① バレンタインデー
その日は1999年の2月14日の日曜日。
世間では、所謂バレンタインデーとして、盛り上がっていた。
時刻は午後3時を回った頃。名護屋テレビ塔の亜空間レストランでは、奥のテーブルで杉浦鷹志と由理子の二人が、休憩時間にいちゃついていた。由理子は今日も赤いウイッグとメイド服で武装している。
「私の手作りチョコケーキを、どうぞ召し上がれ。ハイ、あ~んして。」
「あ~ん……おおっ、けっこうビターな味だね?」
「私だってもう、イイ大人ですから。」
「じゃあ、そろそろ子どもでも作ろうか?」
「……バカ。」
その様子を、レストラン中央のバーカウンターの中から眺める、サン・ジェルマン伯爵と村田京子のカップルが居た。
「微笑ましい光景ですねえ。」
「いいわね。若い人たちは……って、つい言ってしまったけど、私は永遠の23歳だったわ。いつの間にか見た目は彼女よりも、6つも年下になって居たのね。月日が経つのも早いものね?」
「私も永遠の35歳ですから、彼女に年齢で追い越されるのも、時間の問題ですね。鷹志君には、とうとう追い付かれてしまいました。せめてあの子たちが、今後イイ歳の取り方ができるように、今年中にあらゆる障害を排除して、平和な21世紀を迎えさせてあげたいものです。」
「同感ね。不老不死なんて不自然な生き方は、誰にもお勧めできないわ。」
「へえ、お二人は、不老不死なんですか?」
近くのテーブルセットを整えていた、巫女姿の藤原貞子が、振り返る。
「ああ、以前お宅でもらった人魚の肉を、食べたことが有ってね……因みに、真田雪子さんも、似たような成分を自分で注射して、やはり不老不死のカラダを手に入れているんだよ。」と伯爵が答える。
「そうだったんですね。」
「ついでに言うと、貴女も知っているカグヤは鳥族の末裔で、将来のアヌンナキなんだけど、寿命は300年くらいで、パートナーの成雪君は雪村君のクローンなんだけど、彼女に寿命を合わせて300年生きられるように、伯爵が調整したのよ。」と京子。
「……何だか凄いですね。」
「そうよね。改めて冷静に考えると、このサロンには、異常な事がたくさん有るわね。第一、この場所事態、通常の三次元世界から少しずれた所にある、亜空間の中だし、そこに居るヌエちゃんとスフィちゃんだって、神獣とか幻獣とか言われている存在だしね。」
京子にそう言われた二頭は、エレベーター前でお座りしたまま、退屈そうにアクビをしていた。
「それに地下の客室には、死んだはずの著名人がたくさん滞在していますしね?」
伯爵はそう言ってウインクした。もうここのメンバーになった彼女には、隠す気が無いらしい。
「まあ名前を言っても、貴女には分からないかもしれないけど、この人、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトとかニコラ・テスラとかアメリア・イアハートとか……まあとにかく、色々な偉人たちを、命の危機から何度も救い出して、こっそり連れて帰っているのよ。」




