開き、従者が慌てたように入ってきた。
「……?!?どうされましたかレティ様!!!」
いつも整えられている黒髪はわずかに乱れ、透明な赤い瞳を揺らして肩で息をしている私のイケメン従者、シオン・ノワール(20歳)がいた。
「……あ…っ」
私 は「あ…っ」と、思っているより高くて可愛らしい声が漏れたがそれどころじゃない。
これはまずい。本を読んで胸を痛めただけなのに、変に勘違いされたらまずい。
「これは…っ、その、本を読んでいて、それで…」
「レティ様、胸が痛いのですか…!?!」
「い、いえ!その…読んでいた本が悲しくて…」
私は斜めを見てふわり、と微笑む。
わかってくれ!!!!信頼している従者よ!
あのクールな従者がなぜ、こんなに慌てているのだろうか……。
はっ! そういえば、本には「誰かが泣いている姿を見るのはつらい」と書かれていた。
だから、笑おう。笑え…!!
笑えば多分どんな困難でも乗り越えられる……!多分!
俺ってなに……?って、俺は元男で…って返事返事
私は口角を釣り上げて強気に、笑った。
「大丈夫…ですわよ」
「……っ!」
……え、シオン、今なんで息飲んだ???
そのまま、ゆっくりと私の前に膝をつき、手を握りしめシオンは言葉をつづけた。
「……レティ様、無理に笑う必要はありません。」
「私は、レティ様の味方です。
ずっとずっとお傍におります。だから弱さも見せてください…」
そして、シオンはそっと手の甲にキスをする…。
アッッッッ(声にならないレディシアの心の叫び)
「……え、ええ、ありがとう……」
…………なぜこうなった!?!
——————
シオン・ノワールside
扉を開けた瞬間、レティ様が泣いていることに気づいた。
その瞬間、俺は息をすることを忘れた。
全身の血の気が引いた。レティ様は胸を押さえ、苦しそうな表情を浮かべていた。
なにかあったのか。
誰かになにかされたのか。
それとも、どこか悪いのか。
俺はそれだけで冷静さを失った。
「どうされましたか、レティ様!!!」
すると、レティ様は慌てたように首を振った。
「だ、大丈夫……ですわよ。」
そう言って、涙を貯めながら強く柔らかく、いつもの優しい笑顔で微笑んだ。
……泣いているのに。
……苦しいはずなのに。
……どうして、俺を安心させようとなさるのですか。
私は、その方を守ると誓った。
だから。
どうか、弱さを見せてください。
俺は、あなたの従者なのですから。
そして、そのときの俺はまだ知らなかった。
この涙が、すべての始まりだったということを。




