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第百二十一話 取り戻した幸せ

「紫黒、レベル2、バーションソニックウイング」

 シエラと合流して、シエラからの作戦案を聞いた昇は、その作戦を実行するために紫黒のバーションを飛翔が出来るソニックウイングへと変化させた。黒い二丁拳銃には、それぞれに黒い一対の翼がそれぞれ生えて、昇も翼の精霊とまでは行かないが飛ぶ事が出来る。

 それを確認したシエラはすぐにミリアに顔を向けるのだった。

「ミリア、行ける?」

「大丈夫だよ~、それよりも、もうやっちゃって良い?」

 そんな返答を返してきたミリアから一時的に視線を逸らせたシエラは昇へと目を向ける。そして昇が頷くと再びミリアに顔を向けるのであった。

「行けるなら、いつでも行って良い」

「分かったよ。じゃあ、思いっきり暴れてくるね~」

 そんな言葉を残してミリアはアースシールドハルバードを肩に担ぐと燕の方へ向かって一気に駆け出して行った。そんなミリアを見送ったシエラは少しだけ呆れたように息を吐いた。それを見ていた昇は少し笑いながらシエラに話しかける。

「心配は無いと思うよ。もう勝敗は決したから、後は僕達がこの戦いに幕を引くだけだから、ミリアが少しぐらい無茶をしても問題ないと思うよ」

 そんな事を言って来た昇にシエラは軽く微笑んだ顔を向けると話を続けてきた。

「私もその点については心配してない。ただ……少しはしゃいでいるように見えたから」

 どうやらシエラはミリアの事を心配して息を吐いたようではないようだ。ただミリアが調子に乗っているから、いや、乗り過ぎているから溜息に近い形で息を吐いたのだろう。そんなシエラの言葉を聞いて、昇は微笑みながら話を続ける。

「確かにそうかもしれないね。でも……ミリアの気持ちも分かるよ。やっとシエラが帰って来てくれたんだから。少しぐらい羽目を外して思いっきり暴れたいんじゃないかな」

「……やっぱり……私の所為で心配を……」

 アレッタとの因縁は解消したものの、シエラは未だにミリアを始め、琴未達ともまともに話をしていない。だから未だに居なくなった事に対する責任感が抜けきれていないのだろう。そんなシエラに昇は表情を変える事無く、微笑みながら口を開く。

「そうだね、今回の事は全部シエラに責任があるから……帰ったら皆にちゃんと謝らないとね。琴未もあれぐらいだと怒りはおさまって無いと思うよ。それに閃華や与凪さんやラクトリーさんも散々苦労してくれたんだから」

「うん、分ってる。だから……帰ったら、ちゃんと皆に対して責任は取る。もちろん、昇にも、だから……今夜は空けててね」

 えっと、シエラさん。それはいったいどういう意味でしょう。というか、その言葉を聞いた時点でオチが見えているんですけど。またしても地獄絵図ですかっ! 思わずそんな事を思ってしまう昇。まあ、今までの経験から昇がシエラの言葉を聞いて、そんな事を思ってもしかたないだろう。なにしろ昇をめぐって別の意味で行われている争奪戦では、昇は散々な目に遭っているのだから。

 だから昇は苦笑いをしながらシエラから視線を外すのだった。そんな昇を見てシエラは軽く笑うと、今度はウイングクレイモアをしっかりと手に取り背中の翼を広げて真剣な眼差しになる。

「じゃあ、そろそろ行こう、昇」

「そうだね、シエラ」

 同時に羽ばたくシエラの白キ翼と昇の黒キ翼。そして二人は一斉に飛び立つと、今回の戦いに幕を引くために羽ばたいてくのだった。



 その頃、琴未と閃華のコンビネーション攻撃によって鷲の巨鳥は完全に弄ばれていた。それでも未だに鷲にトドメをさせていないのはローシェンナが鷲を主力にコントロールしているからだろう。だがサモナーにとって召還したものをコントロールするという事は精神力がいる事であり、そのうえローシェンナは召還だけでかなりの精神力を消費している。だから鷲の動きが少しずつ荒くなってきている事を琴未と閃華はしっかりと感じ取っていた。

