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望んだ者は……  作者:
エピローグ
21/21

それぞれの思惑~レティオーヌ~

多分、批判的な評価に傾くであろう結末。

心の広い方のみお読みいたd……ヘ(。。ヘ)☆パシッヽ(^^;)コラ


【クレチアンの秘宝】


『初代クレチアン伯爵夫人であるユーリ=G=クレチアンと同じ容姿をもって生まれた子は精霊に愛され、魔力に恵まれる。また、その者を得た者に富を与える』


この言い伝えのせいでユーリ様と同じ容姿、魔力保持で生まれた者は権力争いに幾度となく巻き込まれていった。

周りは幸せかもしれないけど、本人が幸せだったとは限らないそんな言い伝え。


もともとグラッセ家(クレチアン家)は魔力が多い者は黒髪で生まれてくることが多かった。

黒ければ黒いほど魔力が多いことが研究結果としてまとめられているが例外がないわけではない。


また、精霊の加護を受けると瞳の色が片方変わると言われているが、精霊に直接聞いたわけではないので真相は明らかになっていない。

ただ、左右瞳の色が違う者は類まれなる魔術師となり歴史にその名を残している。

名を残している彼らも全員黒髪であった。


そして彼らはグラッセまたはクレチアン家の血を引く者だった。


ある時、クレチアン家の誰かが言い出した。

『黒髪と左右違う瞳をもって生まれた者はクレチアン家を更なる繁栄に導く宝である』と。


さらに月日が流れ、男よりも女の方が魔力が多いことが判明したクレチアン一族は『黒髪・左右違う瞳を持つ女児』をことのほか大切に育てるようになった。

女が生まれる確率が低かったのもその要因の一つだろう。


ここ数十年はユーリ様と同じ容姿を持つ女が生まれることはなかった。

(男は時々誕生していたらしい)


