キス*チュードク2 3-3
ハルに誘われていま、一緒に下校中。
「あれってほんとうだったんだね」
なにも喋らないまま歩っているとハルが口を開いた。その言葉の意味がわからず、ハルをみるとこっちをみて笑っている。
「ほら、あのもうキスしない発言」
「ああ…あれね。ほんとだよ」
まあ、そのせいでいろんなやつらに迫られているんだよね。あの二人以外にも。
「 よかった 」
安心したような嬉しそうな笑み。そういえばあの保健室で喋った以来、ちゃんと喋ったのはこれが初めてかな。ハルの機嫌を悪くしちゃってたみたいだから。あのとき、なんであんな態度とられたかわからはかったけどいまならわかる気がする。
「 ハル 」
名前を呼べばあたしをちゃんとみてくれる。他の人とは違く、優しい瞳。
「 ありがとう 」
なにがありがとうなのか具体的に言えないけど、無償にお礼を言いたかった。驚いているような顔をしてあたしをじっとみるハル。なんかかわいい。
「あたしはもう軽い女なんかじゃないから」
雲雀くんが男から聞いたと言っていたこと。あたしは軽くなんてない。まえまではちゃんとした女の子で、健全な子だったんだから。
「そっか…。よかった 」
だから…
「だからさ、もしなにかあったらあたしを守ってくれる? 」
ハルなら信用できる。あたしがこのおかしな中毒をなおそうとしているのを邪魔しようとしない。むしろ守ってくれる気がするんだ。
「 おれが守るよ。咲夜ちゃんはおれが守る。てか、守らせて」
おかしなお願いにもハルは笑って受け答えてくれる。これじゃあ まるで
「あたしのナイトみたいだね」
なんてね。ハルはなんでも真面目に聞いてくれちゃうからふざけたことを言ってみた。
「そうだね」
やっぱり笑って答えてくれる。なんかあたしたちの会話って子供みたい。だけどなんか幸せな気分。キスをしていたより幸せな気分…かも。
ハルに家まで送ってもらっていまは家。
ベッドに横になってちょっとした考えごとをしているとき携帯の着信音が鳴った。なにかと思い、ベッドの端に置いてあった携帯をとり着信相手をみるとシュウ先輩だった。
「なんですか?シュウ先輩 」
迷いつつも電話にでた。
〔 ひさしぶり咲夜 〕
「おひさしぶりです」
答えが返ってこないんだが…。最初は挨拶からか。
「なにか用ですか? 」
〔 用があるからこうして電話してると思うんだけど 〕
まあ、それはそうだな。あたしの対応に、少し困ったような声。
〔 急なんだけど、キスしにきてくれないの? 〕
「 … 」
少しの沈黙。
「ほんとに急ですね」
シュウ先輩の言葉に困ってしまう。だってあたしはそれを、もうやめようとしているところだから。だけどあたしには対処法がある。
「シュウ先輩。また次 会うのは三年生になったらって言いましたよね? 」
〔 そうだっけ? 〕
とぼけているような声。あの覚えが早いシュウ先輩が忘れるわけない。
「そうですよ」
心の中ではホッとしている。あのとき、ああ言っといて良かったなって。なのに
〔 俺、咲夜に会いたいな 〕
シュウ先輩が言わなそうな言葉。絶対、言ったりしなさそうな言葉。
「シュウ先輩…どうしたんですか?シュウ先輩らしくないですよ」
シュウ先輩…変。もしかしたらこの携帯から伝わる声は違う人なんじゃないかと思ってしまうぐらいだ。
〔 そう? ……確かにそうだね 〕
考えているような間があいてから、微かにクスッと笑ってから言った。納得しているシュウ先輩に話す次の言葉が見つからない。
〔 ねえ、会いたいな 〕
電話越しに聞こえるいつもと違うシュウ先輩の声。でもあたしは……。
「約束は…約束、です」
三年生になったら会う約束。気まずく答えると静かになった。電話越しにはもう誰もいないんじゃないかと思ったとき
〔 そっか…。 わかった。じゃあ、三年生になったら覚悟しといて 〕
プツッと切れた。………三年生になりたくないな…… 。