 そんな時だった。二人にとって予想外な事が起きた。突如として、もう一匹の巨鳥である燕が吹き飛ばされる形で鷲にぶつかって、そのまま二匹はもつれ合うように地面に叩きつけられて転がって行ってしまった。

 突然飛んできた燕が居た方向に顔を向ける琴未と閃華。そこには、こちらに駆けて来るミリアの姿が瞳に写った。そんなミリアが笑いながら謝ってくる。

「ごめんごめん、思いっきりやったら、そっちに飛んじゃった~」

 そんな事を言い出すミリアに琴未は瞳を閉じて拳を震わせており、閃華は溜息を付くのだった。ミリアの言動と行動から考える事をしなくても分かった。ミリアが周りを見ずに、ただ思いっきり戦っていただけなのは。だからこそ、ミリアは後先考えずに燕を鷲の方へ弾き飛ばしてしまったのだ。

 そのおかげで琴未達の戦闘は邪魔される事になってしまった。だからだろう、琴未が無言でミリアを呼ぶと、駆け寄ってきたミリアの頭に拳を思いっきり叩き付けたのは。

「う~、琴未~、痛い~」

「痛いじゃないっ! いくら思いっきりやって良いからと言っても周りを見て、味方に被害が出ない戦い方をしなさいよね」

「別に琴未達に当てた訳じゃないから良いじゃない~」

「何か言ったのかな、ミリア~」

「あう~、ごめんなさい、ごめんなさい」

 言い訳を呟くミリアに対して両手の拳でミリアの頭を挟んでグリグリと痛めつける琴未。どうやら戦闘を邪魔されたのが琴未にとっては怒るに充分な出来事であり、周りを見ていなかったミリアにはお仕置きが必要と琴未はそんな行動に出たのだろう。

 そんな二人に閃華は仲裁に入ると琴未とミリアを引き剥がし、未だに涙目で頭を押さえているミリアの頭を撫でながら話し始める。

「じゃが琴未よ、これはこれで良い展開かもしれん」

「どういう意味よ、閃華?」

 質問をしてくる琴未に対して閃華は口元に笑みを浮かべながら答える。

「琴未よ、私達の目的は何じゃ?」

「えっ、昇達が決着を付けるまでの時間稼ぎでしょ」

 シエラの作戦を即答する琴未に対して閃華は一度頷いて話を続けてきた。

「そのとおりじゃ。じゃから琴未よ、これで敵の戦力は一箇所に集まった事になった訳じゃ。後は私達が壁となってサモナーの元へ行かせなければ良いだけじゃ。こちらもミリアと合流した分だけ、鳥の進行を阻むのは簡単じゃろ」

「そっか、相手の戦力が集中したから私達は目の前の敵だけに集中出来るって訳ね」

「そういう事じゃよ」

 つまり閃華が言いたい事はこういう事だ。先程までの現状では戦場が二つあっただけに、どちらかが抜かれてしまえばシエラの作戦が決行出来なくなる。だが、こうして相手の戦力を一箇所に集めた事で戦場が一つとなり、閃華としてもミリアの方を気にする事無く、目の前の相手に集中できる。

 つまり戦う戦場が集中した分だけに、琴未達は自分達の戦闘に集中できるというわけだ。もちろん、ミリアがそこまで考えて燕をこちらに弾き飛ばしてきたわけではない。偶然の状況が閃華達をより有利な状況へと導いただけだ。

 ただでさえ琴未達は有利に戦闘を進めていた。ここに来て更に有利になっただけの事だ。だから琴未の怒りは一気に収まり、今は雷閃刀を手に未だに再び飛び立とうとしている巨鳥達に目を向けるのだった。

 そんな状況に閃華は自ら提案をしてくる。

「さて、そんな訳でじゃ。ここからは三人での防衛線となってくるわじゃが。こちらの戦力が増えたからには誰かが指揮を取らねばなるまい。じゃから二人とも私の指示に従ってもらうが、よいな?」

「了解」

「分かったよ~」

 閃華の提案に賛同を示す琴未とミリア。確かにこの面子なら閃華が戦闘の指示を出した方が良いというものだろう。だからこそ二人から不満の声が上がる事無く、あっさりと閃華の提案を受け入れてきた。……まあ、二人とも指示を出すより思いっきり暴れたいという気持ちが強いから前線に立ちたいだけだろう。だから指示を出すという、めんどうな行為を閃華に譲り、前線に立ったのだ。

