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11、ゴブリン村


 脱出から三日後の昼過ぎ前方に家と思われる建築物が見えてきた。

 木造建ての家サイズは少し小さいが間違いなく家である。

 まだ距離があり確実に町として機能しているかは分からないがとりあえず最初の目的地に無事着けそうであった。


 そしてやっと落ち着いて休めそうだという安堵も感じた。

 二日目以降もマリアの訓練は弱まることがなく、魔物との戦闘、魔術の授業。

 それにここへ来るまでに川を橋無しで水に浸かりながら渡って体力を奪われていて限界だったのだ。

 しかも戦闘訓練は魔物の動きに少し余裕ができたかなと思うと一匹追加されるという始末で初日より逃げるのに必死にならないといけなくなっている。


 そんな俺の現在のステータスは、


   クドウ ヤシャ (工藤弥叉)


 レベル3

 HP:45

 MP:80

 攻撃力:4    魔攻撃力:8

 防御力:110  魔防御力:60

 俊敏:65    運:0


 スキル:環境適Lv1→2 俊足Lv1

 追加称号:契約者


 とマリアの訓練が効いているのか?

 スキルが増え、数値が結構上がっている。

 ただ、レベルの方は・・・あんなに頑張ってたった2しか上がっていなかった。 どう見ても相手格上なんだからもっと上がっておかしくないはずなんだが?

 やはり止めを刺さないと経験値がもらえないのだろうか?

 運が上がる気配がないのは駄神が原因だと思って無視した。・・・決して俺本来の運ではないぞ。

 攻撃の低いままも含めて気にしたら負けだ。

 生きていればそのうち上がると思っておこう。

 当座、この世界のステータスの表示のされ方が分からないので今後自分の成長から調べていこうと思う。

 鑑定がもっと万能なら良かったんだがなぁ〜。


「まだ村はあったね」


 国境越えしても、このままでは食料は倒した魔物の丸焼きばかり、衣服もずっと同じものを使い続け、道具類はない状態が続くことになる。なのでマリアの記憶にある国境を越えた山脈の西側に村があったと言う事を頼りに川渡りをしてまでこちらへ向かったのだ。

 もしこれで村がなければ近い人里の位置など見当がついていない。

 どうしようもない状態に陥っていたことだろう。

 その心配がなくなった安堵感。

 それにマリアにとっては何年も封印されていた自分の記憶と変わらずあったことに思うところがあっての呟きでもだろう。


「もしかして検問があったりするのか?」


 村が見えてから魔物が出てくることもなくなり自然と雑談が増えていった。

 近づいて行くにつれて柵も見えてきて、ここへ来て早々に起こったあの街を思い出して思わず聞いた。

 今度は逆にステータスを変えてなんて言われたらヤバいんだが。


「昔はなかったんだけど、やっててもおかしくないから否定はできない。でも大丈夫だと思うよ?私も見た目は人間とさほど変わらないからヤシャも似たような感じだと受け入れられるんじゃないかな」

「そうなるといいが」

「そうなるよ・・・・・・うん?」

「どうした?」


 もうすぐ街だというところでマリアが不意に足を止めた。

 弥叉が尋ねるとマリアが答える前にそいつらは出てきた。


「待ってもらいたい。こちらに戦う意思はない」


 出てきたのは人ではなかった。

 RPGでお馴染みの初心者ハンター最初の討伐対象・・・ゴブリンだ。


 聞いてはいたが本当に実在しているのを見ると驚くな。

 言っていなかったがこれから行くのは『ゴブリンの村』だ。

 ゴブリンが自分達の住む所を開拓して作った村。

 小さな規模だが昔から長く続いている村らしい。


 そんなゴブリンは言葉とは裏腹にあちらは武器を持っている。

 しかしその両手は上げながら近づいてくることから本当に戦う気はないように見える。


「それなら全員出てくるのが筋だろう?」

「・・・・・お前ら」

「やっぱりばれてましたね」


 続々とゴブリンたちは茂みから姿を現していく。

 持っている武器は人・・・いやゴブリンそれぞれで鑑定を発動させて見ると名前によって武器が別れているようである。

 最初に出てきたのはホブゴブリンだった。


「我々は村の警護で巡回中この辺では見ないあなた方が見つけましてね。この村へ向かっているようだったので村に着く前に身元を確認したかったもので。本当に抗戦する気はありません」


 ホブゴブリンはそこで一端言葉を切ると今度はマリアだけを見て、


「特にそちらのお姉さん、あんたからは本能的に逃げろって訴えかけられる」

「最近まで山奥で何年も暮らしてたんだけど戻ることにしてね。この村でダメになった衣服の代わりと食料の調達をしようかと立ち寄ったのよ」

「確かにその格好なら調達する必要があるな。・・・だが何者か分かるものを提示しない者を通すのも」



 ・・・・・・・はっ!あまりにゴブリンが悠長な口調で喋るものだから思わず呆然としてしまった。

 マリアが嘘八百で今の俺達の状況を説明しているのをなんの反応もしなかったほどに、まぁお陰で顔に出なかったから怪しまれることなく信じてもらえたようだけど。

 しかしやっぱり身分検査はするのか。

 身分証明出来る物って言ったらやっぱりステータスしかないな。・・・大丈夫かな。


 そんな心配を余所にマリアが見たことのないステータス画面のようなものを表示した。


「えっ?・・・・・失礼しました!」

「「「「----した!」」」」


 マリアの表示したのを見た途端全員がいきなり謝り出した。

 再度確認するゴブリンもいる。


 何を見たんだ?


 何が起こったのか理解できないままゴブリンたちは左右に別れると俺も含めて通してくれた。


「俺らの一人を付けますんで村の前で止められることはないでしょう。宿は村に一つしかないのでこちらで予約しておきます」

「そう、お願いするわ。あとこの事はできるだけ内緒で」


 全員が了解の意思を示すとホブゴブリンの指示でゴブリンが二人付いてきてそのまま村へと入ることができた。

 マリアあんた何をしたんだい・・・






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