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ダイヤモンド・ダスト・トレイル「斜陽へと羽ばたく鳥」   作者: 白山 遼
●完全閉鎖孤島ーキロネキシアー
10/494

●「相棒」1/4

Best buddy

「ふぅぅ」

キロネキシア島と呼ばれる孤島がある。人口約3000人の小さな島だ。

そこにはエルフという種族が住んでいた。彼らは長命で長い耳を持つとされている。

また、彼らは独特な言語を話すともいわれていた。


2つの巨大な大陸を行き来できなくなっている現在、多くの者はこのキロネキシア島を経由して大陸間の移動を試みていた。しかし、エルフたちは排他的で、この島に近づくものに容赦なく襲い掛かっていった。

無論言語など通じないので交渉もままならないというのが現状であった。


「おい、ピザファット!こんなところで何をしている。」

先程から丘で気持ちよさそうに寝ころんでいた肥満体系の男に細身で長身の男が近づいてきた。

「あん?見て分かんねぇのかよ!雲を眺めてんだよ!」

肥満の男はピザファット=ネリゲラ、細身の方はフランコ=ゴートンという名前であった。

「今日は会議があると前々から言っておいたはずだ。上の者がキチンとしないと他の者に示しがつかん。」

「ふん!こんな天気のいい日に、どうしてジメジメとした部屋に籠らなくちゃならないんだyo!

俺のことはいいから、勝手にやってな!これ以上むさい男の顔なんぞ見たかねぇ。」

「どうしても行かないというなら力づくで連れていくぞ!」

フランコは構えた。


この島にも超能力をもつ者がいる。伝承によるとそれらの力は加護を意味する“アミュレット”と呼ばれ続けてきたらしい。


「へいへい、本気ってわけじゃねぇよな!俺たち仲間だろ?」

ピザファットがその巨体を漸く起こした。

「ちゃんと来るか?」

「わーった、わーったよ、ったくしょうがねぇなぁ~。おい、ちゃんと行くから構えを解けよ!」

ピザファットは両手を上げて降伏の意を示す。が、

「いや、解かん!お前この前だってそう言って逃げたじゃないか。今回は絶対に逃さんぞ!」

フランコはいまだに構えを解いていなかった。

「ったく、俺に夢中すぎんぜ。男に興味なんざねぇ、女に生まれ変わってから出直すんだな。」

「くっだらないこと言ってないでとっとと行くぞ!」

そんな会話をしながら二人は集落の中心部へと向かった。


(くっそー!何とか抜け出す方法はねぇか?)