 そんな二人の気持ちに気が付いているのだろう。閃華は呆れたように溜息を付くと、二人に向かって指示を出す。

「琴未と私でそれぞれの鳥を相手にするんじゃ。ミリアは鳥が飛び立とうとしたら、それを防ぐんじゃ。絶対に飛ばせてはいかんぞ」

「分かったよ~」

 閃華の指示に元気良く返事を返すミリアを見て閃華は微笑む。閃華が出した指示は、言わば二人のフォローである。それをミリアはあっさりと受け入れた。どうやらラクトリーからの強制修行により、自分の立ち位置が段々と分かってきた事を閃華は実感したようだ。

 そんなミリアの返事を聞いた閃華は琴未と視線をまじあわせるとお互いに頷き、それを合図に琴未と閃華はそれぞれの標的に向かって駆け出した。琴未は今まで戦っていた鷲に、閃華はミリアが弾き飛ばしてきた燕に向かって一気に距離を詰める。

 そんな二人に巨鳥達も気付いたのだろう。ここは一気に空から攻めようと翼を羽ばたかせて宙へ舞い上がろうとするが、その前にミリアが動く。

「アーススピア」

 巨鳥達の下から地面が突撃槍のような形で何本も巨鳥達に向かって突き出してくる。だが少しだけ遅かったようだ。地面から突き出した槍が伸びきる頃には鳥達は槍が届かない範囲まで舞い上がってしまった。けれどもミリアは笑みを浮かべる。

「ショットッ!」

 掛け声と同時にアースシールドハルバードを振り上げるミリア。それを合図に地面から突き出していた槍は、まるで地面から撃ち出されるかのように地面から離れると鳥達に向かって、弾丸のように突き進む。

 さすがにこんな攻撃なんて鳥頭では予想できなかったのだろう。鳥達は発射されたアーススピアを避ける間もなく、体中に傷跡を残し、何本かは身体に刺さり地面へと落下する。これで二匹とも宙に舞い上がる事無く、地に足を付けて琴未達に対抗しなくてはならなくなってしまった。

 鳥達はそれでも何とか立ち上がるとアーススピアは砂となり地面へと帰し、そこに琴未と閃華が一気に突っ込んで行く。

 二匹とも地面に足を付いている状態だ。この状態で足の爪は使えない。そうなると、どうしてもくちばしでの攻撃を余儀なくされる。二人とも鳥達の初撃がくちばしである事は分かりきっている。だからこそ閃華は燕の攻撃を避けると、そのまま横に回り、反撃に移る。

 そんな閃華とは対称的に琴未は攻撃的だった。なにしろ、くちばしの攻撃を避けるのと同時に跳び上がり、鷲の頭を踏み台にすると琴未は更に上を取ったのだ。そんな琴未が雷閃刀に雷の属性を一気に流し込む。そして跳び上がった琴未は真下に居る鷲に向かって雷閃刀を突き出せるように、大きく雷閃刀を握った腕を後ろに引くのだった。

 そして充分な力と属性を溜め込むと真下に居る鷲に向かって一気に技を繰り出す。


 ─昇琴流 雷ノ村雨いかずちのむらさめ


 真下に居る鷲に向かって数え切れないほどのスピードで刺突を連続で繰り出す琴未。それだけのスピードがあれば刀身が届かなくても、刺突の衝撃で傷を負わせる事は充分に可能だろう。だが、この技の真髄はここから始まる。

 一回の刺突と共に何本かの雷が落ちる。琴未は刺突の攻撃だけでなく、雷を交えて攻撃しているのだ。刺突の数だけでも、かなりの数で傷を負わせるのに充分だというのに、そこに刺突よりも多くの雷が落ちるのだ。鷲は逃げる事も出来ずに、ただ琴未の攻撃を受けるしかなかった。

 なにしろ真上からの連続攻撃である。しかも広範囲の連続攻撃、これを完全に避けきるのは、かなり難しいだろう。なにしろこれは対シエラ用に琴未が考案した技であり、一撃の威力は低いが、確実にダメージを与える事が出来る技なのだ。