クレチアン家(グラッセ家)の血が薄まったのだから当然のことだろう。


誰もが『クレチアンの秘宝』の存在を忘れかけていた頃、私が生まれた。


祖母は声高らかに私のことを『クレチアンの秘宝』と呼んだという。


黒い髪、左右で違う瞳(青と緑)そして膨大な魔力。

生まれながらに精霊の加護を受けた女の赤子。


すべてが意図的に歴史から隠されたユーリ=G=クレチアンとそっくりだった。


祖母を始め、クレチアン家は王家と同等であるという考えを持つ者は少なくなかった。

しかし、国が興って数百年。

クレチアン家の価値はグラッセ王家と同じ血筋というだけ。

栄華を極めるどころか、衰退していったと言っても過言ではなかった。

それでも、代々王族の側近を排出していたから表向きは栄華を極めているように見えるのだろう。


私が生まれた時、王宮ではグラッセ王家の血を引かぬ王族が誕生していた。

私は生まれ落ちたその瞬間に『未来』を決められた。


私と同時に生まれた姉はクレチアン家の跡取りとして大切に育てられる。

表向きは兄のベルナールが跡取りとなっているが、時期を見て後継者を変更する手筈になっていた。

クレチアン家は女継承の一族。

長女が家を継ぐ決まり。

子を生すことが出来る女が後継者だから血の途絶えを恐れないのだろう。

だから長女の願いは全て叶えるように育てられる。

オモチャしかり、世話役しかり……時には伴侶すら長女の希望を叶えるためにありとあらゆる手を尽くす。

何においても長女を優先させる。

次女以降の女児または男児の扱いとの差は周りが眉をひそめるほどに開いていた。


姉も例外に洩れず、最大限に甘やかされた。

クレチアン家の後継者として外聞を保つために、私が築いた実績(社交界での評価など)はすべて姉のモノとなった。

姉はそれを当然のように受け入れていた。


もし、兄たちがいなければ私は姉を殺したいほどに憎んでいただろう。

兄たちが真実を知ってくれている。

たったそれだけで私は姉を憎むことなく『姉はこういう人なんだ』と思えるようになった。


ユーリ様と同じ容姿・魔力をもって生まれた私。

グラッセ王家はユーリ様とそっくりの私を王家に取り込む方を選んだ。

もう何年もグラッセ王家では初代国王ユーグ様と同じ容姿の子供が生まれていない。

唯一受け継がれているのは魔力のみ。

王家としてもビジュアル的にユーグ様やユーリ様と同じ容姿の子が欲しかったのだろう。

私は生まれながらにして『鳥かご(王族)』に入ることを決められたのだ。


幼い頃はそんなことに気づかなかった。

両親の関心は姉に向き、私は放置状態だった。

祖父と兄が可愛がってくれなければ、きっと私はひねくれた性格になっていただろう。

祖父が亡くなった後、王宮に出入りするようになってからいろいろな人の話を聞いて気づいたのだ。

いくらグラッセ王家と縁のある貴族の娘だからと幼い頃から王宮に出入りできるのはおかしいのだ。

祖父が国王や宰相と友人だからといっても王族が住まう居城までは入れないのが普通である。


第一王子ユリウス様の婚約者候補の令嬢も王宮の中庭までしか許されていない。

そのさらに奥にある居城までは入れないのだ。

だが、私は自由に出入りしていた。

それどころか、王の執務室、王妃の執務室など本来部外者以外立ち入り禁止の部屋にまでフリーパスだった。


祖父が亡くなった後、いろいろと相談に乗ってくれたのは宰相であるウィリアム=オベール様。

祖父が存命の時から何かと可愛がってくれていた方だ。

私が一時的に祖父のことを忘れていた時期も祖父が私をどれだけ慈しんでくれたのかを話してくださったから私は祖父のことを思い出すことが出来た。


祖父の死因は毒殺。

このことを知っているのはごく一部の人達。

犯人は姉を盲信的に崇めていた侍女だったが姉はそのことは知らない。

姉が『おじい様は妹ばかり可愛がるのね』と呟いたことが殺害理由。

姉の表情を曇らせる者は排除すべしという考えだったらしい。

私の飲物や食べ物にも毒が入っていたことから私と祖父両方を殺そうとしたという事で侍女は裁判後、終身刑を言い渡されたそうだ。


ウィリアム様のことを第二の祖父だと思っていることは本人には内緒である。

祖父よりも10歳年下なので私から『おじい様』と呼ばれたくないらしい。

なので『ウィルおじ様』と呼んでいる。

ウィルおじ様には私より3つ年上の孫のバルド様がいる。

初めて会った時はウィルおじ様に可愛がられている私に嫉妬心丸出しだったけど、勉学、武術などで競い合う内に性別を超えた友人となっていった。

今でも仲の良い友人だ。


ウィルおじ様に相談し、私は王宮内でも騎士団と魔術団にのみ顔を出すようにした。

