●「脱出」3/4
しかし、ピザファットの体は今度はバッと大きく後退して回避した。
(学習した?いや、頭もないのに、そんなことが出来るのか?)
だっだっだっだっ
ピザファットの体がいきなりフランコに突進する。
ガシャン、ガシャン
狩り用のトラバサミが足を切断していく。
が、そんなことお構いなしにピザファットの体は進むことをやめない。
(何だ、いったい。この迫力は!さっきと明らかに違う、いったん体制を整えねば。)
フランコは危機を感じ、地面に潜った。
ガシッ
フランコの足がピザファットに摑まれる。
(ぐ、本当に何なんだ!ヤバい!)
フランコは一気に空中に引きずり出された。
そして、
バシバシバシバシバシバシバシ
重い一撃を何十発もくらう。
体を液体にし防御するが、拳による風圧で液体が飛び散る。
液体はフランコの体そのものであるので、もはや防御の意味がなかった。
ドサッと地面にフランコが叩きつけられる。
(ヒュー、ヒュー)
フランコは虫の息だった。
どしん、どしん、どしん
ピザファットの体は追撃のために近づいてきた。
「来る、、な、、」
フランコは最後の力を振り絞り、地面を気体化した。
土が空中で散乱する。
ピザファットの体に土が当たり、どんどん傷がつく。
傷口に土が入っていく。
「能、、力、、解、、除、、」
(もう動くな。)
血管に入った土は姿を戻し、血管に詰まる。
フランコはピザファットの血管に栓を作り、生命活動の維持を困難にしようとした。
目論見通り、ピザファットの体が激しく揺れ始めた。
顔がないが、苦しんでいるのがはっきりと伝わってきた。
(これで本当に、、)
次の瞬間フランコの予想は大きく外れた。
そう、トラバサミである。
またあの罠がピザファットを救う。
体のあちこちを切断し、大量の出血を起こす。
それによって土の血栓が外に流れ、ピザファットの体は元気を取り戻した。
(何だ!どうすればいいんだ!何をすれば確実に殺せるんだ!)
フランコはいい加減イライラしてきた。
窒息、心臓の破裂、血栓による攻撃。色々な手を尽くしてきたが、目の前の敵は依然ピンピンしている。
(気のせいか、再生の速度も上がってきている。)
フランコは全身の痛みを我慢し、次の一手を考える。
(落ち着け、こういう時こそ落ち着いて対処しなければならない。神は細部に宿るというしな。)
フランコは思考を巡らせる。
最初に地中に埋めた体はどうなっているのか、何故右手から再生したあの体には頭部が生えてこないのか。
(まだ頭の方が生きていて遠隔であの体を動かしているのか?それとも頭の再生には時間がかかるのか?)
フランコは一度最初に埋めたピザファットの様子を確認することにした。
(いずれにせよ、体の部分の攻撃を避けなければならない。今度攻撃を受けたら流石にまずい!)
液体化した地面に潜る。
グラグラグラ
(今度は何だ!)
