S13、速度VSカウンター
一回戦が一通り終わり、二回戦は始める前にお昼休憩を挟んでから開始される事になっている。
その間に観客もまた、飯を取り大会後半に備えて身体を休めている。
そんな中、最低限の休憩だけとって仕事をしているアナウンサーの声だけが相も変わらず会場に流れていた。
『今大会では出場選手の中に、勇者がいる事もそうですが1年の生徒が出場を果たしていたり、総合部門の生徒が出場していたりと何かと過去の大会とは違う事が起こりそうだと思っておりましたが、まさかの一回戦の結果は2年1組、3年2組なのに対し新入生の1年が4組すべての組が勝利していると言う予想以上の状況になっております』
現在の状況や一回戦の戦いの模様を振り返るように語っていき聞いている者に情景を思い出させる。
そして最後まで語り終わると休憩時間終了5分前になっていた。
『それでは長らくお待たせしました。
これより二回戦第1試合を始めさせて頂きます』
会場からの入場門前ですでに待機していた隆にもアナウンサーの声は聞こえてきた。
「ーーーッし、いくか!!」
隆は声を上げ気合を入れると門から入場した。
舞台に向かって歩く中、いつもは話しかけてくる事が無いカグラが話しかけてきた。
「リュウ」
「ん?カグラ、何だ?」
珍しい事もあると思いながら応じる。
「相手を甘く見ないでね」
「大丈夫だ。一回戦みたいなことはしない。必ず勝ち残ってあいつらと戦うからな」
「・・・ならいい」
「カグラも心配してくれてありがとな。ヘッヘッヘー♪」
「べつに、・・・あとその笑いキモい」
カグラはそう言ってそっぽを向くとそれ以上口を開かなかった。
隆もそんなカグラにこれ以上話すことはせず視線を対戦相手へと移した。
(言われなくてもそんな余裕ないしな)
一回戦ではカウンターで一撃入れただけであったが雰囲気や太刀捌きから只者ではないと予想していた。
特に小さい方は向こうの世界の師匠に近い感覚を覚えさせた。
『両選手舞台に揃いましたので、それでは二回戦第1試合・・・FIGHT!!』
ーーーゴンッ
開始の合図と同時に隆は早期決着と一回戦と同様一瞬で相手の懐に入って主導権を握ろうとして逆にカウンターをくらい軽くいなされてしまった。
ダンッダンッと二回地面を転がり態勢を戻そうとしたが立ち上がれず膝をついてしまう。
その事実に隆は驚愕していた。
開始直後の先制に使ったのは瞬動ではなく固有スキルである瞬動縮地。
予備動作無しに連続使用ができ、まだできないが空中でも瞬動で移動できるようになるスキルで、その速度は使用者の魔力量に比例する。
隆の魔力は他の二人の勇者より少ないがそれでも常人では知覚できない速度である。
それを瞬動直後に一撃、その後に態勢を崩させる為に足に距離を開く為に腹に一撃ずつの計三発もらってしまった。
警戒はしていた。
師匠と同じ達人の雰囲気は感じていたが同じ学生の領域ではない。
(何者だよ、こいつは・・・・・)
未だ膝をついたまま改めて相手を見る。
自分より背の低い青年の姿に熟練者の雰囲気を持ち、一回戦では剣を使っていたはずだが未だ抜刀はしていない。それでもその表情は余裕の笑みがこぼれている。
「勇者の1人リュウでしたか、戦い慣れたいい動きをしますが経験不足ですね。平和な世界で生きてきたからでしょうが、今の状態では足元にも及びませんね」
「ハッ、言ってくれるな先輩」
なんとか言い返して立ち上がるが、実際は相手のいう通り非常にまずかった。
技術、力量、経験のどれもが相手のが上手。助けが欲しいところだが、カグラの方ももう一人と戦い始めているから助太刀には来れないと思った方がいい。
一人で相手にするしかない。
隆は足に力を入れ直し、
「これならどうだ!!」
再び瞬動で攻め始めた。
『おぉっとリュウ選手再び攻め出した!!
今度は最初のような一直線な攻撃から一転!不規則に動きで撹乱させにかかった!!』
それだけじゃない。
スキル残像と気配遮断も使用し相手の目を全力で欺き、攻撃にもフェイントを織り交ぜカウンターされない様に相手に近づき過ぎない距離で行っている。
それでも、
(もらった!!)
相手がフェイントで態勢が傾き対処できない死角の位置からの急所を狙った攻撃が空を切った。
「!?」
「同じですよ。あなたもすでに理解しているでしょう」
「がフッ!?」
攻撃が空振りし姿を見失った隆の後ろから声がした瞬間に開始時とは比べ物にならない重い一撃背中に浴びて吹き飛んだ。
身体は舞台を擦り付けながら速度を落とし場外寸前でなんとか停止したが服は破れ、擦り付けた場所は擦り傷や火傷を負って見るからにボロボロになっていた。
(強い!!何なんだよ今のは、圧倒的過ぎるだろ!?こんなのどうすれば勝てるんだよ!!一人だけ逸脱し過ぎだ!!)
身体の痛みのある今、さっき以上に動くのは無理。手持ちでこいつに効くものを持ってない以上勝ち目はない。
それでも隆は勝ち進むことを諦める気はなかった。
決勝で戦うには勝つしかないのだ。
意地でもあいつらより早く敗退なんてごめんだからな。
ーーーキーン
甲高い金属のぶつかり合う音。
窮地に追い込まれていた隆はそこでようやく相方のカグラがまだ戦っているのに気づいた。
いつの間にか一対一の勝負をしている気になっていた。
仲間がまだいる。
それならば後のことはすべて任せることになるが一つだけ打つ手があった。
試したことのないぶっつけ本番使い終わったらたぶん戦闘不能になるだろうから使うことさえ考えなかった。
正直今も使いたくない。でももうこれ以外打つ手はないと腹をくくり隆は立ち上がるとそれを使用した。
その技は制御できず止められず放った本人のが深手を負う様な危険がある瞬動縮地の最大全力発動、何かにぶつかるまで止まらない。簡潔に言うと---
ーーー完全なる自爆技である。
制御時でも常人の知覚では捉えられない速度を加速させた上に制御できない。もし避けられたら一人で大怪我、当たっても自分もただでは済まない。
そして今回は避けられることはなかった。
「・・・んっ。
今のは良かったですよ。勝つ為に己の勝利を捨てる判断、なかなかできるものではありません」
(バカな!?80キロある俺の身体であの速度!どんだけの衝撃になると思ってる?なんで受け止められるんだ!?)
しかし全てを賭けた一撃でも止められるという今度こそ打つ手が何もなくなった。
「今回の実力差は気にしないでいい。こちらに来てまだ1カ月、強くなる見込みは十分にある」
最後に一撃をもらったのを認識した所で隆は意識を失った。
『勇者リュウ気絶!!勝敗は一気に2年に傾いた!!』
「降参」
アナウンサーが隆のリタイアを告げると相方のカグラもギブアップをした。
武器を捨て抵抗する気がないというのが声を聞かずとも分かる態度で示している。
『あ〜勇者がリタイアした事でカグラ選手も勝てないとギブアップ!!
この激戦を2年が先輩の意地で勝利した!!』
会場は勇者の敗北に驚きながらも優勝候補でもなかった生徒が起こした番狂わせに大いに湧いた。




