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第3話 優しい兄と、ズル賢い次男坊。そして破局。

冷静に考えれば。

あの“内職”は静かに我が家を侵食していたのだろう。


『お母さんは家庭の大陽』


その通りだと思う。

だからね。


それが曇れば。

家庭はおかしくなっていく――



※※※※※



私には5歳年上の兄がいた。

ずる賢い私と違い、真直ぐな兄はちょくちょく母に怒られていたものだ。


ばしっ!ガンッ!!

「うぐっ!?」


壊れるんじゃないかというほどの勢いで、振り下ろされる掃除機の長い部位。

それでひっぱたかれていた兄。


(…軽く出血とかも…してたよね…はは…)


今のご時世なら“児童相談所”が駆け込むレベルだが…

あの当時、いわゆる“折檻”は当たり前の時代だった。


私はその様子を見て。

母の逆鱗に触れないようにしていた。


頬を叩かれたことはあったが…

掃除機の棒で殴られるのは、どうにか避けられたんだ。


震えていたからな!?

スゲ―怖かったし?


コホン。


――思えばあれはきっと。

心優しい兄の、せめてもの“抵抗”だったのだろう。


日に日に人相の悪くなっていく母親を、どうにかしたかったのだと思う。


私は“冷めた目”でそれを見ていたものだ。


(ああ。たとえ親でも…僕はあそこまで関われない…)


きっと私は。

――地獄に落ちることだろう。



そして。

限界を迎えた我が家は破局を迎える。


私がまだ10歳のころ、父が脳梗塞で倒れた。


後でわかったことだが。


父は友人の保証人になっていたらしく、その借金の返済すらままならなくなり怪しい仕事に手を出し。


あまりのハードワークで体を壊した。


既に愛の無かった我が両親。

母は私を連れ、家を飛び出した。


始まる極貧生活。


…あの時代、貧乏は珍しくない。

だからぼろきれ同然の服を身に包む私もそこまでは目立たなかったが…


やがて困窮する生活から、母は怪しい宗教にはまっていく。


宗教。

あれは救いでもあるけど…


…ねえ。



※※※※※



ここでわが父のフォローを。


父はあの当時としてはかなりの高給取りだったようだ。

いつか母が悔しそうに私に聞かせたものだ。


「…あなたのお父さんね。月に40万円も稼いでいたのよ。――私見たことないけど」

「……う、うん」


「…嘘だけは駄目だからね…噓つきは――死んでも許さない」

「……(ひいっ!?)」



※※※※※



でもね。

晩年、母は言ってたよ。


『あなたのお父さん、メチャクチャ優しかった』って。


うちの両親は文通で知り合い、ろくに会う間もなく結婚。


母親には理由があったんだ。

実のお父さん、つまりは私の祖父だね。


憎しみにも似た感情を滾らせていた。



詳しくはまた――


気が向いたら書くとしよう。


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