騎士団には兄のベルナールが所属していた為あっさりと許可が下りた。

むしろ兄から積極的に来るように言われたほどだった。

魔術団には祖父の幼馴染でもあったギルバート師匠の紹介という形で入団した。

その時出会った兄の友人であるアンリ様とは兄妹弟子という関係になり、ベルナール兄様がちょくちょくアンリ様にちょっかいを掛けるようになった。

アンリ様は笑みを浮かべながら「黙れシスコン!悔しかったら魔術団に入り、ギルバート師匠に弟子入りしろ!」と叫び、追い返していたという。


騎士団では剣以外にも体術など武術と呼ばれるものすべてを教わった。

私が女であること、珍しい容姿と膨大な魔力を持つことで人攫いに出会う確率が高いという理由だった。

今思えば、将来王家に嫁入りことが決まっていたから自分の身は自分で守るためのお妃教育の一環だったのかもしれない。

魔術団でも同様の理由でありとあらゆる攻撃術と防御術を習った。

覚えることが面白かった私は乾いた大地が水を吸うようにありとあらゆるものを吸収していった。

ちなみに治癒能力はなかったために使えない。

怪我をしても自分で治すことが出来ないので怪我は絶対にするなと兄に耳にタコができるほど聞かされた。

しかし、それは無理ってものだ。

アンリ様の治癒能力が上がったのは私が原因だったりする。

訓練の最中、しょっちゅう怪我をしてはアンリ様のお世話になったからだ。

怪我をしたまま帰ると兄の説教が始まるのでそれを避けるためにアンリ様に治癒術を掛けてもらっていた。

アンリ様は『気にしない!気にしない!僕は攻撃魔法は不得意だからね。それに治癒を扱える術者は重宝されるから逆に感謝している』って逆にお礼を言われた。



私は自分の容姿が嫌いだった。

左右で違う瞳の色を持つことで、同年代の子達にからかわれたり、気味悪がられたりし続けたからだ。

バルト様が近くにいた時は一生懸命庇ってくださったが、多勢に無勢。

私はいつも人のいない場所で悔し涙を流していた。

そんな私を見てベルナール兄様は自身に掛けられていた術を解いた。

ベルナール兄様も私と同じ容姿だった。

術を解いたベルナール兄様に周囲の人たちは驚きを隠せなかった。

色々と言われていたベルナール兄様だけどいつも笑って

「可愛い妹とお揃いで羨ましいだろ~」

と胸を張って威張っていたとアンリ様がため息まりをつきながら教えてくれた。


ベルナール兄様は私の憧れの人。

兄様のようになりたいと兄様と同じ視線に立ちたいとずっと兄様を追いかけていた。



王立学院に入学する年。

兄様から入学祝に装飾品一式を贈られた。

「いいかい、レティー。何がっても寝る時以外、全部は外しちゃだめだからね」

「全部を外す?」

「これらにはレティーの魔力を最大限まで抑える術を施してある。全部を取り払うと制御が全部外れると思えばいい」

一つ一つつけながら兄様は装飾品に込めた術を説明してくれた。

ピアスは魔力を流し込めばお揃いの兄様のピアスに繋がる通信機、ペンダントは魔力を込めればその時の映像を残すことが出来るようになるという。

ブレスレットには緊急信号の術が施されており、私に危害が加わると瞬時に兄に伝わるようになっていた。

「レティー、もし、もしも命に係わる危険なことに直面した時は取り外していいけど、よっぽどのことがない限り外しちゃだめだからね」

何度も何度も念を押され、最後には一筆書かされ血判も押させられた。


まさか、兄様との約束を破る出来事に直面するとは思わなかった。


『魔力暴走事件』

魔力が人よりも多いシルヴィ=バローの魔力が暴走し、術室が半壊した事件。

シルヴィ=バローの魔力は予想以上に脅威だった。

まるで魔力自体が意思を持っているかのようにその場にとどまっていた。

あのままでは本体であるシルヴィ=バローの命も危なかった。

私は兄と共に研究していた他人の魔力を取り込む術を発動させ、暴走を抑えた。


他人の魔力を取り込むことの危険は十分に承知していたが私は目の前の彼女を助けることしか考えていなかった。

例えそれが自分の『死』を受け入れることだとしても……


結果的には彼女も私も生き延びた。

夢で絵本で見た死神にそっくりな人に鎌を振るわれた時は「ああ、私は死ぬんだな」と漠然と思っていた。

しかし、死神の鎌は私の目の前で止まった。

死神はにやりと笑うと


「君はここで死ぬべきじゃないね。もう少し世界を楽しんでおいで」


そう言い残して消えていった。


目を覚ました時、両親が勢いよく抱き着いてきた時は何が起こったのか理解できなかった。

ギュウギュウに抱きしめてくる父と母に兄が拳骨を加えなければ私は多分圧迫死していたかもしれない。

華奢に見えて父は武官だから力強い。

ちなみに母も儚げな容姿だが元騎士だ。

