●「脱出」1/4
Escape from Freedom
朝日の昇る前、まだ暗いうちにエドゥとピザファットは目を覚ました。
「おはよう、相棒!今日は素晴らしい一日になるぜ!」
「おはよう。早速準備しよう!」
「おぉ、乗り気だな!そうでなくっちゃな。だが、気を付けろ。あんまり音を立てるなよ。誰にも見つかっちゃダメなんだぜ。」
「分かっている。」
二人は音を出来るだけ立てないようにして、支度をした。
「よし、念のためエルフメイクをしてから出ていこう。」
支度を済ませるとピザファットはエドゥの顔にペイントをしてエルフの長耳を描き、さらにフードをかぶせた。
「ここまですればいいだろう。よし!出るぞ!」
ピザファットはかなり興奮した様子ではしゃいでいた。
エドゥはそんな彼をみて、一つだけ気になることがあった。
「なぁ、宇宙は危険がつきものだ。君のおばあちゃんに2度と会えなくなる可能性だってないわけじゃない。
挨拶とかなんかそういうことしとかなくていいのか?」
すると、ピザファットは真剣な表情でエドゥの方を見た。
「この島から出ていけば、二度と入ることは許されない。ここはそういう島なんだ。ばあちゃんや皆とは二度と会えなくなる。でも、俺はこの島にずっといるのはいやだ。もっと広い世界を知りたい、宇宙ってところに行ってみたいっていう夢が出来たんだ。夢を確実に叶えたいから俺は島の誰にも、たとえばあちゃんでも顔を見せたり、会ったりするつもりはない。」
エドゥはピザファットの覚悟をみた。
「分かった。もう何も聞かない、それじゃ行こうか!」
「おう!」
二人はこっそりと扉を開けて外を出た。
たったったっ どすどすどす
家から出ると二人は急いで走った。
「おーい!」
後ろから二人を呼ぶ声が聞こえた。
(何だ?もうバレたのか?)
内心冷や汗だったが、平静を装い声のする方へ振り返った。
「なんだ!ピザ坊でねぇか。へー。お前さんがこんなに早く起きるなんてなぁ。」
声の主は漁師の男だった。
「よ、よぉ、じいさん。いやぁ仕事があって今急いでるんで、それじゃ。」
「なんだ、昨日の残りをわけてやろうかと思っとったんじゃがのぉ。」
ピザファットが目の色を変える。
エドゥは慌てて彼を止めた。
(おい、急いでるんだぞ!)
(分かってるって、でもよぉ早めに家を出たんだ。その分の時間は使っても問題ねぇ~よ~。)
「ちなみに献立は?」
「カツオのなめろうじゃよ。」
うひょ~^^とピザファットの顔が綻んだ。
「白米ももちろん、、、」
「ついておるよ。」
Yeahhhhhhhとピザファットは大きくジャンプする。
「ところで、ピザ坊となりにいるのは誰じゃ?」
「ん?、あぁこないだの暴風のせいで顔に怪我しっちゃたからな。分かんねぇか?キロンさんだよ。」
漁師の質問にピザファットは適当に答えた。
(昨日と名前違ってるぞ。)
エドゥはピザファットに小声で突っ込んだ。
(大丈夫だって、心配すんなよ。一々島民の名前なんて覚えてる奴なんかいねぇよ。)
「あぁ、かわいそうに。どうぞ、上手いものでも食べて元気になってくだされ。」
漁師が手招きをする。
(な、だから大丈夫っていったろ。)
(そうみたいだな。)
「「上手い」」
「ほっほっほっ、おかわりもあるぞ。」
「「いただきます。」」
飯を食べ終わったとき辺りはすっかり明るくなっていた。
「しまったぁ!」
「お前が断らなかったから!」
「うるせぇ、お前がおかわりしなければこんなことにならなかったんだよ。」
「お前の方が、たくさんおかわりしてただろう。」
はぁはぁと息が上がっていく。
「今は争いをしている場合じゃない。」
「そうだな。急いでここから出よう。」
そういうと二人は漁師に礼を言い、再び走りはじめた。
が、遅かった。
「あれ?ピザファットじゃん。」
ルカ、フランコ、エドガーの3人と鉢合わせした。
「こんなところで何をしている?見回りはどうした?」
フランコが近づいてきた。
「いや。ほら~。昨日の暴風の怪我人を見つけたから、治癒所に送ったんだよ。んで、その帰りってわけだな。」