ピザファットはフランコの隙を探していた。

「お!あぁぁぁ!」

「どうした!」

ピザファットは突然、腹に手を当てた。当然仮病である。

「腹が、腹が痛いー!今日体調が悪いみたいだー。」

「そうか、お前の席を特別に便座にしてやる。トイレしながらでも会話ぐらい出来るだろ。」

「それ、なんて地獄?」

フランコの冗談か素で言っているのか分からない言葉に仮病を忘れて冷静にツッコんだ。


集落の中心部につくと、多くのエルフたちが二人に挨拶をした。

「アミュレットを持ってるだけで尊敬されるってのは良いもんだよな!」

ピザファットはニコニコしながら、女性中心に挨拶を返した。

「よぉ、姉ちゃん。今夜お暇?俺っちと過ごさねぇ?」

「そこの別嬪さん、このナイスガイと今夜どう?」

声を掛けられた女性は苦笑いしていた。


「お前に能力さえなければ徹底的にこき使ってそんな態度、取れないようにしてやるのだがな。」

そんなピザファットをみてフランコは嘆いていた。


周りの建物より一際巨大な建物が見えてきた。 

中に入ると島の長老と老人たち、そしてアミュレットを持つ若者たちがいた。

「やっと、、、きおったか。ほれ、はよう座れ。」

長老のハンナ=ネリゲラという800歳の長寿のエルフがピザファットたちを歓迎する。

「ばぁさん、手短にな。」

ピザファットは鼻をほじりながらあくびをして、屁をこいた。

「貴様!長老の子孫とはいえ、やりたい放題が許されると思うなよ!」

「そうだ!なめきった態度をとりやがって!」

周りがガヤガヤと騒がしくなってきた。


「静まれぇーーい!」

ハンナがその外見からは想像できないような大声を上げる。

周りの者は、一瞬で静かになった。


「.....うへぇっへ!さすが、ばあちゃーん。800年の貫禄はすごいなぁ!」

ピザファットは依然と変わらない態度をとっていた。

「ピザファット!皆の言う通りじゃ!お前は昔っから落ち着きが足りん!そんなことでは立派な長にはなれんぞ!」

「はい?なんだって?悪いけど今急用が出来たみたいだ。治癒所に行って耳を治してもらってこないと、いやぁまいったね、俺が長になるとか、、ハハッ」

ハンナの言葉に周りが再びざわめく。

「長老!何を言っているのですか!」

「えー、こんな豚野郎にこき使われるとかチョーキツイ冗談なんですけどぉ。」

「再考を求めます。」

屈強な戦士が手を上げ意見をのべた。

「村の長には強い戦士が相応しい、伝統の決闘で決めるべきだ。」

「ならぬ!無駄に戦力を消耗して、襲撃者がきたら誰がこの島を守るのじゃ!」

「ちょ、ちょっとタンマ!俺っちは長になんかなるつもりはないよ~ん。」

周りの議論が熱くなってきて、ピザファットは慌てて自分の意志を伝える。

が、

「ピザファット!長という責任ある立場につけば、お前も真面目になるじゃろう!お前をたった今より、長に任命する!」

時すでに遅し、ピザファットは3000人をまとめ上げる長にたった今なってしまった。


「Oh-------------My-----------------------Goooooooooooood!」

会議が終わるとピザファットは海岸に来ていた。

「あははははは」

ピザファットの後ろには一人の女性がいた。

「おい!何笑ってんだよぉ。そんなに面白いか?え?」

「あははははっは、、ひっ、ひっ、、、苦しい、、ひ、、ひ」

「お前、俺のこと豚野郎とか言ってさんざん嫌ってたよなぁ!いいのかよ!このままじゃ、その豚野郎に命令されちまうんだぜ!」

「だ、、、だって。ふふ、はははは!」

「何言ってんのかわかんねぇよ!」

「いかだがやっと完成して島から脱走しようって時に、昼だからって休憩してたら、見つかって成り行きで長になって、島から出られなくなったってこれが笑わずにいられる?ふふ」

「くそ!長になると居場所が筒抜けになるなんてよぉ。詐欺だよ、詐欺!何が(長は誰にも縛られず自由じゃ)だよ!」

「島からでたらすぐにバレっしょ。」

「くそぉ!、、、ところでよぉ、その口調、ずっと前からしてるけど何で?」

「別に口調なんて、あーしの自由じゃん!」

「まぁ、確かに。」

(気づけ、バカ。)

ピザファットに聞こえないように女性はポツッと呟いた。


「ん?今罵倒されなかった?」

「うっさい、豚野郎!話しかけんな!」

女性は顔を隠した、その顔は赤面しているようだった。

「おい!豚に謝れよ!体脂肪俺より少ないんだぜ!」

「なにそれ、怒るのそこなの?」

「いや、いやいや。そこじゃなかった、豚野郎っていうのやめてくれよぉ、傷つくんだよ!名前で呼んでくれよ、いや、ダーリンがいいなぁ、へっへ。」

「きっもー」

「あぁ、冗談、冗談だよーん。そんな冷たい目で見るんじゃねぇよ。」

「ふん、、、、、ぴ、ぴ、」

「え?タイマーのマネ?」

「違う、ぴ、ぴ」

「いや、タイマーじゃん。それ。」

女性はさっきよりも赤面していた。

「ぴ、ぴ、ぴ、ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ。」

「ヤバい!なんか分からんが爆発する気がする!」

「うわーん。」

女性は顔を真っ赤にして走り去っていった。

彼女の名前はルカ=ルチェライ、ピザファットの幼馴染であった。


ルカが去った後、ピザファットは横になった。

(さてと、俺っちはこれからどうするか、しっかり考えねぇとな。)

ズシン、ズシンと地面が揺れる。

(ん?何だ?)

体を起こす。

「敵襲!敵襲!東西南北全ての海岸に島外の者と思われる姿を発見!排除の準備を急げ!」

警告音と共に数人のエルフがやってきた。


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