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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
●完全閉鎖孤島ーキロネキシアー
8/504

●「様々な思惑」3/4

「何?頭が!」


シュゼットは激しい頭痛に襲われた。


痛みに耐えきれなくなるとシュゼットは意識を失った。




ひゅううと信号弾が上がった。


それは丁度エリアスが向かっている鉱山の位置であった。


(遂に!少女を仲間が見つけた!急いで向かわなければ!)


エリアスは期待に胸膨らませて馬を走らせた。




信号弾が上がったところに行ってみると、シュゼットがいた。


「シュゼット!あなたでしたか!とりあえず生きていてよかった。」


彼女に話しかける、が、返事が返ってこない。


「……」


「何です?」


ぼそっと何かが聞こえた。


「……」


「すいません。よく聞こえません。もうちょっと大きな声で話していただけませんか。」


「……」


エリアスは仕方ないので彼女に近寄った。


突然彼女がエリアスに駆け寄った。


「どうしたんです?」


エリアスは恥ずかしい気持ちを抑え、彼女の心配した。


「ひょっとして、どこか怪我をしているのですか!」


エリアスはシュゼットを見る。


「手が!!」


なんと彼女の右手がなくなっていたのである。左手で押さえていたので、さっきは気づかなかった。


彼女が腕を前に出す。


「うわぁぁぁぁ。」


突然、右手が現れ、エリアスの左横腹を貫通した。


とてつもない激痛が彼を襲った。怪我をした部分がやけに熱く、全身から嫌な汗が噴き出す。


「お前は一体何者だ!」




「?私は、、?」


意識を取り戻す。


「あれ?」


体を動かそうにも全く体が動かない。


それに、視界が全くと言っていいほど変わらなかった。


先程、倒したはずの女性が起き上がりこちらを見つめる。


「あははははは!やっと!やっと解放された!あの忌まわしい人形め!」


女性は大きな声で高笑うと、どこかへ走り去っていった。


(人形?さっきの人形がどうしたの?)


シュゼットは必死に体を動かそうとする。


が、ピクリとも動かなかった。




シュゼットの形をしたそれは、ケラケラと笑い声をあげると、語りだした。


「ワタシはライラ!ニンゲンを、コロス!それが私の願い。コノ体はとても良い!とても素晴らしい力を持っている!」


「理由は分かりませんが、彼女の体を乗っ取ったと考えるべきなんでしょうね。」


「しかし、彼女の能力は生きたものを消すことはできないはずですが。」


エリアスは疑問を口にする。


するとライラは笑みを浮かべた。


(これは!本当に右手が切断されている!)


「コノように、体カラ切り離せば。ケセル!」


「下種が!」


エリアスは怒りの感情を抑えられなくなった。


即座に重力を変化させる。


「レッドアウト!」


視界が赤く染まる。


「何コレ」


(全然効いてないようだな。)




「来ないノ?アト5秒で何もシテこなかったら、この子の心臓つぶすから。」


ライラは左手を胸の前に持っていき、いつでも殺せるんだぞと挑発をする。




(時間がない!一気に決める!)


エリアスはライラに近づき、重力を重くさせようとした。


まさに、その時だった、ライラが左手で何かを投げたのが見えた。


(まずい!既に攻撃は始まっている!)


咄嗟に右に避ける。




グサッ




グサッ




グサグサグサグサグサ


グサグサグサグサグサ




足に無数の穴がボコボコと空く。それはまるで沸騰したときの泡を想起させた。


「ねぇ、知ってタ?この子、能力デ消した物ヲ触ったり、動かすことが出来るって。」


シュゼットの右手を針山のようにし鋭い針が幾多もぶっ刺さっているのが見える。


(つまり何かを能力で消して投げたふりをして、私の意識をそっちに行かせ、避けた方向に本命の右手を、消した状態で投げたというわけですか、、強い。)




「ねぇ、痛い?痛い?その針一つ一つが私たちの痛み。まずはあなたに味わってもらう。あなたが死んだら、次はこの子に!この子が死んだら次は新しく私たちを拾った人間に!」


「くぅう…う」


先程の横腹の大量出血、そして足に刺さった針のダメージでエリアスの体には限界が訪れようとしていた。


「そろそろ死んでもらう。」


右手が再び姿を消した。




(5秒だ、残された時間は5秒。それを過ぎれば、私は確実に死ぬ!)