「そうか、それも立派な仕事だな。後のことは俺たちがやるから、見回りを続けてくれ。」
「いや~。ここまで来たら最後まで責任もたねぇと。」
フランコと話をしているところにルカが割って入ってきた。
「あのぉ。すいませんけど。フード外して顔よく見せてくれません?」
ピザファットとエドゥはかなりドキった。
(まずいな、バレたか。)
(大丈夫だ、堂々としていろ。)
エドゥはフードを外した。
「ねぇ、あんた私からメイク技術教わったってこと忘れたの?」
急にルカがピザファットに話題を振った。
「どうしたんだ、突然。」
バシャ
「え?」
ルカはエドゥの顔にバケツの水をかけた。
「!?」「こいつは!」
その場にいる全員が驚いた。
「エルフじゃない!」「ピザファット、お前これ知ってたのか!」
「え、えっと、知らなかったっていったら信じる?」
先程までと雰囲気が変わった。
「走れ!」
ピザファットはもう誤魔化せないと思ったのだろう。
エドゥに向かって叫んだ。
エドゥの方もピザファットが叫ぶ前にすでに動き始めていた。
「逃がすか!」
フランコが真っ先にエドゥの方に向かっていった。
「まずい!アミュレットを使う気だ。」
ピザファットがフランコを止めに駆け寄る。
すると、ぐにゃっとピザファットの肩がドロドロに溶け、フランコの手がすっと入っていった。
エドゥがそれに驚き、一瞬動きを止める。
「大丈夫か!」
ピザファットは大きな声を上げる。
「イッテー!俺っちは大丈夫だ!それより早く逃げろ!」
バンッ
エドゥはピザファットの言葉を無視して一発フランコに鉛玉を打ち込む。
ぐにゃっとピザファットの肩と同様、一瞬フランコの体が溶け、玉がそこを貫通していった。
「どこで俺たちの言葉を知った!お前は殺す前に拷問にかける。ピザファット、貴様は牢に閉じ込める、しっかりと反省してもらう!」
フランコはそういうと再び2人に襲い掛かろうとしてきた。
「崖に向かって走れ!」
咄嗟にピザファットがエドゥに叫ぶ!
言われた通り崖に向かいエドゥとピザファットは飛び降りた。
「ルカ!エドガー!俺は二人を追う!お前らは町の全員に伝えてくれ!ピザファットが裏切ったと!」
フランコはそう伝えると、二人を追っていった。
ピザファットがエドゥを抱え下になり地面に激突した。
「ぐへっ」「はっ」
凄まじい衝撃が二人を襲う。エドゥはピザファットに助けられていたので少ない傷だけで済んだ。
ピザファットは大怪我を負ったが、やがて完治していった。
「相棒!大丈夫か!」
「あぁ、君のおかげで。」
大分ショートカットしたので、宇宙船までそう時間はかからない場所まで来れた。
「ん?」
急にピザファットが足を止める。
「どうした。」
「あぁー忘れてた。動くな!相棒!」
エドゥは急に叫んだピザファットに驚きすぐには止まれなかった。
エドゥは自分が何かを踏んだ感触を感じる。
「これは、獣?」
周りには多くの獣の死体があった。
「ここは、狩り用の場所なんだ、いたるところにトラップが仕掛けてある。」
ピザファットが石を拾い、遠くへ投げた。
バシッ
巨大なトラバサミが口を閉じ、石を粉々にした。
「気を付けろよ、相棒。板に鋸歯状の歯があって一度でも罠にかかれば二度と外せない。今見たように威力も半端ねぇ、人の足なんて簡単に砕ける。」
「こんな罠が他にも?」
エドゥは辺りを見回すが、何所にも罠を見破れる手掛かりはなさそうだった。
「あぁ、だが俺たちは進まなければならねぇ。見ろ崖の方を!」
ピザファットが指さす方向を見ると、エドゥは驚愕した。
ヒューバシャーン!
崖の上からフランコが飛び降り、地面にダイブした。
「あいつのアミュレットは物質の性質を変えずに分子の結合を変化させるものなんだ!」
「いきなり何だ?、!?」
グィっとエドゥの足が突然引っ張られる。
「相棒!」
引っ張る力はすさまじく、エドゥは下半身まで土に埋もれてしまった。
「侵入者はこれで捕えた。次はピザファット、お前の番だ!」
土の中から声が聞こえる。
(あれをやるしかない!)
ピザファットが突然走り始めた。




