よしっ!! もう一回、転生しよっかっ!!
僕の作戦は成功して災いの神ドゥルゲットが預言した僕達を狙う敵をおびき出すことに成功した。
と、いうか・・・・
僕達が能天気すぎるのに腹が立ったとかいう理由で姿を見せたんだけどね。
なにそれ、それが神様のすることなの?
僕は魔神フー・フー・ローにタンカを切ったことを後悔しつつも、もう戦うしかないことを理解していたので、腰に差した剣を抜き取ると、中段に構える。
ミレーヌは、それを合図に手筈通り、僕から離れていく。
僕は言う。
「魔神フー・フー・ロー!! 一騎打ちを所望するっ!!」
その言葉に呆れたのか、魔神フー・フー・ローは、暫く大きく目を見開いたまま、微動だにしなかったが、やがて小馬鹿にした口調で言う。
「お前・・・・・バカか?」
僕バカじゃないよっ!!
これは作戦なんだ!
魔神フー・フー・ローでなくとも、この場に現れる敵は僕よりも強者であることは想定していた。だから、自分よりも強い敵を迎え撃つ段取りはしていたんだ。
まぁ、・・・・・とても通用する相手には思えないけどね。
それでも、この期に及んで他に出来ることもなし。僕は自分にできることをするだけだ。
どうせ、命乞いも謝罪も通用しない相手なのだから、戦うしかないんだ。
その覚悟を見て、魔神フー・フー・ローは、ため息をつく。
「まぁ、どの道。殺してしまうのだから、同じことか・・・・。」
なんて物騒な言葉まで言った。
だが、一騎打ちには了承してくれた。
それならば、もしかしたら・・・・いけるかもしれない。
魔神フー・フー・ローが槍を構えようとした時、僕は手を前に出して、「あ、いや。お待ちください。神よ。」と制止した。
「神よ。あなたは神でありながら、人と対等に戦おうというのか?」
僕のその言葉に魔神フー・フー・ローは、くっくっく・・・と、笑った。
「なるほど、なるほど。それは確かにその通りだ。
我は慈悲深い神ゆえに、お前の願いを聞き入れよう。
確かに人の身であるお前と、神である私が対等には戦えまい。」
そういうと魔神フー・フー・ローは、手にした槍を口の中に飲み込んでしまうという。
「我は素手で戦おう。
お前を殺すのに武器は使わぬ。
お前を殺すのに魔法も使わぬ。
ただ、徒手をもってお前を殺して見せようぞ。」
僕は、さらに「その拳に魔力を入れぬよう。」と、注文を付けるとそれさえも魔神フー・フー・ローは、承認した。ここに僕達の決闘の取り決めが成立した。
僕は中段に構えた剣を己の右肩の横に構える「八相」に構えなおすと、「いざあっ!!」と気勢を上げる。
次の瞬間、僕は吹っ飛ばされていた・・・・。
何をされたのかわからないけど、腹部に強烈な衝撃を受けて吹き飛ばされたのだけは確かだった。
吹き飛ばされながら、見えた光景は魔神フー・フー・ローが、サイドキックのポーズで止まっているところだった。
・・・ああ、僕は蹴飛ばされたんだな・・・・。
無様に吹き飛ばされた僕の体がゴロゴロと地面を転がる。
僕の耳に魔神フー・フー・ローが「猪口才なガキだ・・・・。ここに来る前に戦う準備を済ませていたか」と、言ったのが聞こえてきた。
地面に転がり、地に伏せる僕に魔神フー・フー・ローは、追撃を与えようとはしなかった。
それどころか警戒した目で僕を見ていた・・・・。
「なんだ、やっぱりバレちゃったのか‥‥。」
僕が舌を出して顔を上げると、魔神フー・フー・ローは、自分の蹴り足が炎に包まれているのを苦々しく見つめていた。
「・・・・・火の国の戦乙女ザー・ダー・ザーの魔法防御か・・・・・。」
御名答。
流石、神・・・・。僕の魔法は一発で見破られてしまった。
火の国の戦乙女ザー・ダー・ザーの魔法を僕は3パターン持っている。
一つは、以前僕を襲ったミレーヌの一族を撃退した召喚術。ザー・ダー・ザーは、術者の援護のためにサラマンダーを召喚して敵を焼き払ってくれる。
もう一つは、この見えない炎の防御壁だ。僕を攻撃した物は、戦乙女ザー・ダー・ザーの火魔法で焼かれる。
まともに食らったら人間の足位なら、一瞬で消し炭になるほどの火魔法だ。これが僕の刺客対策だったというのに、魔神フー・フー・ローには、足止め程度の効果しかないようだ。
僕は、戦乙女ザー・ダー・ザーの炎が足止めしている時間中に速やかに次の対策を立てなくてはいけない。
魔力を一切使わないと約束した神であったが、あの攻撃をそう何発も僕は受けていられない。
僕にできることと言えば、大魔法で魔神フー・フー・ローを打つくらいだ。
しかし、その魔法には時間がかかる。
その時間を魔神フー・フー・ローが与えてくれるとは思わない。
ならば、時間を稼いでくれる存在を呼び出すまで。
魔神フー・フー・ローが自分の足を焼く魔法を除去する前に僕は、召喚魔法を完結させる。
僕は王家が契約している5人の土精霊を召喚する。
剣で右掌を切り裂いて血を大地に流すと、召喚の呪文を唱える。
「大地に降り注ぐ王家の血をもって聞き給えっ!! 我が名はジュリアン!!
