6、拘束された女
体中がやたらと冷たくて堪らず身体を起こして目を開いた。
起きたにも拘らずまだ湿った冷たさを感じていたがまずは周囲を確認した。
周りは見慣れた自分の部屋ではなく氷に囲まれた洞窟で徐々に意識がはっきりしてくると自分がなぜこんな所に居るのか思い出してきた。
それになぜここに来たのかという理由もはっきりした。
「起き・・ました・・か。・・・クドウ様?」
ジャラジャラという音が聞こえ声の主の方を向くと意識を失うきっかけになった噛んできた女性が会った時同様に鎖で繋がっている状態で・・・・土下座していた。
「あの何をしているんですか?」
噛まれた事とか、鎖で柱と繋がっているとか、言葉が途切れ途切れなのかとか聞きたい事は他にもあったはずなのにこの姿を見て最初にそれを聞いてしまった。
「はい・・・これは・・・・この・・世界の官位・・・が高い者・・や・・忠誠・・を誓う・・者に行う・・・礼・・法の・・ひとつです」
「そうか・・・その喋り方がぎこちないのは?」
「・・・すいません。・・長年・・・ここに・・一人で・・・・居た所為・か・・・・くちが・・・上手・・く・動か・・なくて」
嘘ではないだろうな。
顔の筋肉の動きが鈍いしこんなしゃべし方にする意味がない。
「それなら・・・仕方ないかな?別に気にしてないから大丈夫だよ。それでなんでその礼法を俺にしてるんだ?」
「それは・・・クドウ様に・・・噛んだ・際に・・・私の・・スキルで・・・記憶の一部・・を見ること・ができ・・て、・そしたら・・・あなた様が・・・勇者を・・送ってくる・・・神に・・・一矢報いて・・・くれた・・・見放されし者・・と分かった・・から・だからです」
「え~と・・・・」
確かに俺は神に見放され男っていう称号はあるが何故、それが理由なのか分からない。
それに一矢報いたって記憶にないですよ?したいとは思っているが。
記憶を見たっていうのは、どこを見たのか?ここに来るまでの街か?それとも先ほど思い出した召喚されるまでの事なのか?それにこの女性は神に見放された男だという事からこんな行動をしていると言っているがどんな立場の者なのかという疑問が増えて次の言葉が詰まってしまった。
「それで・・・不躾ながら・・この拘束を・・外して・・・頂きたく・存じます。先程・・会ったばかり・の・・私を・・信じられるわけ・・・ないのは・・・重々承知して・・いますが・・・どうか」
さらに頭を下げる女性。
これって自分の拘束を取れると思って下手に出てるんじゃないか?もしそうなら断った方が良いな。こんな氷に囲まれた牢屋に閉じ込められている人なんだし利用する為に騙されて殺されたくない。
俺はノーと言える日本人なのだ。
こんなどれだけ居るのかも分からないぐらいボロボロで、かなりの美女で、とても綺麗な瞳をした人だからといって簡単に協力しようなんて思わない。
「まず何者なのかとどうしてここに拘束されているのかを話してくれ。それ次第で助けます」
気づいたら即答で助ける方向でそう言ってしまった。
別に同情とか美人だったから話を聞こうとしたわけじゃないぞ。
話ぐらい聞いてもいいかなって思っただけなんだ。
少ししても答えが返って来ないので女性を見たら、こんな即答で話を聞いてくるなんて思ってなかったからだろう。俺の言った事に呆然としていました。
すみません、本当この間が気まずいんで早く話してください。その口調を早くしてというわけじゃなくて。
「あの言えないならこの話はお断りしますが?」
俺は精一杯内情を隠しながらそう言うと、我に返ったのか女性は慌てて封印された理由を話し始めた。
かなり途切れ途切れなうえに、この世界の常識を知らないため俺の質問も多く、時間感覚が洞窟なので分かりづらいがそれでも時間を相当使って説明を聞いた。
聞いた話は纏めるとこうである。
まず驚いたことに彼女は魔族で吸血鬼の上位魔族らしい。
はぁ!?と思ったがとにかく話が進まないのでスルーしてもらおう。
