40、観光 アドリーバス編
街へと到着する直前、山賊の頭をしているというシャルから今のアドリーバスは見る影もなく荒れていると聞いていたが街に入ってみると今まで見てきた村や町から思い描いていた予想した街より綺麗な街並みで建築物は西洋の建物と比べても遜色なく、特に坂の上に存在するこの街の領主が住んでいるという家はセレブの住む豪邸であった。
それに今までは村や町によって住んでいる種族が大方決まっていたがここでは多種多様な種族の魔族が街中を徘徊していた。
店も魔法具や魔法教本の専門店に見たことのない食べ物を売る屋台、翼を持つ魔物用の服屋。それに異世界ならではの洗浄魔法店という名前のコインランドリーのような店なんかもあった。
街は綺麗で人通りが良く商店街は種類が豊富で賑やかで見た限りではとても荒れているようには見えなかった。
街へ到着したらまず宿探しをする予定であったがシャルから宿を紹介されているので先に消費している品の補充と今まで手に入らなかった回復系のアイテムや最新の魔法具の購入する為に商店街で買い物をしている。
そこでまたあの光景が目の前で繰り広げられていた。
「す、すみませんでした!!!」
「謝罪なんていいから、さっさとお金の用意をして渡しなさい」
「はい、ただいま」
マリアの言葉に店員は金の入った袋を5袋分持ってきて俺とマリアの前の机へと置いていく。
計250万ベル
その光景はゴブリン村で起こった結末と同じ。
俺達の目の前で土下座しているこの店の店長の下級悪魔がこちらを舐めて低い査定金額を提示したためにマリアが激怒するという同じ流れ。違うとすれば店長が人に近いのでゴブリンより違和感がなく、部屋の隅には店の用心棒が気絶していているのと、店が大きいのでマリアが店側に賠償請求を要求した事。
それから、
「こちらが銀貨250枚になります。アイテムを収入する類の物は?」
「こちらで用意してある」
「畏まりました。マリア様には店長がご迷惑をお掛けしてすみません」
「この店主を止められなかった店側全体の責任・・・と言いたいけどあなたの私たちの対応を見てこの土下座している店主の独断ということで賠償はこの店主だけに請求するわ」
「寛大な処置痛み入ります」
金を持ってきた店員はマリアに気に入られたことくらいだ。
この店に入った当初、俺達の換金はこの店員がする予定であったが持ってきた量が膨大だった為、査定に時間が掛かり終わった時に担当者がこの店長に代わっていたのだ。
簡単に言うと俺は20代だがこちらの世界の人達より身長が低くまた顔も10代の冒険者の方が厳つい顔の多いこの世界では若く見られてしまう。マリアは成長退化の固有スキルで中学生くらいの見た目だ。それが大量の物資を持ってきたので安く買いたたいて儲けようと欲が出たのだ。
マリアが最初安いと抗議した時も店主はしらばくれて「子供がプロの査定にケチをつけるのか」と脅してきたし、その後今の状態でわかるだろうがマリアは用心棒を逃げることを許さずに失神させ店主は後悔どころか再起不能になるほどコテンパンにやられている。
その後用心棒を無双したマリアの姿を見ても委縮せず本来の査定結果を持ってきたのがこの店員で金額の上乗せと店主の損害賠償を約束した。マリアはその店員の対応の早さを評価して今に至る。
「今すぐには決めかねるから通達は後日にします。私達も他に用がありますから」
「分かりました。ではお気をつけて」
マリアと店主は握手をすると店から出て行った。
前回もそうだがこういう時まったく出番がない弥叉であった。
店を出た後先程はスルーしたが手元に250万ベル。日本円で250万の大金が手に入ったのだ。
周りは産業都市の商店街。
前回は店を出てすぐに隣の服屋で大量購入した行動から今回はもっと凄く散財するんじゃないかと覚悟していた弥叉だったが予想に反してマリアは必要な最低限度補充しただけで買い物を終了した。
「良かったのか?まだ金があるしほかにも品物を見てっても」
「その前にその子の主獣契約をすましちゃった方がいいと思うよ」
その子とは今の今まで一言も発しないで弥叉の帽子とかしていたガルロルフだった。
「がぅ・・・・・」
ガルロルフは自分の話になったので一鳴きしたがその声は弱々しい。
今まで洞窟でしか生活したことのないので、初めての街に戸惑っている。というのもあるがそれ以上に首に巻かれた首輪を付けられたことが大きな原因だ。
巻かれたのは弥叉の苦手な街の前にある検問所。
マリアは当然通れて弥叉も無事通過できた。
しかしガルロルフは、
「こいつは通すことはできん。こちらで拘束させてもらう」
マリアの話では仮通行証を出して期限中に登録したことを再度見せるだけでよかったはずが何故かガルロルフを門番が預かるという流れになった。
「仮通行証?そんなもん出す訳ないだろう。そんな薄汚い魔物を伝統あるアドリーバスに入れる気はない」
そのうえ態度は悪くとても不愉快で仕事を真面目にする気は見られない。
それもこの男一人に限った話ではなく後ろで椅子にだらけている連中からは、
「どうせここに来るまでに拾って来ただけだろ?」
「問題を起こされる前にこっちで処分してやろうっていうのに」
「こっちは善意で言ってやってるんだぜ?』
まったく善意は感じられずこっちに仕事させんなという気持ちがありありと読み取れた。
本気で殴ってやろうかと思ったがここで暴れたらそれこそガルロルフを処分しようとする流れになるとマリアに言われぐっと堪えた。
「兄さんの初めてのパートナーにするんだからそんなことさせない」
という言葉から始まり、マリアの世にも奇妙な妹キャラでの説得を聞いてそれまでの感情そっちのけで記憶の奥底にしまっていた。
交渉の結果はガルロルフの拘束はなくなったが代わりにこの首輪が着けられ解除することになったらここへは来ないで専門店に外してもらえと最後まで投げやりに対応された。
そして首輪をつけてからガルロルフはまったく元気がないのでさっさと外してやることには賛成である。
「そうだよな。それじゃあ冒険、じゃなかった魔族ギルドに行こうか」
決して忘れてた訳じゃないぞ。
買い物にもっと時間が掛かると思って次に回していただけだ。
誰に言い訳しているのか分からないが何となく言っといた方がいいと思って魔族ギルドのある場所まで向かった。




