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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
❦薄明光線ー超大陸バンギア北西部ー
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❦「第2の人生」1/2

Resurrection day

目を覚ますといつもの天井が見える。


黴やら苔やらいろいろ生えている天井だ。私の繊細な体はこいつらにむしばまれている。掃除でもしてくれればいいだろうに。


・・・全く、私のような罪人はどう扱おうと構わないということか。


あらゆる種族を治してきた「神の手をもつ名医」とさんざんもてはやしてきたくせに、些細なことで私を罪人としてとらえるなど、奴らめ、私の才能に嫉妬していたに決まっている。




「お・、囚・番・564・、・ろ!」


看守の男の怒鳴り声が部屋に響く。


私は他に選択肢はないので、というよりもこの看守に無理やり外に出された。


看守がなにやら喚き散らしている、が、耳がよく聞こえないので無視することにした。




まったく、手と足に枷を付けられているのだから何も出来はしないというのに・・・。


随分と警戒されているものだ・・・。




看守の男に連れられるまま歩いていくと、一つの部屋に着いた。


中央に一つの机がある以外、何もない部屋だ。


「・・・」




どうやら座れと指示しているらしい。


指示通りに座った。


「・・・」




私の前に食事が並べられた。


メニューはパン一切れ、コーンスープ、ソーセージ2本、ヨーグルト酒。あとは、ケチャップ、マスタードといったような調味料が置かれてた。




私はそこに違和感を感じざるを得なかった。


どうもいつもと比べて豪勢だ・・。




ー最期の晩餐ー


私の脳裏にその言葉がよぎった。




わたしは動揺したが、悟られないように平静を装い、食事に手を付けた。


どうにかしてここから抜け出さなければ、まだ死ぬわけにはいかない。




私の頭から離れないことがある。


同業の医師からもらった虹色に光る果実だ。


なんでも、古の大木からしか採ることが出来ない不思議な力をもつ果実とのことだった。




患者に注射して実験してみたが、投与したものは溢れる力に耐えきれず僅か数秒で即死した。


いや、そういえば一人だけいたか、生きながらえた少年が・・。




生まれつき体が悪いということで入院していた一人の少年に投与したことがあった。


その少年は他のものと違い、力に潰されることなく無事生き残った。


彼は太陽にように明るい力を授かったのだ。




・・・惜しい。私の実験が明るみに出なければじっくりと研究していたのに。


くそ。怒りがこみあげてくる。口を広げれば神、神とくだらない妄言を口にする者たちに私の崇高な研究の何が理解できるというのか。


私は数時間以内に処刑されるだろう。私がこれまで培ってきた技術、生き残っていれば開発できたかもしれない技術が今日この場で消え果る。


反吐が出そうだ。私にこいつらを超える力があればこんなことにはならなかっただろうに。


いっそのこと賭けにでるのも悪くないか・・・。




「よ・、・部・べ・・。・いて・い。」


食べ終えたのを確認すると看守は私を立たせて奥にある部屋へと歩かせた。




まずいこのままでは殺される。


私は躊躇している場合ではないと“賭け”をする決心をした。




私の首に縄がかけられる。


さぁ、実験を始めよう。




足場が急になくなり、首に強烈な力がかかる。


本気で死ぬ。苦しい。


私は必死で頭を揺らす。


出てこい。出てこい。


喉の辺りに何かが入った感触がした。




例の果実のエキスから作り出したカプセル剤だ。


身体検査を逃れるために鼓膜を破り詰め込んでおいて本当によかった。


本当は同室になったやつに試してやろうと思っていたが、一人部屋になって結果的にはよかった。




なるほどこれは首つりよりキツイ。


いきなりこの量を全身に巡らせれば確かに死ぬ。


首を絞められているのが幸いしたのか、薬は直ぐには喉を通らない。




これは時間との勝負だ。私が超能力を手にするのが先か、息絶えるのが先か。