そしてそれが本当か確認の為に鑑定を使用して確かめた結果。
鑑定では解析不能のバグが発生する程のやばそうな結果が出てきた。
なんとか種族に吸血鬼らしい言葉があるのは確認できたのてまステータスと一致したということで嘘を言ってない様ではある。
ついでに姓はマクペシュ名は何故かなかった。本人曰く捨てたそうだがそんなに簡単に捨てられるのだろうか?Kだけの隠し名なんてのもあるし、まぁ、とりあえずマクペシュと呼ぶことにした。
・・・でマクペシュは元々は魔国の中枢に一角に貴族だったらしい。
そして当時魔族と人族との戦争が起こっており、マクペシュも軍を一部隊預けられ戦っていた。
最初は身体能力、魔力やスキルで優れた魔族のが優勢で降伏するのも時間の問題だった。
しかし人族は神の御使い、今で言う勇者を召喚しており、戦局は拮抗状態に戻ってしまい多くの同胞が犠牲となった。
そんな時にマクペシュにとっての事件がを起こった。
いまだ戦局が危い状態で魔王からの呼び出しがかかりマクペシュは隊を置いたまま前線から離脱することになった。
疑問には思ったが魔王の命令を背くわけにもいかず魔王の前へと向かった。
そこで魔王自身から自分の預けた隊を犠牲に勇者を抑え、その間に勇者を操っている国王を降伏または殺す作戦を実行する事を伝えられたのだ。
マクペシュは仲間を死地へと送るだけの非情にはなり切れないと判断され、作戦を伝えられないように通達されていたようで、伝えられた時には止めに向かっても間に合わない状態にされていたそうだ。
間に合わないと知りながらマクペシュは行かぬように身柄を拘束しようとした魔王軍を振り切り部下が戦う戦地へと向かったが、到着した時には、魔王たちの計画通りすでに仲間達は全員全滅しており、勇者三人が仲間達の身ぐるみを剥ぎ価値がありそうな物を物色していたところだった。
それも仲間の死を覚悟して行ったであろう戦いを馬鹿にするような話を肴にしながら。
それを見てマクペシュは激高し戦闘を仕掛けるが善戦も虚しく勇者の一人スキルと思われる拘束を受けてしまいそれからこの状態で過ごしている。
この牢屋はマクペシュが拘束された場所を魔族に知らせない為に山に偽装したのを後から町の住人が魔族専用の牢屋として使うようになったらしい。
これでなぜ拘束されたかについては終わりである。
この後はマクペシュが拘束後の戦争の結果だが俺の前に同じように来た魔族がいたようでそれから聞いたものだが、拘束後、犠牲を払っての作戦は国王殺害という形で成功した。・・・のだが、頭をつぶしても新しい頭が生えただけで勇者の脅威は変わらず戦局はむしろ悪くなったそうだ。
それからまもなく勇者によって魔王は討伐され、魔族軍が逆に降伏状態。
魔族の敗北だと誰もが思った。
しかし、魔王討伐後、勇者は戦場に姿を消し、結末は不可侵条約を結び両者痛み分けで終わったのだとか。
最後に補足だが神については、戦闘中勇者の一人から神という存在がいることを知り、俺の記憶 (神にあっているところも断片的に見れたらしい)で確証したそうだ。
さて、どうしようか・・・
話自体は同情の余地ありではあるが、勇者三人を相手取って封印って正直解放した後の責任が持てん。会ったばかりでどういう人かわからない危険のアル人物を完全に信じるなんてできないからな。
取り敢えず現状だと、
解放するメリット
・この世界での味方を得られる (裏切る可能性があるため不安)
・ここから出られる (聞いたところかなり余裕らしい)
・綺麗な女性とお近づき (俺の感情論)
デメリット
・解放してすぐ殺される (正直に勘弁願いたい)
・魔王に報告されて俺の存在が外部に漏れる (神や勇者には関わりたくないから出来るだけ死んだことにしたい)
・別れた後、人を殺して回られる (人が
そういえば俺って人間にここに入れられたんだよな。しかも処刑で・・・
それに異世界だから知人もいないしこれは外してもいいか?
