キス*チュードク2 3-2
生徒会室に来てすぐに行われようとしていることは
「咲夜ちゃん」
葵先輩の顔が近づいてくる。そう、キスだ。まえまでは生徒会室に来てすぐにしていたこと。でもいまは違う。
「葵先輩。あたし、もうしないって言いましたよね? 」
近づいてくる顔から離れるように後ろに下がり無意識に両手で葵先輩の鎖骨あたりにあてて、これ以上近づいてくるのを防いでいた。
「それって、ほんとうなの? 」
信じられないというような顔をしてくる。それは当然だよね。あんな突然 言ったことをこうも早く実行してるんだから。葵先輩はあたしの言ったことから全て信じてないようだけど。
「ほんとうです」
そう答えても葵先輩の表情から、信じていないということが読みとれる。
「うそでしょ? 」
「ほんとです 」
即答するとやはり少しだけ顔を歪めた。
「うそつき。そうやって焦らしてるつもり? 」
またこの人という人は…。もっと顔を近づかれて甘い視線が向けられる。が
「全く、焦らしているつもりなんてないです」
真顔で葵先輩をみて一刀両断。
「なんでいまさらそんなことするの? 」
まただ。りぃくんにも聞かれたことだ。りぃくんと同じで求めるような瞳。だけどりぃくんと違うのは信じられないという気持ちのほうが大きいとわかる疑っているような目。りぃくんは悲しそうな目をしていた。たぶん心の中では承知していたんだろう。あたしがこうなったことに。
「決めたんです。こんなバカバカしいこともう、しません」
こんなこと言ってみたものの、やっぱり悲しい。まだ完全に治ったわけじゃないから。なおっていたらどれだけいいことか。だけどそんなすぐになおらないなんてわかっていたことだ。
「葵先輩。もうやめてくれませんか…? 」
こうやって迫ってくることをこうやって甘い道に戻そうとすることをされるといつになって完全になおるのか、わからない。悲しい目をして葵先輩をみていたかもしれない。なのに葵先輩は…
「 やだ 」
子供のようにワガママを言った。あたしより一つ上なのに。
「葵先輩…」
「いやだよ。いままで俺がしてあげていたのにそんなのおかしいよね」
いつものなにかたくらんでいるような笑みをされる。それはいつもと同じようでいつもと違う。少し苦しそうだ。そんな表情になにも言葉がでない。
「それにキスなんて対したことじゃないよ。もしかしてそれ以上のこと、されたい? 」
ただ首を横にふるとしかできない。葵先輩のこの言葉に少し驚いた。もしかしてそういうことを違う人とやってるんじゃないかって、頭をよぎった。あの屋上でみた光景を思い浮かべればそんなこと普通にしているのかもしれないと思ってしまう。
「だったらこれぐらいは黙ってされてよ」
顔が近づいてくる。もうだめだと思い目をぎゅっと瞑った。そのとき
「 葵先輩。やめてください」
その言葉が聞こえて反射的に目を開く。開くとそこには複雑そうな顔をしているハルの姿があった。ハルは葵先輩の肩を掴んでいる。たぶんそれでとめたんだろう。
「なにかな?なんで陽斗がとめんの? 」
葵先輩の顔も視界に映るけど、その表情は余裕なものだ。でも声のトーンからはイラついているような感じが伝わり言い放ったように聞こえた。ともかく葵先輩が不機嫌そうにみえるのはあたしだけなのかと思ってしまう。
「咲夜ちゃんがなにを言ったか知りませんけど、あまりそういうこと軽々としてほしくないんですよ」
肩を掴んでいた手を離してから言ったあとあたしをじっとみてきたハル。
( またキミから言ったの? )
その瞳からはこうはっきりと伝わった。どうやらハルはあたしが葵先輩に『キスして』と言ったと思っているらしい。それは違う。いつもと違う。そう伝えたくてハルをじっとみて首を横にふった。するとハルは驚いたような顔をした。あたしからじゃないと知って驚いていたのかな。それとも…うそをついたと思ってるのかな。