 そんな技を地面に落ちた鳥風情が何とか出来るわけが無い。ただ琴未の攻撃を喰らうだけである。

 そして琴未が地面に戻る事には、鷲の身体には無数の切り傷と雷による焼け焦げた後が無数に残っていた。それでも倒すに至らなかったのは、相当力を込めてローシェンナが召還したからこそ、かなりの耐久度を持っている証拠である。

 けれども充分なダメージを負わせた事は確かであるのだが、琴未はこれでは満足が行かないのだろう。地面に降り立つとすぐに鷲に向かって駆け出して次なる攻撃に移るのであった。



 やれやれ、今の琴未を相手にせんとはいかないとは、鳥とはいえ少しだけ同情を禁じ得ないものじゃのう。そんな事を感じながら閃華は燕が振り出してきた翼を大きく跳んで避けると、反撃に転じる。

 跳んだために未だに空中にいる閃華だが、そんな事に構う事無く龍水方天戟を燕の身体に突き刺す。空中での姿勢制御や反撃の仕方などは、いくつもの戦場を経験している閃華にしてみれば慣れていることなのだろう。

 そのうえ、今はかつて無いほどのエレメンタルアップで力が溢れ出ている。だから閃華の動きは今までに無いほど軽やかで鋭かった。そんな閃華の反撃に力不足で召還された燕が対抗出来るわけではない。

 燕が悲鳴に似た泣き声を上げると閃華は龍水方天戟を引き抜きながら地面へと舞い降りた。そんな閃華に向かって燕はすぐに頭を向けてくる。下手に傷を負ったものだから痛みで刺激されたのだろう。

 燕は翼を羽ばたかせると軽く宙に浮かび、足の爪を閃華に向けてくる。そんな燕の行動を見て閃華は改めて感じるのであった。

 やはりこちらは完全に自立行動をしているようじゃのう。周りを見ずに攻撃してくるが、その証拠じゃな。そんな事を思いながら閃華は燕から遠ざかるように後ろに飛び退く。もちろん、そんな事をすれば燕が飛び立って閃華を空中から襲ってくるのは目に見えている。そう、相手が閃華だけなら。

 だからこそ閃華は燕から距離を自分に被害が及ばない場所まで後退したのだ。そんな閃華の行動に何も疑念を抱く事無く、飛び立とうとする燕。そんな燕に他からの攻撃が向かってくる。

「アースボール、ショットッ!」

 そう、燕が飛び立とうとした瞬間からミリアがいつでも攻撃出来るように準備していたのだ。そして閃華が退くのと同時にミリアは大地から作り出した、幾つもの大地の球体を燕に向かって放ったのだ。

 閃華だけしか見ていなかった燕にとっては、ミリアからの攻撃は予想外であり、逆にミリアにとっては警戒していたからこそ、すぐに攻撃を仕掛ける事が出来たのだ。

 そしてミリアが放ったアースボールは燕に直撃して、燕は簡単に地面へと戻される事になってしまった。そんな状況に満足げに笑みを浮かべるミリア。ミリアの性格からして、これで満足するとは思えないが、そこはラクトリーからの強制修行の成果で戦闘での考え方も少しは変わってきたようだ。

 今までのミリアなら常に前線に立って、全員の盾となり、隙を見ては攻撃をする事を優先させてきたが、今のミリアはそんな考え方をすっかり変えていた。そもそも全員の盾になるという事は常に前線に立って攻撃を防ぐだけではない。時には後ろから戦況を見て、防御と攻撃を行う。これこそが大地の精霊が有している力を最大限に発揮できる戦い方なのだ。

 つまり一対一ならともかく。仲間との連携が必要な時には常に戦況を見て、全員の盾となり、時には槍となって攻撃を行う。そんな戦い方をミリアはラクトリーから根気良く、というか時間を思いっきり費やして、やっと学んだのだ。大地の精霊が最も有意義に力を発揮できる位置取り。その場所こそが全員の盾となれる場所だという事を。

 要するに大人数での戦闘では大地の精霊を効果的に戦闘に参加させるなら、前線に押し出すより、少し退いた位置から属性による防御と攻撃を行わせる。それこそが大地の精霊が有している力を最大限に発揮させる戦い方なのだ。