父と母の出会いはグラッセ王家主催の武術大会の準決勝だったというから母の実力がいかほどかわかる物だろう。


死神に生きるよう言われてすぐに死神と再会する羽目にならずによかった。


シルヴィ=バローの魔力の暴走によってばらばらの長さになってしまった髪は母が整えてくれた。

背の中ほどまであった髪は肩のあたりで綺麗に切りそろえられた。


魔力が安定するまで絶対安静を言い渡され、医師からすべての許可が下りるまで数か月かかった。

兄と相談し、早々に学院は自主退学をすることにした。

もともと勉強は家庭教師に教わっており、先生方から『学院の勉強は貴女にとっては復習でしかないでしょう』と言われていたし、学院の授業は少々物足りなく感じていた。

しかし、兄から同年代の友人との交流やいろいろな意味で視野を広げるためにと、姉と共に入学した。


入学してから気付いたことだが、私の入学は姉の世話役も兼ねていたようだ。

入学早々、姉はいろいろとやらかしていた。

今まで自分の思い通りに事が運ばなかったことがなかったための弊害ともいうべきか……

姉には協調性というモノがまったくなかった。

姉の尻拭いをしつつ、クレチアン家の名を貶めないよう立ち回った。

いくらグラッセ王家とクレチアン家が興国以前から関係が続いている間柄と言えども王族と臣下である。

クレチアン家はグラッセ王国の一貴族でしかないことを姉は理解していなかった。

私は入学前の交流会で知り合った友人たちや姉の幼馴染である殿下達に姉のフォローを頼みつつ、私自身も出来る限り周りに被害が及ばないよう神経を張り巡らせていた。


私が自主退学してからの姉の評判は転げ落ちていった。

姉の評価の下落は学院内に留まらず、社交界へも飛び火した。

もっとも姉の意味不明な発言は即時にクレチアン一族によって消されていった。


ちょうどその頃、従妹のレオンティーナをクレチアン伯家の養女に迎える準備をしていた。

そのことで姉が何か勘違いをしていると両親と親戚は思っていた。

だが、姉はレオンティーナの存在を知らなかった。

いや、知ろうとしなかった。

姉の関心は常に次期国王と呼ばれていたユリウス様だった。

そのほかのことにはほとんど関心を向けていなかった。

姉の世界はとても狭かった。

幼馴染であるアルセーヌ殿下すら次期国王と呼ばれていたユリウス様に近づくための踏み台にする姉。

ある意味、貴族の娘らしい貴族の娘なのかもしれない。


非公式の謁見の日。

賊によって可愛い従妹が命を落とした。

「レティねぇね」と呼んで慕ってくれていた可愛い子。

あの子の暴走した魔力を抑えることに必死になり背後に忍び寄った賊に気づかず負った刀傷は今も私の背中に残っている。

アンリ様が傷跡を消すことも可能だと仰っていたが私は残すことにした。

父と母は何としても消そうと説得してきたが、私は頑なに拒絶した。

あの子を護れなかった戒めのつもりだ。

あの子の葬儀に私は熱をだし寝込んでしまい参加できなかった。

陛下のお声掛けで盛大な葬儀だったと後から聞かされた。


そういえば、姉があの子の棺に泣きついていたと聞いた時は首を傾げた。

どうやら姉は私が死んだと思ったらしい。

敢えて誰もそのことは訂正せずにいたという。

今回の賊侵入の目的が私だったと判明していたからだという。


傷が治るまで私はユリウス様の領地で療養することになった。

ユリウス様が陛下より賜っている領地には傷を癒す温泉が湧いているため、兄に強く勧められたからだ。


私が怪我の療養から復帰した時。

王太子にはユリウス様ではなくアルセーヌ殿下が就き、姉が王太子妃となっていた。

ユリウス様は王籍から離れ、前々から推し進めていた魔術騎士団を立ち上げ、初代団長となっていた。


そして、私はクレチアン家の新しい後継者となっていた。

私と姉の立場が入れ替わっていたのだった。


父から姉が王太子妃に決まった経由を聞いた時、私はどこか納得していた。

姉はそれほど『ユリウス様自身』に必死ではなかったように思っていたからだ。

もしユリウス様を望んでいたのなら兄経由で交友関係を持つことも可能だったからだ。

しかし、姉はそれをしなかった。

追いかけてはいたがそれほど真剣ではなかったように見えた。

どちらかと言えば『次期国王の妻』つまり『王太子妃』の地位を望んでいたように見えたからだ。

姉は王太子の名前を確認することなく王太子妃になることを了承したというからそうなんだろう。


王太子妃候補に姉の名が上がった時、大臣達の誰もが反対したそうだが王太子に内定していたアルセーヌ殿下の最初で最後の我儘という『お願い』とクレチアン家の血を取り込むには姉の方が(大臣たちにとっては)好都合ということで決まったそうだ。