5人の精霊騎士よ! 契約による求めに応じて助力願い給うこと、畏み畏み願い奉り候。」
僕の召喚術に応じて5人の土精霊騎士が地面からすーっと登場する。
この精霊騎士にはそれぞれ個性があり、それぞれが得意魔法が異なり、お互いを補助しあうようにして存在する5つ子の精霊騎士だ。
長男のグーは、召喚された場所と状況を見て、慌てた。
「ああっ!! あれは魔神フー・フー・ローではないかっ!! なんてところに呼び出してくれたのだっ!!」
5人の精霊騎士の言い分はもっともだ。
なにせ、この5人は精霊術の中では中の中くらいのクラスの精霊だからだ。
召喚するのはたやすいが、魔神フー・フー・ローに対しては戦力不足過ぎるくらいの強さしかない。
「悪いがっ!! 僕が大魔法を完成させるまで、時間を稼いでくれっ!!」
「はあっ? 坊ちゃん何を言ってるんでさぁ?
相手は神ですよ?」
次男のラーはそう言うが、僕は気にせず地面に跪き呪文詠唱を始める。
「ああ、もうっ!!」
5人の精霊騎士は、苦々しそうな顔をして魔神フー・フー・ローに向かって入ってくれた。
彼らが戦っている間に、僕は大魔法を完成させなくてはいけないのだ。
「「地の底の国に住まわれし王の重臣にして、調停者なるものよ!
この世の悪性にして我が怨敵を滅ぼすご助力を!!
その両腕で怨敵を踏みつぶし、その牙で怨敵をくいころしたもうことドラゴニオン第一王子ジュリアンが
畏み畏み願い奉り候」
大魔法により次元の壁が引き裂かれ、邪龍ギューカーン様が這い出てきた。
僕は5人の精霊騎士に言う。
「下がれっ!! あとはギューカーン様がやってくれるっ!!」
僕が5人の精霊騎士に言うと精霊騎士は手を合わせて感謝しながら地の世界に帰っていった。
魔神フー・フー・ローは、両手で拍手をする。
「まさか、まさか。貴様のような小僧がギューカーンを召喚できるとはな。
なるほど、これが転生者の恩恵か。」
魔神フー・フー・ローは、ギューカーン様に向かって言う。
「調停者、ギューカーンよ。
お前ほどの者がこのような子供の指図にのるのか!?」
だが、ギューカーン様は魔神フー・フー・ローの言い分など聞かず、襲い掛かる。
ギューカーン様は地の底の国の防衛隊の隊長と言える高位の龍族。
これほどの神聖ならば、魔神フー・フー・ローと戦えるだろう。
僕は魔神フー・フー・ローと邪龍ギューカーン様の戦いを横目にミレーヌを呼び寄せると、ミレーヌに魔力を供給してもらう。
「ミレーヌ。あまり使いたくない手だが、僕は大魔法を使ってしまい、もう魔力が尽きかけている。今すぐギャレンタインとマリア・ガーンを呼んできてくれっ!」
ミレーヌは深く頷くとその場を走り去っていく。
これでいい。
クリスティーナは、僕と違う場所にいて転生者二人が同じ場所にいないようにしている。
あと、気になるのはミレーヌ。
彼女を死なせるわけにはいかない。できるだけ遠くに逃がさなければ・・・・・・。
僕は、ミレーヌが走り去っていくのを確認すると懐から煙球を出して火をつける。
青色の煙がもうもうと上がると、やがて馬に乗ったマリア・ガーンがやってきた。
「マリアっ!! 僕を連れ去ってくれっ!!」
マリアは、僕の命令通り僕の手を取って、馬の後ろに乗せてくれるのだった。
「なんだいっ!? あの化物はっ!?」
「マリアっ!! あれは邪龍ギューカーン様だよっ!?」
「なんだって? そんな高位の存在がなんでいるのさっ!?」
「僕が召喚したっ!?」
「ああっ!? なんだって?」
「僕が召喚したんだよっ!?」
マリアは、僕の言葉をようやく理解したのようでしばらく僕の顔を眺めていたが、「あはははっ!」と笑って馬を走らせる。
「いくわよっ!!しっかり捕まってなっ!!舌かむなよっ!!坊やっ!」
僕がマリアにしがみつくとマリアは馬に鞭を入れて走らせるのだった。