改めて自分の現状考えたら解放して殺されるの恐れてても結局殺されるんだよな。なら信じてた解放した方がまだましかも。
・・・・とりあえず解放が俺にも出来るか聞いてからでも遅くはないか。
拘束理由を聞いても協力しようか悩んでいるので取り敢えず解除できるかどうか聞いてからでも遅くはないかと結論をここでは出さず先送りにした。
正直カス状態の俺に勇者が行った拘束を解除できる気がしない。
俺のステータスを見た後で協力てくれるように頼んでいるみたいだし大丈夫だとは思うがいざやろうとして俺の力不足が原因でできませんでしたでは格好がつかない。
それに代償とかあったら嫌だし。
自分としては命を落とす可能性があったり五体の一部が消失なんかではない限りは協力してもいいという感じで聞いてみる。
「解除するにはどうすればいいんだ?」
「私と・・・契約してほしい・・です」
「契約?」
契約って何?
そんなことを思ったらマクペシュが説明してくれた。
「この封印は・・・物理的な・・破壊に・・・対して・・・絶対的な効力・・です。ですが・・・条件・・さえ・揃えば・・・簡単に解除・・・することも・・・できます。例えば・・拘束者の力が・・・無くなって・・・効力外に・・・なる・・方法も・・・その一つ」
なるほど、なるほど
「何分・・・時間は・・・山のように・・・ありました・・から・・この拘束の・・条件は・・大方・・調べが・・・付きました。一人で・・解除する・・・方法は・・ありませんでしたが」
簡単に言うが相当凄いことしてないか?
「それで・・解除方法・は・・・人間との・・主従・契約を・・すること。人族に・・服従か・・・守護する・・契約を・・・交わせば・・・解除・・される」
「な、なるほどな、かけたのが勇者ならその方法で解除されるのも納得だな、うん」
予想外の解除方法だったよ。もっとこう、生贄や代償なんかかと思った。それが主従って・・・。
だって主従って行ったらあれでしょ?
俺が主人で彼女がメイドみたいな関係でしょ?
男としては憧れるだろ!しかもこんな美女に!!
それにこれってメリット約束された上にデメリット無くせるしいい事尽くめじゃないですか!・・・・・・嫌、ちょっと待て!今、俺って人族に部類されるのか?ステータス状では鬼人種になってんじゃん!
「俺、ステータス状は鬼人種になってるんだけど大丈夫なのか?」
「もし・・駄目だった・・場合は・・・諦めるしか・・ない」
「・・・そうか」
ちゃんと覚悟してるんだな。
俺としてはここで成功しないと脱出できないので断る理由もない。
もうこれは・・・・やるしかないよな?
「わかった」
「・・・え?」
「この拘束解除に協力するよ」
俺の言葉を理解すると「ありがとう」と何度も頭を下げられた。
向こうからすると魔族に加担する事に抵抗すると思っていたって所だろうか?
「感謝は解除出来た後でいい。まだできるか分かんないんだから。・・・それで契約ってどうするんだ?」
「まぐわい」
「えぇ!いや、・・・それは・・・でも・いやこれは・・」
「・・・嘘、冗談」
「・・・・・・」
「本気・・・にしちゃった?」
してません・・・えぇ、してませんとも。
俺は年齢=童貞歴だからって期待なんて断じてしていない。
・・・・・・・・・なんか笑ってませんか?マクペシュさん!?
「ごめんなさい・・・もうしないから」
「・・・本当の方法は」
「あなたは・・・首を・・出すだけで・・いい」
いつの間にか様付けからあなたにランクダウンしてる!?
理不尽すぎる!
何気に謝ったのも形だけでしょう!?