私よりも姉の方が操りやすいと思われていたのだろう。



私がユリウス様の領地からクレチアン家に戻った日、父の書斎に呼び出された。

クレチアン家の存続のためにクレチアン家に相応しい婚約者候補の姿絵でも見せられるのかと思ったが違った。

「レティオーヌは己が好ましいと思う相手に嫁ぎなさい」

「え?」

「別に無理にクレチアン家を継ぐ必要はない。我が家にはベルナールがいるからな」

「でも、クレチアン家は……」

「女継承の家だが、もうそれも必要ないだろう。クレチアン伯家が興って数百年。クレチアンの血も薄まっている。血にこだわる必要はない」

優しく私の頬を撫でる父の手に知らず知らずのうちに涙がこぼれていた。

「俺はお前に父親らしいことは何一つしてやれていない。俺がお前に与えることが出来るのは『自由』だけだ」

「……そんなことありません」

「レティー?」

「お父様は私にたくさんのモノを与えくださいました。私のワガママをずっと聞き届けてくださっていた」

父の手に私の手を重ねた。

ごつごつとした剣を扱い大切な人たちを護る硬い手。

「お父様はずっと私を大切にしてくださっていた。ベルナール兄様以上に私を愛してくれていた」

「!?」

「でも、もう少し我儘を言っていいですか?」

「なんだ?」

「いずれ、クレチアンの家は継ぎます。でもその前に隣国にある『魔術学校』に留学したいです」

「魔術学校……ああ、伝説の魔術師が設立したという魔術師の為の学校か」

「はい、もう少し魔術について学んでみたいのです」

父を見上げると父は満面の笑みを浮かべていた。

「本音は?」

「え?」

「魔術を学びたいというのも本当のことだと思うが……ほかにも理由があるのではないか?」

笑みを浮かべながらもどこか抗うことが出来ない雰囲気を出す父。

「……えっと……あの方から逃げたいです」

私の言う『あの方』が誰のことなのか父にはすぐに分かったのだろう。

「うん、そういう事ならいいよ。思う存分勉強してきなさい。でも月に一度は手紙を出してくれ」

どこか意地の悪い笑みを浮かべた父はそういうと、留学に必要な書類をあっという間に揃えてしまった。



私が隣国に留学した数か月後。

ゲオルグとシルヴィが揃って私の元を訪れた。

二人はあの暴走事件後、恋愛感情なしの友情が芽生えたそうだ。

どうやって友情が芽生えたのか不思議だが、本人たちがそういうのだからそうなんだろう。

もっとも傍から見ていると仲の良い恋人同士にしか見えないんだけどね。


彼らよりさらに数か月後。

ユリウス様が『隣国の軍隊の視察』に来た時は頭を抱えた。


私が隣国に留学した本当の理由はユリウス様から逃げる為だったからだ。

父と兄からの手紙には国に留まらせることが出来なかったことへの謝罪の文字が数十ページにわたって書き綴られてた。

王太子殿下からも引き止められなくてすまないという謝罪の手紙が送られてきた。

留学する前に姉にすべてを話したあの時に『私の留学期間中、ユリウス様を国内に足止めしてほしい』とお願いしていたがユリウス様の方が何倍も上手だったようだ。

隣国はグラッセ王国よりも軍事力が何倍も上であったからその軍を視察してみたいという願いはあっさりとグラッセ国王と隣国の王の間で通ってしまったのだった。

隣国としても『魔術騎士団』という珍しい組織に興味があったというもの視察許可の要因の一つだろう。



いつまでも逃げ回るのは悪手だ。はっきりとした方がいいとシルヴィに言われ私は腹をくくることにした。

幼い頃から、気づくとユリウス様に見られていた。