 もちろん閃華もその事は知っていた。だが今までのミリアが修行不足であり、自ら前線に出る事が多かった事から、このような戦術は取らなかったのだ。だが今はラクトリーのおかげでミリアは確実に成長している。だから指示を出す閃華にとってもミリアの行動は読みやすく、戦略を練るにも楽になっていた。

 まあ、ミリアもそれなりに成長しているという事なのだろう。閃華はそんなミリアを見ると軽く微笑んだ。そしてすぐに地面に落ちた燕に視線を戻すと、龍水方天戟を手に一気に駆け出す。さすがにミリアの攻撃を受けた直後だけであって、未だに動けないようだ。そんな燕に閃華はトドメを刺すために一気に動き出す。

 それでも閃華はトドメが刺せるかは五分五分だと思っていた。なにしろ閃華は先程の戦いで大分、属性の力を消耗している。確かに、この戦いは全ての戦いで勝利しないと全員が納得しないし、気が収まらないだろう。だからこそ、閃華としても先程は全力で鷹を倒したのだが、さすがの閃華も無尽蔵に属性の力を使えるわけが無い。

 そのうえ、先程は消耗が激しい技をかなり多く使ってしまった。それだけ閃華も暴れたかったし、ここまで戦闘が長引くとは思ってもいなかったのだろう。だから閃華には属性の力を使うだけの力があまり残ってはいない。

 それでもここまで戦えるのは、それだけ閃華が属性に頼らない戦い方を戦場で学んできたからだ。だから今度も属性に頼らずに、燕にトドメを刺すために一気に攻撃を仕掛けるのだった。

 再び地面に落ちた燕はよろけながらも、何とか立ち上がろうとしている。そんな燕に向かって閃華は龍水方天戟を走りながら構える。槍先を下に向けながら突撃体勢を取る閃華。そんな閃華に向かって、やっと体勢を立て直した燕は閃華の姿を確認すると一番攻撃し易いくちばしを閃華に向かって突き立ててくる。

 もちろん弱った燕の一撃だ。今の閃華なら簡単に避ける事が出来るだろう。だか閃華はあえて燕の攻撃を避けようとはしなかった。それどころか龍水方天戟を横にして前に押し出して、迫ってくる燕のくちばしに備える。

 そして燕のくちばしが閃華に届いた瞬間だった。燕としては閃華に攻撃を入れたつもりだったろうが、思い掛けない衝撃に自分の攻撃が通っていない事を察すのだった。そして閃華はというと、龍水方天戟で燕のくちばしを受け止めていた。

 いや、正確には燕のくちばしが届く瞬間に一気に身を沈めた閃華が、下から龍水方天戟を突き出して、くちばしの攻撃力を無くすのと同時に動きを止めたのだ。そのため、今はくちばしの下に潜った閃華が龍水方天戟でくちばしを上に押し出そうとしている形となっている。

 そんな一瞬の攻防に燕は驚くという感情が無いのだろう。閃華によってくちばしを上に弾かれないように、今はくちばしを下に向けて力を込めている。どうやらこのままくちばしで閃華を押し潰そうというつもりなのだろう。

 そのうえ相手は普通の燕ではなく、巨鳥である。そんな鳥が体重を掛けるようにくちばしを押し付けてくるのだ。いくら閃華でも、巨鳥の燕を持ち上げるなんて芸当が出来るわけがなかった。それでも閃華はある一瞬を狙って今は上から押し込んでくる、燕のくちばしを支え続けるのだった。

 ……さて、そろそろのようじゃな。ある事を確認した閃華は一気に行動に出る。今まで支えていた燕のくちばしを投げ下げるように力の流れを変える。もちろん、そんな事をすれば燕のくちばしは支えを失って下に落ちるだけだが、閃華が確認した事と力の流れ方が閃華の思惑通りの展開にさせる。

 閃華が確認した事。それは燕が体重を掛けるために足を地面から半分ほど離すかだ。体重をくちばしに掛けるからには、自然と重心が前に行くために、どうしても爪先立ちでは無いが、地面を掴んでいる足の力が緩んで足が地面から離れていく。それが半分も離れれば、かなりの重心が前に来ている証拠だろう。