私は今、三角フラスコの気分になっている。


一秒間に何滴投与すれば助かるのか・・・。


失敗は許されない。




私は自分の体調と相談し、縄の締め付け具合を調節していく。


操作は慎重に行わなければならない、だからといって息が永遠に続くわけではない。


迅速かつ慎重に、というわけだ。




ふと、私の視界に影が現れた。


これが神というものなのか。


研究者として、神だの幽霊だの非科学的なものは、有効な証拠がないので信じてはいなかった。


が、目の前に現れたそれは、そう表現する以外にしっくりこなかった。


窓から差し込まれる光はそれを照らすことなく分散していく。


明らかにそこには何かがいるのだ。




私はその一点を凝視した。


せめてその姿を一目見ておきたい。色は?においは?形は?


天国への土産話でもいいし、生き残れた時の新たな実験のネタでもいい。




ふと、視界が暗くなった。




私はどうなった?頭を回し状況を確認する。


私は直ぐに異常を感じた。景色が360°回っているのだ。


それに先から体の間隔がない。おそるおそる体の方に目を向ける。


・・・あるはずのものがなかった。


果たしてこの状態は生きているといえるのか。




ギロチン後の生首を観察したことがある。


彼らに実験前にあるお願いをした。


切断後に意識があれば瞬きをしてほしいといったものだ。




教会の捜査のせいでサンプルが10人に満たなかったが、せいぜい意識があるのは10-15秒程度だった。


それ以降瞬きをしたものはいなかった。




今何秒だ。私はそう考えているのも無駄だと、直ぐに理解した。


私がこう考えているうちにも時間というのは直ぐに経過するのだから。




私は笑みを浮かべた。


本当は、ここで声をだして笑いたかったが、私が生きていることを誰にも悟られてはいけない。




さて、早くこの場から離れなければならない。


しかし、今は頭だけ。しかも、ここがどこかもよく分からない。




もう一度ちゃんと周囲の状況を見る。


眼が慣れたのか、今度ははっきりと周りが見えた。


なるほど、頭上に先程まで私の体だったものが吊るされているのが見えた。




すると、ここは先程の処刑部屋の下にある場所。死体を降ろす場所だと推察される。


この刑務所の付近には墓場があったはずだ。つまり、ここから墓場に向かう道があるはずだ。




私は出口を探す。しかし、扉らしきものは何所にも見えない。


今度は首を回し、部屋中を移動してみる。




しかし、排気口ぐらいしか外に繋がる道はなかった。


まさか、ここから出入りしているなんて言うことはあるまい。




となると考えられるのは、超能力、たしか教会では祝福ギフトとかいったか。


あるいは、ジギュレムの古代技術か。


いずれにせよ、困ったことになった。


手があれば格子を外し外に出られたかもしれないが、文字通り手も足も出ない。




何か出来るはずだ。頭一つだけでも生きているということは私にも超能力が発現したと考えていい。


排気口まで頭を転がした。


格子に向かって意識を集中させてみる。




だが、特に何かが起こるというようなことはなかった。




次に喉に意識を向ける。


火や毒、何か特別な力を期待した。


だが、これもだめだった。大体、そのような能力だったら今生きていることへの説明がつかない。




あとは、今見ている景色が幻術によるものだとか、本当はもう死んでいるとかぐらいか・・・?




しばらくすると、私の超能力の正体が明らかになった。


それは、排気口に顔を押し付けたときだった。


私は、自分の顔が曲がっていくのを感じた。そう、子供の頃遊んだ粘土のように。




私は自分の顔を長方形に変え、外に飛び出した。


痛みはまったくなかった。




私の仮説が正しければ。


私はゾンビになったに違いない。


首が千切れたのも、痛覚が全くないのも体が腐っているからに違いあるまい。




だとしたら、私は同胞を増やさなければいけない。


誰にも邪魔されずに、研究が出来るように・・・。


そして、いつか必ずあの影の正体を解明して見せる。



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