声を掛けようにも私の視線に気づくとさっさと姿を消していたユリウス様。

何度も何度も同じようなことが繰り返されて、私の中でユリウス様は『気味の悪い人』となっていた。

さすがに兄の学友であり、兄の主をそのように言えるわけもなかったが。

だから私は気づかないふりをし続けた。

うん、存在自体をないモノとしていたといった方がいいのかもしれない。


兄曰く『彼なりの愛情表現』らしい。

しかし、私にとっては不気味でしかない。

多少なりとも会話をしていれば人となりを知ることが出来るが……

いつもじっと見つめられるだけで言葉を交わしたこともないのである。


それなのに、怪我の療養していた時にいきなり部屋に入ってきたかと思えば『結婚を前提に……』なんて言われた時は悪夢を見ているのかと思った。

その時の記憶を抹消したい。

何もなかったと思いたい。

だが、毎日届けられる小さな花束が夢じゃないと告げていた。

届けられた花はすべて求婚を意味する花ばかりだったから……



殿下の視察の最終日。

私は自分の素直な思いを殿下にぶつけた。

私の思いを知った殿下は笑みを浮かべたまま固まってしまった。

ゲオルグとシルヴィがその場にいたのだが笑いを必死に堪えていた。

ゲオルグとシルヴィには殿下の行動の数々を話しておいた。

二人はアルセーヌ殿下からもある程度聞いていたようで、ユリウス様の行動に苦笑していた。


きっとその場に父がいたら満面の笑みを浮かべて『ざまあみろ』と笑っていただろう。

兄は頭を抱えて深いため息をつきながらも殿下の首根っこを掴んでグラッセ王国に引きずりながら帰国しただろう。


つまり、私は殿下の求婚を断った。

どこをどうすれば『気味の悪い人』との婚姻を前向きにとらえることが出来るだろうか。

十数年にも及ぶ不気味な行動が私を想ってのことだと言っていたが、はっきり言って『気味が悪い』の一言である。

直接対面し、幾度となく会話を交わしていれば私もまた殿下に違った感情を抱いたかもしれないのに。


だが、現状ユリウス様に抱いているのは『気味の悪い人』でしかないのである。




数年の『留学』を終えた私は、一人の青年と共にグラッセ王国の我が家に帰宅した。

青年は後にクレチアン伯爵の爵位を継承し、私と共にグラッセ王国の為に尽力を尽くした。


私はグラッセ王国に新たに創設した魔術学校の学長として。

彼は魔術団、騎士団を経験したのち、王立魔術騎士団の一団員として。







「レティー、君が望んだ未来を迎えられた?」

「さあ、それはまだわからないわ。だってまだ私の人生は続いているのですもの」

「じゃあ、君が『死』を迎える時にもう一度聞くことにするよ」

「ふふ、それじゃ私より先に死ねないわよ」

「君を残して逝くなんて考えたくないな」

「それは私も同じよ?」

甘えるように夫に寄り添うレティオーヌの姿がクレチアン伯爵邸では当たり前の出来事。

彼女たちの子供たちは『いつまでたってもアツアツカップルだよね。うちの両親は』と苦笑しつつも、両親のような結婚をしたいと願うようになっていたという。




ユリウス殿下とレティオーヌをくっつけると誰も言ってないよね~(*´艸`)


という事でこういう結末になりました。

ぶっちゃけまだ書き切れていない部分もありますが、いったん完結処理をさせていただきます。


レティオーヌのお相手がどのような人物かはご想像にお任せします。

いつかそこらへんの話も書けるといいのですが……

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