キス*チュードク2 3-1
ありえない…ありえない。あたしがこうなった原因はお酒を飲んで、それで酔っ払ってカイにキス求めて、それからこうなってしまったというのか…?もっと重大な出来事かと思っていたのにそんな…そんなことがあっていいのか。
『でも、咲夜ちゃんが酔っ払っちゃう前に僕が キス求めたのがいけなかったと思う』
なんで…。キスは深いほうをしたらしい。カイが抑えきれなくてと、言っていた。だけどあたしがこうなった原因がそんな小さなことなんて……バカみたいじゃないか。
今日は遅めに生徒会室に来た。ほんとうは行かないつもりだったけどいつも生徒会室にいるあたしがそんなことしたら変だもん。ドアを開けると珍しいことにあたしが来るまえにみんなが集まっていた。ソファに座っている恭弥があたしの存在に最初に気づくとソファに寄りかかるようにしてこちらを向く。
「めずしく 遅いな」
あたしが来るまえに恭弥たちが集まっているほうがあたしにとって珍しいことだけど。そう思ったけどいまはそんなことどうでもいい。
「咲夜先輩、いいの? 先輩方にキス求めなくて」
かわいいはずのりぃくんがいまは小悪魔のように見える。そんなものどうだっていいんだよ。だって…
『もう、キスなんてやめたから』
『そんなバカみたいなこともう しない』
あれから
「咲夜先輩、ほんとうにしないの? 」
あたしはりぃくんに迫られている。いまだってほら「ねえ、咲夜先輩」保健室のベッドにおいてある手が重ねられ顔も体も至近距離。
「だからしないってば ! 」
近づいてきていた体を離すために肩を押した。いくらなんでもしつこすぎ。あたしがせっかく健全になろうとしているのに、なんでこういうときに限って迫られなきゃいけないの?こういうことはやめようって気持ちがなかったときにしてほしかった…。不満を抱きながら、りぃくんをじっと見ていた。なにかしてきそうでこわいからどういう行動をしてくるかの観察だ。
「 咲夜先輩 」
いまさっきあたしが引き離したりぃくんは何事もなかったかのようにみてきた。なにか…嫌な予感が…。
「なに? 」
不信感をだすように恐る恐るに答えた。
「咲夜先輩のこと、先輩って呼んでもいい? 」
ニコッと笑った。この笑みにどういうたくらみがあるのか……どんなたくらみがらあったとしても
「別にいいよ」
名前なんて呼ばれなくても別にいい。こういう質問してくるってことは無理矢理 呼ばせていたんだね。りぃくんは不満そうな顔になった。どうやらあたしの答えに納得いってないようだ。
「先輩」
「なに? 」
「先輩…」
なんなんだ…?りぃくんがなんかおかしい。あのときあたしが『咲夜って呼んでよ』なんて言ったらりぃくんは困りぎみに『じゃあ…咲夜、先輩? 』と答えた。もう呼びたいように呼べばいいんだよ。
「うわっ 」
急にあたしに飛びついてきたりぃくん。変な声をあげてしまった。
「先輩…咲夜先輩とシたい」
あたしの肩に顔をうめながらに言われ、熱い息が首にかかる。くすぐったい…。てか、りぃくん。その『シたい』は違う意味に聞こえるよ。
「りぃくん…。もうしないって決めたから……んっ…」
離れさせようとりぃくんの肩に触れたところ、耳をパクッと口に含まれた。
「ちょ……りぃくん…」
触れたばかりの手で肩をおすが、やっぱりそんなことでは離れてくれず。耳は…
「咲夜先輩って耳弱かったよね。だからさ、先輩がしていいって言うまでやるよ」
耳に吐息がかかる。これ、やばい…。それだけを言うとまたあたしの耳を自分の口に含んだ。体が強ばって声もでないなか、舐められたり甘噛みされたりいろんな悪戯を試される。胸板を押して抵抗している手は掴まれてしまったしなにも抵抗できない。ただ抵抗できるとしたら口だけだ。
意識がぼーっとしていくなか、いいことがひとつ思い浮かんだ。思い浮かんだけどこれで止まってくれるかはわからない。けど、いまはこれしかない。
「りぃ、くん…。これ以上、やったら…りぃくん 嫌いになっちゃうよ 」
抵抗したつもりだけど抵抗になっていないかもしれない。そう思ったと同時にりぃくんの動きがピクッと止まった。
「 … 」
なにも喋らないままあたしの耳から顔をゆっくり離した。そして目をじっとみて
「なんか…あっけなくない?どうして? 」
答えを求めるような瞳。どうしてと言われても…もう決めたからとしか言いようがない。なにも口に出せないまま黙っているとあたしから離れてベッドの端に座るようにし
「もっと軽い女の人だって、聞いてたんだけど」
視線を下げて言われた言葉はたぶん違う男から聞いたものだろう。だけどそんな風に言われてたなんて知らなかった。それにりぃくんが嫌味を言っているように聞こえる。
「 …… 」
もうここには誰もいない。りぃくんはあのあと静かにここを出て行った。この保健室に来る人はもういない。保健室担当になったカイは、保健の先生は必要ないだろうということになりカイは英語担当の先生となった。それとキスしていた人には言っといた。もう相手しないからって。だからここはあたしだけの場所。一番、落ち着ける場所だ。




