51、参戦
ルシウス達が逃げ出した事で騒動は一段落となり俺達は怪我人を茨の荘の一室へと運んで治療をしていた。
茨の荘の店主のオリバーさんは一命は取り止めたものの治療が終わっても未だに眠り続けた状態でベッドに横たわっていた。身体の損傷も酷く起きた後もすぐには動けず長期のリハビリが必要である診断した。
身体の損傷を治すことは魔法や回復薬で行える異世界だが一度損傷したものを再び元の状態まで動かせるように戻すことはできないそうだ。
俺はサル公に腕を飛ばされて再生させた後すぐに動かせていたが普通はそうならないとマリアに注意された。脳が損傷を意識したとか新しい細胞に変わったからとか理由を予想したがそれを確かめることをいまする必要はないので頭の片隅に追いやった。
「なぁ、マリアはどこまで今回の状況を掴んでいたんだ?」
「ほとんど予想しただけで確証はほとんど掴んでなかったわ。それより彼女に聞いた方が早いと思うわよ。この街の全貌を知る数少ない当事者の一人なんだから」
「彼女か・・・」
今現在この部屋には全部で6人と一匹が入っている。俺やマリア、寝ているオリバーさん以外に三人。
オリバーさんの傍らで佇むその三人の中の代表である彼女に声を掛けた。
「そろそろ話してもらっても構わないか?」
「は、はい。すみません、巻き込んだ上に大事な仲間を助けてもらっているのに待たせてしまって」
「巻き込まれに行ったのは俺の判断したことからだ。気にしなくていい」
彼女は―――山賊の頭と名乗っていた現領主の娘、シュルだった。
傍らの二人は彼女の側近のような立場の者で一人は初顔で30代ぐらいの男、もう一人は助けた時にいた護衛の一人であった。
オリバーを部屋へと運ぼうとした所で宿に来てこの3人以外にも仲間が数十人単位で連れていた。
その人達は別の部屋に待機してもらっていてシャル達には今回の街で起こっている全貌を話してもらう事になっている。
「何があったのか話してもらえますよね?」
「勿論です。なぜこの街がこうなったのか、そのすべてをお話ししましょう」
事の始まりは街の法律を変えた1年前よりもずっと前。
3年前に病でこの世を去ったシャルの母親に代わって父が領主の座に就くことになった。
しかし、特別何かを起こしたわけではなかったが問題を起こすことなく領主の仕事を務めていた母とは違い父親は野心家で名を残す功績を上げる事に拘った人で仕事を部下に任せて改革を考えたり、無茶な案を通そうとして部下に止められたりとお世辞にも優秀な領主とは言えなかった。
次第に母親の時には発生しなかった問題が起きるようになっていき、この穴を埋めるために人材の招集を掛けることになった。
しかし早々優秀な人材が現れるような事はなく人は集まらなかった。
そんな時に現れたのが大貴族のご子息で純潔魔族でもあるルシウスだった。
ルシウスは客人として屋敷に留まり自身の部下を貸し与え、ルシウス自身も起こった問題の対処をして父に取り入った。
そして認めたくないがルシウスは予想外に優秀であった。
強さは当時の部隊長を務めていたオリバーを圧倒、政治の面でも一番優秀だったフローウより処理速度で上回っていた。
連れてきた部下も目立った活躍をしていて新人の兵士などからルシウスを慕い出しす者も表れ出した。
今まで出していた案を悉く止められる筆頭だった二人を鬱陶しく思っていた父もルシウスに頼ることが増えていき、1年前遂に今まで止めてきた父の案がルシウスによって通ってしまい街の悪化の一歩目を進めた。
一度通ってしまってからはやりたい放題に父は案を出していき出来得る限りの事をしても問題の少ないものが通ってしまう事が増えていった。
いつしか屋敷では父に付き私腹を肥やそうとする者と私に領主を交代することを願う者の二つに別れて争う用に政治を行うようになってしまっていた。
その決着がついたのは父の案に耐えられなくなった住民による館への直談判でした。
住民の代表は館の状態を知りません。当然の様に父に訴えかけに行きました。
そしてもう父はルシウスの操り人形の様なものになっていて知っての通り代表を惨殺され、怒り攻め込んできた住民は皆殺しにするよう兵に命令がなされた。それを止める為にルシウスから父の死まで領主の交代をしない事を宣言させられ法の下での世代交代はできなくなった。
こうして街はルシウスに完全に実権を握られてしまった。
これが住民の知られていない裏側での出来事であった。
「それでなんでシャルは山賊なんかに」
「それは確実に不安要素を排除する為に私を殺そうとし出したからです。宣言によって表舞台に出れなくなったので暗殺されて住民に知れ渡ろうがいくらでも情報を操作する力に、もう私についてくれている人達を全員敵に回しても揺るがない立場をルシウスは確立してしまいましたのが理由でしょう。日に日に狙われるのが露骨になっていきオリバーとフローウが助けてくれましたがいつまで持つか分からない状況でした。
そこで助けられた私は屋敷から逃げ山賊として雲隠れすることにしました」
「それで今連れているのは仕事を止めてついて来た者達か・・・」
すべてを聞いた弥叉はルシウスの姿を思い出す。
信用できない薄ら笑いをする傾奇者の格好をした残念男。
一度シャルを救っただけで殺しに来たぐらいだ十分あり得る話だな。
「ヤシャ殿とマリア殿でよかったかな?」
「えぇ」
シャルが全てを話し終えた所で今まで黙っていたフローウが口を開いた。
「ルシウスと戦ったというのは本当か?」
「戦ったのはマリアですが」
「そうか、ならそんな二人にお願いがしたいことがある」
「フローウ!」
「シャル、オリバーが戦闘不能になってしまった今頼れるのはこの方たちだけなのですよ」
フローウにシャルは咎めるように名を呼ぶがそれでもフローウは俺達の頭を下げて頼みの内容を口にした。
「これから行う作戦でシャル様の命を守ってほしい」
「・・・・・・・・・・」
「街の命運が懸かっているんだと強制はしない。でも君達が参加しなくても作戦は開始しないといけない状態なんだ。どうかお願いします」
言った後も頭を下げ続けるフローウ。
シャルは俺達をこれ以上巻き込みたくないのか渋っているがもう一人もフローウに賛同してお願いしますと頭を下げだす。
どうしようかと考えていると、
「いいんじゃない」
「マリア?」
「もうここまで巻き込まれたんだし今更でしょ。私もあいつにやられた分返しきれてないし」
確かにこのままの状態では直接的ではなく間接的に追い詰められればどうしようもなくなっていく。
ならシャルに協力して今の状況を打破するのが最善だろうな。
「分かったよ。協力しよう」
「それでこそヤシャだよ」
フローウはありがとうと言って握手をしシャルも本人達が受けて良いと言っている以上反対はしなかった。
「それでその作戦っていうのは?」