 閃華はその事を確認するとくちばしを下に向けて投げるように力を掛けたのだ。その結果、燕のくちばしは円状に軌道を描き、燕のくちばしは綺麗な形で地面に突き刺さる結果となってしまった。そう、くちばしを地面に刺して燕の動きを封じ、なおかつ自分は燕の懐に入る事に成功した。これこそが閃華の狙っていた戦術だ。

 それでも、いきなり支えを失った燕の身体が閃華に向かって落ちてくるが、閃華は龍水方天戟で落ちてくる燕の身体を思いっきり弾き飛ばす。しかも地面に刺さっているくちばしが抜けないように弾き飛ばしたのだ。これで燕の身体は完全に空中に浮いた事になる。そして一度は浮き上がった燕の身体は、弾かれた勢いが無くなると再び閃華に向かって落ちてくる。

 けれども今度は閃華も充分に備えている。そう、落ちてくる燕の身体に向けて龍水方天戟の矛先を向けて思いっきり力を溜めているのだ。後はタイミングを計るだけ。そして閃華は狙いを定めて、射程圏内に入ると一気に跳び上がった。

 龍水方天戟の矛先を向けて、落ちてくる燕に突っ込んでいく閃華。そして機が熟すると閃華は一気に龍水方天戟を突き出した。

 その衝撃で一瞬だけ落ちていた燕の身体が空中で一旦停止する。そして次の瞬間には燕の身体を突き抜けて閃華が飛び出してきた。

 さすがは閃華と言ったところだろう。燕の身体が落ちてくる力と自分自身が上昇する力を利用して、龍水方天戟の矛先に全ての力を集中させて、燕の身体を貫通するだけの力を生み出して一気に攻撃したのだから。

 その結果として燕の身体には、穴が開き、閃華は空中で姿勢制御しながらミリアの元へと舞い降りた。

「やったね、閃華~」

 閃華の攻撃で確実に燕を倒したと感じたミリアが喜びの声を上げる。そんなミリアに閃華も微笑みのだった。

 だが次の瞬間には燕は大きな鳴き声を上げて、再び立ち上がろうとしている。どうやら燕にかなりのダメージを与えたものの、倒すまでには至らなかったようだ。

「うわ~、身体に穴が空いているのに、まだ立ち上がってくるよ~」

 燕を見て、そんな感想を口にするミリア。閃華も燕の様子を見ながら現状をミリアに説明する。

「どうやら倒せなかったようじゃのう。なにしろ、あの燕はサモナーの能力によって召還されたものじゃ。普通の鳥とは訳が違うわけじゃよ。じゃから身体に穴が空こうとも、召還された力を完全に消滅させないと倒せないじゃろ」

「う~、まだ戦わないといけないの~」

 しぶとい燕にそんな不満を口にするミリア。だが閃華は燕に背を向けるとミリアの元へやってきた。

「いや、もう充分じゃろ。あれほどの傷じゃ、すでにあの燕は戦う事は出来んじゃろ。それに……」

「それに?」

「そう、それに……そろそろ時間じゃろうな」

 何かを確信した閃華にミリアは首を傾げるばかりだった。そして閃華は琴未の方へと目を向けると琴未が相手にしている鷲もすでに戦える状態とは言えないだろう。そんな状況を見て、閃華は琴未に戦闘を中断して集るように指示を出すのだった。



 閃華達の戦闘が始まった直後、昇とシエラの二人はローシェンナの前へと降り立っていた。そして昇はすぐに紫黒をローシェンナに向けると宣言するかのように、はっきりと言葉を口にした。

「さあ、あなたの精霊二人は倒しました。残っているのは、あなただけです。覚悟は……良いですね」

 昇にしては珍しく勝利を示す言葉を口にした。昇は今までの戦いでは、はっきりと契約者を倒した事は無い。それだけに今回のように、はっきりと勝利を口にする昇が珍しかった。その珍しさがシエラにも分かったのだろう。シエラは昇の一歩後ろに立ちながらも、表情には出さないが少しだけ驚いていた。

 一方、紫黒を突き付けられたローシェンナは動揺するばかりだ。なにしろサモナーの能力は直接戦闘が出来ない。全て召還したものに頼って戦う能力だ。だからこうして戦える昇達を前にすると敗北を悟る前に動揺しか出来ないようだ。