それに首を出すってどうい・・あっ、また噛むって事か。
「それから・・・契約内容は・・・あなた・への・・攻撃行為・・・の・禁止、ある程度の・・・戦闘リンク、・・・そして・・私を・・・縛るための・・あなたが・・・望む制約・・・これは・・・大雑把なものや・・・私という・・・存在を・・・変える・ようなものでは・・駄目、私が・・・噛んだとき・・・考えて」
「自分の望むことか」
「ほんとに・・・変なこと・・・考えないでね。私の・了承を・・得て・・だから・・・契約途中・で・・中断とか・・・嫌だから」
うん、当然じゃないか。
「でも結局俺ってほぼ立ってるだけでいいってことだよな」
「本当なら・・・お互い魔力を・・使う方法で・・・やるやり方のが・・・いい。でも・・あなたの・・・魔力だと・・足りなくて・出来ない」
カスステータスですいません (悲)
「でも大丈夫・・・これ私が・・最も安全に・・・出来るのだから」
信じてますよ (汗)
「それじゃあ・・・始める」
「あっ、ちょっといきなり?心の準備を・・・」
カプッ
「あ!?ぐっ・・・」
抵抗する間もなく噛まれました。
でもこういうのって痛いより気持ち良かったり・・・・あつっ!熱い!熱い!?熱い?えっ、なにこれなんか俺の中に駆け巡ってる感じで物凄く熱い!そして痛いんですけど!?
聞いてないよ!?
なんとか噛みつかれた瞬間に来た熱さに声が出そうなるのを歯を喰いしばって耐える。
声を堪えたのを褒めて欲しいぐらいだ。
そしてこの状況で望むものを思えってかなりきついでしょ。
なんとかできるかどうかだよ。
それでもまだ耐えられ・・・
【神に見放された男を発動しました】
「え?あ、ぐああああああぁぁぁぁ ーーーーー!!!!」
頭の中そんな声が聞こえたと思ったら先ほどのまでの比ではない痛みが走り、弥叉の絶叫が洞窟内に響き渡る。
噛んでいる為、顔が見えないがマクペシュは驚いて体を震わせたのが伝わってくる。つまりこれはマクペシュがやったのではなくさっき頭に響いた”神に見放された男”の・・・つまりあの駄神の所為ってことだ!!
あの野郎がーーー!!
なんか怒りが湧いてきた。
この状況もあいつの予想の範囲内だと?俺に契約なんてさせて生き残れない様にしようってか!!
あの神の思い通りになるかと、痛みで絶叫を止められない中でその怒りに任せて契約の内容を必死に思い続けた。
(ふざけんなー!!!)
・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
それから何秒何分何時間たったのかわからない。短かったのか長かったのかの時間間隔が狂っている。
口が離れ「完了」と言われ、今度はその場に崩れそうになるのをなんとか耐えた。
女の前でなんども倒れる気はない。特にあいつの所為でこれ以上倒れてなるものか。
終わった瞬間痛みは嘘のように消えておりマクペシュの心配する顔だけが残った。
「成功か?」
俺は自分に起こったことは言わずマクペシュの状態を聞く。
直後、マクペシュを繋いでた鎖が砂化して解いていった。
俺は安堵してようやくその場でヘタレ込むとマクペシュが涙を浮かべながら抱き着いてきた。身体は小刻みに震えて泣いている。
どれだけ長い間ここで過ごしたのかわからないし、話が本当なら仲間が殺され、敵を討てずに一人ここで拘束されていたのだ。どれほどの後悔や無力さ、孤独などを抱き耐えてきたのだろうか?
俺では想像もできない。
だがやらないといけない事は分かる。
俺は自分のことを二の次にし無言で彼女の頭を撫でた。
・
・
・
弥叉「今日は『神ってこれから出てくるの?』・・・出てくる訳ないだろあんな駄神!!」
・・・「・・・・・・」
弥叉「そんな事より前回から機嫌の悪いのをどうにかしたいから誰かいい案教えてくれぇ―――!!」
※神の出番は無いとは言い切れません




