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突然の申し出にハリーは目を丸くした。
「何を言っているんだ、君は」
「セバスチャンさんもハリー様と契約したんでしょう?本で見たことあります。吸血鬼は契約をして人間を吸血鬼に出来るって」
ハリーは戸惑っている。
タイミングが悪かったかもしれない。
それでも私はハリーの側に居たかった。
セバスチャンの代わりにハリーを支えたかった。
「ハリー様に美味しい血を捧げたいと健康を目指していたけれど、それ以上にハリー様のお側に居たいから、ここまで頑張ってこれたんです」
だから、と私は首筋を露わにする。
「吸血鬼にしてください」
吸血鬼になるには、お互いの血を捧げ合うというのが本に書いてあった。
その伝承通りかは分からなかったが、私はハリーに身を任せようとした。
「アマンダ、それが君の望みなのか?」
「怠惰に生きてた私がハリー様に出会って、変わったんです。血を味わってくれれば、分かるはずです」
ハリーは私を押し倒す。
そして、首元ではなく、唇に口づけをした。
そして、口内に血の味が広がる。
ハリーが自分の口内を牙で傷つけ、血を出したのだ。
初めての血を飲む感覚に戸惑ったが、私は受け入れる。
暫くして、ハリーは唇を離し、私の首筋に牙を突き刺した。
いつも以上の酩酊感に襲われ、私は意識が遠くなっていく。
「君の血は格別だ。最初とは全然違う…見た目も性格も初めて会った時とは別人のようだ。もう、手放すことなんて出来ない」
意識が途絶える前に、ハリーが何か言っていた気がした。
私はそれを理解することが出来ずに、ゆっくりと眠りについた。
目を覚ますと、小屋にあるベッドの中にいた。
「目が覚めたか?調子はどうだ?」
「はい。なんだか、変なくらい体調が良いです」
そう言うとハリーは複雑そうな表情をした。
手で体温を測ると既に冷たくなっていた。
測った手も血の気が引いている。
「吸血鬼になれたんですね、私」
話すと八重歯が鋭くなっていることに気がついた。
「ああ、試しに飲んでみるといい」
くい、とハリーは自分の首筋を指差した。
「いいんですか?」
ハリーに牙を刺すのは恐れ多かったが、吸血鬼の血の味に思わず興味を示してしまった。
ハリーは頷き、私の隣に座る。
いつもとは逆の立場に僅かに違和感を覚えながら、牙を突き立てる。
先程の鉄の味とは違う、甘い味と芳醇な香りが口に広がる。
どんな生活を送ったら、こんな味になるのだろう。そんなことを考えながら、私は初めての吸血を終えた。
「美味しいです。ハリー様は健康的な生活をしてらっしゃるんですね」
「吸血鬼に健康的も何も無いと思うんだがな…」
私の感想にハリーは苦笑いする。
ふと、唇についた血を舐めて、ある疑問が浮かんだ。
「そういえば、ハリー様ってセバスチャンさんともキスしたんですか?」
「なっ」
私の質問にハリーは驚きの表情を見せる。
「先程、血を飲み合う時に口づけを交わしたので、セバスチャンさんともしたのかなって…」
ハリーはバツの悪そうな顔をする。
「セバスチャンと契約した時は、ナイフを使って飲ませた。キスはしてない」
ハリーとセバスチャンがキスをしているところは想像がつかなかったので、その言葉に少し安心した。
「私とは何でキスで…?」
私達は逃亡してきている身だ。ナイフは護身用に持っているはずだ。
ハリーに、そう疑問を投げかけると、恥ずかしそうに目を伏せた。
「つい、感情に身を任せてしまって…すまない、嫌だったか?」
つまり、私とキスがしたかった…?
その結論にたどり着いた私は顔を紅潮させ、首を大きく振った。
その様子にハリーは嬉しそうな表情をする。
「これから、ずっと一緒に居て欲しい。君と居ると退屈な世界が明るくなるんだ」
「勿論です。ずっとお側にいます」
美味しい生き餌になるよう生活改善もして、吸血鬼にまでなったのだ。
答えは勿論、イエスに決まっている。
そして、私達は永遠の絆を誓い、口づけを交わした。
これは、ぐうたら好きな村娘が吸血鬼に恋したお話。
二人は今でも何処かで永久の時を幸せに過ごしているだろう。
今回は短めなお話にしました!
様子を見て、長編に変更するかは決めたいと思います。
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