地面が揺れる。
上手く泳げなくなりフランコは息継ぎのために地上に出る。
地上に出たことで先程の揺れの原因が分かった。
細胞爆弾である、今までの戦闘で千切れた手足をピザファットの体があちこち満遍なく散りばめていた。
(くそ、地中の移動が封じられたか。)
思いがけない学習能力にフランコはどんどん追い詰められていくのを感じていた。
二人の戦いは激しさを増していった。
地面はどんどん荒れ、罠も次々と壊されていった。
このことに憤慨していたものがいた。
その者の名前はネミ=シャンパティエ、この場所の管理を任されている女性であった。
「フランコとピザファットか、、あいつら誰が後始末するのか分かっているの?貴重なトラバサミをいくつも無駄にして!あの血も洗わなくちゃ、あぁ!やることが増えていく!」
そして遂にネミの怒りが頂点に達した。
「お前ら!私の庭に何してやがんだ!」
怒りを抑えきれないネミがとうとう乱入してきた。
「ネミ!すまない。今は緊急事態なのだ、ピザファットを抑えるのを手伝ってくれないか?」
フランコはネミに助けを求めた。
「うるさい!とってもうるさい!緊急事態とかそんなこと私の知ったことじゃないの!いい、私にとって重要なのは睡眠時間よ!あんたたちのせいで私の仕事が増えて大切な時間が減ってるの?分かる?」
ネミはヒステリックを起こす。
「私はねぇ!この怒りを発散しにきたの!お前とピザファットどっちでもいいから痛い目を見てもらいたいってねぇ!放てぇ!」
「ネミ?何を言って?」
上から無数の矢が降り注ぐ。
「お前!」
「行け、行け!」
フランコは地面に潜り、その攻撃を回避した。
ピザファットの体は矢を全身で浴びる。
「はーい!よくできました。次はさっきより上に構えて、そうそこ!行け!」
再び矢が放たれる。
その矢は正確にフランコの足を貫く。
「ネミ!やめろ!冷静になれ!」
フランコが必死になって説得をする。
しかし、その言葉はネミには届かなかったようだ。
眉間に皺を寄せ、イライラを示す。貧乏ゆすりも激しくなっていた。
「うるさいって言ってんだよ!もう黙れよ!頭にガンガン来るんだよ。こいつらを見習えよ。ほら全く音を立てない!」
ガリッ
そういうネミのそばにいた弓兵の一人が音を立ててしまった。
そのことがネミの逆鱗に触れた。
「おい、お前。今音を立てたな。」
「す、すいません。」
ネミはその戦士の腹に一発蹴りを入れた。
「誰が喋っていいっつたよ。」
「げほっ、げほっ」
戦士の咳がネミをさらに怒らせる。
「黙れって言葉の意味が分かんねぇのかよ!何年生きてんだテメェ!」
「う、ゴホッ、ゲホッ」
「黙れ!」
再びネミが腹に蹴りを入れる。
周りの戦士たちはそれをただ黙ってみていた、下手に口を出すと自分も彼のようになるということをよく理解していたのだ。
「ネミー!貴様!いつもそんなことをしていたのか!」
フランコは激怒した。
「はぁ。本当にうっさい。でも今日はいい日になりそう。フランコとピザファット五月蠅いやつらをまとめて片づけられるんだから。」
ネミから発せられた言葉の意味がフランコには理解できなかった。
片づける、などという言葉が何年も共に島を守り抜いてきた戦友の口から出たなど到底理解できなかった。
「構え!」
ネミが指示を出す。
バン
矢が放たれる前にピザファットの体がジャンプし、ネミの元まで飛んで行った。
ガシッとネミの首元を掴む。
「・・・」
ネミは首元を掴まれているというのに何の反応も示さなかった。
彼女はそのままピザファットと一緒に飛んだ。
「撃て!」
何事もないように戦士たちに命令する。
無数の矢が飛ぶ。
ネミはここでアミュレットを発動した。
(このまま着地しても地面に罠はない、こっちは無視して問題ない。矢の軌道は、あぁまずい。右手を少し下にずらして、、、これで良い。全て私の思うがまま。)
ブスっと矢がピザファットの体だけを貫いていく。
「今のあんたは静かで本当にいいね。いつもこれくらい静かでいてくれたら何の不満もなかったのに。」
ネミがそうつぶやくと、ピザファットの体に蹴りをいれた。
「さようなら。」
ピザファットの体が地面に激突する。丸太が横から飛んでくる。
ピザファットの体を思いっきり吹き飛ばした。
吹き飛んだ先には落とし穴。無数の竹やりが体を貫く。
回復しようとするピザファットを追撃するように落とし穴に油が流しこまれた。
火をつけたたいまつが投げ込まれる。
メラメラと火が燃えさかる。
ネミはピザファットが灰になっていくのをしっかりと確認すると、フランコの方へと歩いてきた。




