70、治療の完了
「その手技療法とは何だ?」
まさかそこから説明が必要とは思わなかった。
元の世界では手術の必要としない骨折を保存療法で治す際、骨転移を素手で治すのが手技療法である。
だがまぁこの世界は治療=回復魔法が当たり前で手術とか薬物とか必要がないのだから知らなくて当たり前といえば当たり前か。
「魔法は一切使わずに素手だけ行う療法のことです。グラムさんの治癒の前に患者の骨の転移を素手で正常位置まで治すんです」
「魔法なしで?そんなこと可能なのか?」
「可能な個所と不可能な個所があります。不可能な個所は魔力を上げて回復魔法で治してもらいますが全身を治すより魔力は抑えられるはずです。大丈夫ですか?」
「一概には言えんがたぶん足りるじゃろうな」
「一応症状の重い個所から重点的にやってもらいましょう。手技療法は僕が指示を出していきます」
「わかった」
話が纏まったところで二人はすぐに作業に移ろうとして俺の状況に気づいて咳払いをした。
「そいつを離してやれ。もし妙な真似をしても捕まえられるようにだけしとけばいい」
「「はっ」」
まだ信用されたわけではない言い回しだったが取りあえず押し倒していた兵士は退いてくれてたので立ち上がった。
「それじゃあ始めますか」
と、その前にもう一度内臓損傷が無いか確認して・・・うん、無いな。
まずは面倒な中でまだマシな橈・尺両骨の骨折辺りから始めよう。
手技療法は一人ではできないものが多いので副隊長とマリアにも手伝ってもらう。
幸いなことに俺には愚者の魔眼がある。これならレントゲンを見続けているように正確に骨の動きが見る事ができる。後は順序良くやるだけだ。
・・・・・・だから楽に終わるかと思ったがそんな事まったくなかった。
俺が未熟だとか副隊長やマリアが素人だからだとかそういったものではなく言っては悪いがここでも患者の身体の所為と言わざる終えない。
手技療法で行う牽引や圧迫がこの患者は並みの力では動かせられないのだ。
昏睡状態で重症で無抵抗な相手なのにも拘らずだ。
何とか宰相に兵士を借りて交代で助手をしてもらいながら進めていくが最終的に残ったのはマリアとまさかの宰相閣下だけであった。
後は全員維持できず腕が痺れてしまっていて休まされていた。
ちなみに真っ先にギブアップしたのは副隊長である。
俺の腕も痺れているが指示出しと固定するのは代わりがいないので休む事なく行わないといけないというのに早々に休むとは。
「ヤシャまだ全部終わらないの?」
「後はこの破片類の除去だけだよ」
「まったく来客の二人に負けるとはあいつらは後でしごかなければな」
なんか知らないうちに手伝ってくれた兵が大変な目に遭いそうになっているが・・・これはあちらの問題だろうからいいな。
そしてようやくその時がやってきた。
「終わった―――!!」
「お疲れ様――」
疲れでその場に倒れた俺を一番は力仕事をしたはずのマリアに労いの言葉を掛けられるが今更マリアの規格外に驚く気もないので素直に受け取ることにした。
なんか物凄い達成感の様なものが・・・・・。
「ヤシャ殿その手技療法というのは終わったがまだ回復魔法で回復させるのが残っておるぞ。魔力を上げる箇所と回復が正常になっているかは見てもらう必要があるんだからまだ休まれては困る」
「・・・・・・」
そうでしたよ、まだ俺の戦いは残ってましたよ。
マリアが何とも言えない顔で背中を叩いて来たのがやけに重く感じる。
一度座った体勢になった身体を起き上がらせるのにも苦労しながら再び患者の前に立つとグラムさんは詠唱を開始して魔法で回復させていく。
愚者の魔眼には骨折部が再生を開始しているのが見え鑑定の機能障害は強から中へと戻っていく。
「グラムさん肋骨の真ん中あたりは魔力多めであと顔の傷も女性ですから残らないようにしてあげて下さい」
「了解じゃよ」
まるで手技療法に費やした時間が無駄だったかのように火傷は引いて傷は塞がっていき、魔力を上げた箇所は不自然に動き出し正常状態に戻っていく。
そしてあっという間に治癒は完了し今度こそ本当に終了したのだった。
◇ ◆ ◇
治療が終えてから手伝った者達は中継をもらい俺達は一室借りて一睡させてもらった。
そして起きた所でメイドが待っていたように入ってきて宰相閣下が呼んでいると伝えられた。
メイドの案内に従い長い廊下を抜けて渡橋を渡り新しい建物に入ると、そこから更に階段を上り漸く角部屋で止まった。
「こちらがギルセス様のお部屋となります。では私は仕事に戻られていただきます」
「案内ありがとう御座いました」
送ってもらったメイドに一言お礼を言うと相手は予想していなかったのか一瞬きょとんとした後一礼で返してから去っていった。
いざ中に入ろうと思うが相手が宰相である事を思い出すと軽く緊張が戻ってくる。
深呼吸をしてからノックをした。続けて名乗りを上げる。
「入っていいぞ」という声がしたので扉を開いた。
扉の先は意外なほど整理ができていて貴族として立派な部屋であった。
「どうかしたかね?」
扉を開けた姿勢で固まってしまったのを怪訝な表情で問われてしまった。
「いえ、ここが宰相の自室と言われたのでもう少し書類なんかが溜まったイメージがあったので」
「なるほど確かに宰相の部屋には毎日大量の書類が来るものだ。作業する場所はここではないからであって作業場所は君の言った通りになっているからな」
笑って答えてくれたので不快には思われなかったようだ。
「現在グラムには他の怪我人を見てもらっているがその前に君達の同行理由は聞かせてもらった。先程孫娘を助けてもらった件も含めて礼を言いたい。ありがとう」
「いいですよ。自分達はたまたま気づいただけですので」
「そうか。まぁそんなとこで立ってないで入って座りたまえ。後ろの二人も入れなくて困っているよ」
言われて俺はマリアと副隊長が後ろにいるのを思い出して言葉に従って席に腰かけた。
「それで君達が来た本当の目的についての話をしようか。今回の報酬という訳ではないが私の認められる範囲内でなら検討する気でいる」
全員が席に着いたところで宰相は前置きもなしに本題に入ってきた。
確かに俺達がここにグラムの付き添いとしてきたのはグラムの治癒しているところを見に来たからではない。
しかしまさか相手から切り出してくるとは思っていなかった。
「ヤシャ気負ってはダメ。相手が借りだと思っているのはヤシャ。話を進めて」
マリアが囁くように注意をした中の優位に話を進める状況なのだという事が少し余裕を持たせたことで俺は本題へと話を始める為口を開いた。
ようやく治療終わった。
普通ファンタジーの治療って回復魔法や薬草とか食べてパッパと治るから真面目に書こうとするとなかなか難しかったなぁ
次回はもう一つに入ってようやく本命か。長いっす。
現実の試験が芳しくない。先長いのに書く時間が削られる。
本当に最近生きるのが面倒に感じて来るよ。
俺は物語を読んで自分のを書ければそれでいいのに。




