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望んだ者は……  作者:
閑話
13/21

閑話2 勝負の先~ユリウス=グラッセ~

クレチアン伯の娘が王宮内で禁術を使ったと大騒ぎになった日。


先代のクレチアン伯の腕の中で震えている彼女を見た瞬間『今まで迎えてきた結末』が甦った。


初めて見たのに懐かしいと思っていた彼女。


その理由がはっきりとわかった。


彼女は俺の……


それと同時に『神』と名乗る者との賭け事も思い出した。


「ならば、そなたが彼女を救えばよかろう」


『神』は無表情のままそう告げた。


「そなたが救いたいのは『彼女』か『己』か……楽しませておくれ」


俺と『神』のゲームは始まっていた。



俺は彼女の兄と親しくすることで彼女の情報を仕入れていった。

元々俺の学友ということで幼い頃からの付き合いなので今更ではあるが……


直接会うことは彼女の父と兄に悉く阻まれてできなかったが、俺が周りに隠しているオリジナルの術『遠見』でいつも彼女を見守っていた。

見つかった(彼女が学院に入る直前にバレた)時はこっぴどく怒られた。

父とクレチアン伯と彼女の兄の三重唱で……


ただ見つめるだけ。


彼女が泣いている時に涙を拭ってあげることも、

彼女が怪我をした時に手当をしてあげることも、

彼女が悩んでいる時に相談に乗ってあげることはできなかった。


その代わり、彼女の周りに俺の信頼する者を配置した。


彼女の兄はもう一人の妹の力に惑わされることなく、彼女を溺愛していたので俺が何かをするという事はなかった。

ただ、その溺愛具合は半端なかった。


彼女の家庭教師には俺が教わった者達をこっそりと紛れ込ませてクレチアン伯に呆れられた。

ちなみにもう一人の娘の方には見目麗しい男性家庭教師を紹介したら大変喜ばれた。


騎士団の鍛錬場で剣を振り回している時は、俺の『影』を密かに忍ばせて傷つけないよう監視していた。

『影』から自分たちの組織にスカウトしたいと言われた時は『クレチアン家の娘』だからとクレチアン伯と一緒に阻止した。

だが、彼らは未だ諦めていないようだ。


彼女が『ヒロイン』と呼ばれる少女と接触したという報告を受けた時は背中に冷たいものが走った。

彼女が『ヒロイン』と接触することで何かが起きるのではないかと戦々恐々としていたが、杞憂に終わった。

何事も起きることなく、翌日には『ヒロイン』は予定通りバロー男爵家預かりになったという。


ただ、『ヒロイン』は彼女の姉と共に『要注意人物』と俺の信頼のおける者たちの間で認定された。

また、『ヒロイン』と彼女の姉は頻繁にとは言えないが幾度か接触しているらしい。

『影』からの情報では彼女の姉は『ヒロイン』を利用しているようだという。

『ヒロイン』が持っていたブローチに彼女の姉の力が発動していたという報告も受けている。

彼女の姉がそのブローチを通して『ヒロイン』を『洗脳』していたと知ったのは彼女たちが学院に入学した後。

『ヒロイン』の魔力が故意的に暴走させられた時だった。


『ヒロインの魔力の暴走』これこそが『神』のいう『メインイベント』

『ヒロイン』が魔力を暴走させた時に『誰』が『ヒロイン』を助けるかによって『未来』は決定するという。


結果、『ヒロイン』を救ったのは『ヒロイン』が無意識に孤立無援にさせた彼女だった。



『メインイベント』が終わった今。

俺と『神』の勝負もついたはずだが、どちらが勝利したのかはわからない。


ただ、『彼女』が生きているという事は俺の勝ちという事でいいのだろう。




父に頼んで彼女との『出会いの場』を設けてもらった。

危険な魔力暴走を見事に収めた優秀な生徒を国王自ら称えるという趣旨の非公式の謁見の場で俺は初めて彼女と言葉を交わすことが出来た。

俺は彼女と『出会えた』ことで油断していた。


彼女が俺の目の前で賊に剣で切られ血を流して倒れるのを見るその瞬間まで……


賊はすぐに取り押さえられたが、尋問する前に奥歯に隠してあったであろう毒を飲み命を絶った。



幸いにも彼女は一命をとりとめた。

だが、クレチアン伯は彼女を『死んだ』と世間に公表した。

これはクレチアン伯と父が決めた事だった。


彼女の身柄は王家の領地……俺が成人した時に与えられた領地に移された。

父から『何があっても彼女を護れ』という命令と共に。


俺は領地と王都を行き来する日々を送ることとなった。

俺の領地と王都は馬で半日の距離なのもあり、しょっちゅう遠乗りに出かけていたことも功を奏したのか、周りからは怪しまれることはさほどなかった。


彼女の傷が癒えるまでという処置だったが、王都で繰り広げられた茶番劇が終わるまではと彼女はかなりの時間を俺の領地で過ごすことになる。


もちろん、その時間はありがたく有効的に使わせてもらう。


彼女と親しくなるためにね。



彼女が王都に戻る時。

『レティオーヌ=クレチアン』としてではないが、俺の隣りに立つ大切な存在として堂々と戻ることになる。

その計画は水面下で俺とベルナールとクレチアン伯爵夫妻と俺の父(国王)と母(王妃)の間で進めている。


彼女を得るために俺は大きな代償を払うことになるが、彼女以上に大切なものがない。

王族としては失格の考えかもしれないけど、俺にとっては彼女のいない世界なんていらない。

彼女と共に居たいから王族の務めをこなしていたと言っても過言ではないし、父もそれを認めている。


だから父から提案された条件をのんだ。



さあ、遊戯(ゲーム)を終わらせよう。


彼女の笑顔が途切れない未来を描くために……


神との対立者はユリウスだという事は当初から決めていた事。

今まであまり登場しなかったのは彼が登場するとあらぬ方向に進むから……

ストーリークラッシャーなので敢えて『閑話』に登場させました。


この先『ご都合主義』が大量に発生します。

さて、次の章は最後になります。


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