エリアスは与えられた5秒という時間で一生懸命生き残るための道を模索する。




そして、5秒が経った。


右手は彼の心臓の位置に現れるはずだった。が、実際にはそうはならなかったのである。


「何!」


驚くライラにエリアスは淡々と告げる。


「ねぇ、知ってた?彼女の能力で消したものは、彼女以外の力の干渉を受けない。つまり、今重力を軽くしているわけだが、右手には普通の重力がかかっていたってことになる。あとは分かりますよね。」


ライラはとても腹立たしいという顔をしている。


「っふざっけんな、宙に浮くなんて聞いてないぞ!」


「言ってないですからね。さて、これで私の勝利というわけですね。」


「!?まだ、私たちは負けていない!」


「能力者を乗っ取ったのは恐らく初めてでしょう?能力を手に入れてはしゃぎすぎたのがあなたの敗因です。」


会話は続いていく。


「最初に手を切断したと言っていたときに、なんとなく想像していました。そして、私が怒りに身を任せて技を放ったときに、確信に変わりました。あなたは痛みを感じない!では、それは良いことでしょうか?いいえ、ちっとも良くありません。見なさい、自分の体を!」


エリアスの言葉でライラはハッとした。


全く、苦しくないのに体がガクガク震えているのが感じ取れた。


「くそ!動け!動けよ!」


「シュゼットはここに来るまで、多くの敵と戦ってきたのです。疲れが取れている訳がない。あなたはそんなことを考えず、能力で私を確実に始末するために彼女の体に負荷をかけすぎた、そうなるのは当然です。さて、私の部下を返してもらいますよ。呪いは必ず弱点がある、あなたの場合は意識を失わせれば多分解けます。...覚悟は良いか!おい!!」


エリアスは突然声を荒げて、ライラの前に立つ。


「な、なにをするつもりだ?」


彼は先程までとはうって変わって鬼のような形相をしていた。


「今朝戦ったカレンとかいう占い師と違って、お前は終始余裕をもって対処ができた。俺の本性を出さなくても良いくらいにはな。だが、お前は俺の大事な部下を傷つけた!このことは万死に値する!」


ズシンと重みを感じる。いや、正確にはライラは元は人形、一切の刺激など感じるはずはない。


しかし、重いのだ、とてつもなく強大な力に押しつぶされる感覚がしている。


「ひ、ひぃぃぃ。」


「お前はカレンより長く持つかな?」


それは、能力者といえどとても人間が持っている力としては強大過ぎるように感じた。


ライラはそれに耐えきれなくなり遂に泡を吹き、意識を失った。




過去の記憶が呼び起こされる。


「お父さん!お母さん!ありがとう!私大事にするから!」


ある者は一軒家の幸せな家族との記憶。


「今日は私と遊ぶの!」「やだ!昨日の続きをするの!」


またある者は双子との記憶。


「わーい!ライラ人形だぁ!おばあちゃんありがとう!」


老人と子供の2人暮らしの記憶をもつ者もいた。


大小あれど、どれも楽しい思い出であっただろう。




だが、それらはある事件をきっかけに悲惨な末路を辿る。


それは連続殺人事件であった。人体をバラバラにし、適当にくっつけるという猟奇的殺人だった。


教会の必死の捜査も虚しく、殺人鬼を見つけることが出来なかった。


とある人物がこんなことを言った。


「被害者は全員ライラ人形を所持している、これは呪いの人形だ!この人形には意志があり意図的に殺人をしている!」


この発言をきっかけに、ある作家がこのことをネタにし、物語を描いた。


それが多くの人に読まれ、人々は恐怖し、人形の製造会社はこのことを受け販売中止に。


人形たちは集められ、火葬されることになった。




行き過ぎた民衆の恐怖は人形たちに暴力を与える。


「この!悪魔め!」


焼いた後に呪われないようにと両手をもがれる者、全身を針で刺される者などがいた。




(何もしていないのにどうして?)


燃え盛る炎の中で人形達は憎しみという負の感情が湧き、灰になっていった。


体がなくなり、その感情だけが残りやがてそれらは一つに集まりどこかへと向かっていった。

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