 そんなローシェンナが苦し紛れか、意外な言葉を口にし始めた。

「わ、分かりましたわ。確かに今の状況を見れば私の負けは明らかですわ。ですから、今回は負けを認めますわ。だから、その、見逃してくださいまし」

 プライドの高いローシェンナにしては珍しい言葉を口にした。それもしかたないだろう。なにしろ戦力となる精霊は全て倒されている。そのうえサモナーの能力は完全に琴未達に抑えられている。この状況でローシェンナに戦うだけの力は無いのだ。

 それにかなり無理して三匹目を召還したから、今のローシェンナには更に召還するだけの力が残っていないのだ。だからだろう、昇の情けに頼ろうとするような言葉を口にしたのは。さすがのローシェンナもここまで完膚なきまで叩きのめされるとプライドよりも自分の事を心配するようだ。

 そんなローシェンナに向かって昇は首を横に振ると、鋭い視線で叫ぶ。

「申し訳ないけど……あなたを見逃す事は出来ないっ! いや、あんなだけは絶対に倒させてもらうっ!」

 昇のはっきりとした宣言を聞いたローシェンナの顔が青ざめて行く。いくら争奪戦で命を落とす事が無いと言っても、ここまではっきりとトドメを刺すという宣言を聞かされてはローシェンナも絶望を感じたのだろう。それでも微かなプライドがローシェンナの口を動かす。

「あ、あなたは負けを認めた者の首を取ろうというのですの。それがあなたのやり方ですの、それは卑劣とは思いませんの」

 そんな事を言ってくるローシェンナに昇は紫黒の引き金に指を掛けると紫黒に力を流し始めた。

「卑劣ですか? それはこっちのセリフです。あなた達こそシエラを甚振いたぶり続けたじゃないですか。僕はそんなあなた達を許す事が出来ない」

 徐々に紫黒が光り輝き始めていく中でローシェンナは、それでも言葉を返す。だが、その言葉こそがローシェンナにとっては命取りであり、決して言ってはいけないことだという事にローシェンナは未だに気付いていないようだ。だからこそ、その言葉を口にする。

「そ、そんなのは当然ですわ。妖魔は忌むべき存在、そんな存在を甚振って、倒して、何が悪いというのですの」

 はっきりとその言葉を口にしたローシェンナに向かって昇が叫ぶ。

「妖魔とか関係ないっ! シエラは僕達の仲間だ、仲間が甚振られて、傷つけられて黙って引き下がるなんて事は僕には出来ない。大事な仲間だから、掛け替えの無い家族だから、僕はあなたを許す事が出来ないっ! だからこそ、この一撃であなたを倒させてもらうっ!」

 昇の気迫に押され、更に輝きを増す紫黒を見てローシェンナには反論するだけの気迫は残ってはいなかった。それどころか輝きを増す紫黒を見て、後ずさりするばかりだ。

 どうやらローシェンナは未だに理解できてないのだろう。いや、最早理解するだけの時間すらないのだから、しかたない。昇達がシエラを受け入れた瞬間からシエラが妖魔であるという事実など取るに足らない事実になっている。つまり気にする事もしない、人が自然と呼吸をするように、昇達にとってはシエラが妖魔という事実はその程度の認識しかしなかった。

 けれどもローシェンナ達はシエラを妖魔として甚振った。それは昇達から見れば、大切な仲間であり、家族でもあるシエラを散々傷つけた事に見える。だからこそ昇はローシェンナを許す事は出来なかったのだ。いくら昇でも自分の家族を傷つけられて黙っていられるほど、お人よしでは無いという事だ。

 そんな昇達の理解に理解できないままにローシェンナは昇に背を向けて逃げ始める。精界の中は完璧な閉鎖空間である。人の足では逃げても逃げ切れる物ではない。だが負けたという事実から少しでも抵抗するためにローシェンナは昇の前から逃げ出したのだ。

 そんなローシェンナに向かって昇は紫黒の引き金を引く。

「フォースバスターッ!」

 紫黒の片方から砲撃とも言える力がローシェンナに向かって放たれる。それを感じたローシェンナは走りながらも振り向き、自分に向かってくる力に恐怖するのだった。それでも、ローシェンナは今まで遊びとはいえ争奪戦を経験して来ただけの事はあるのだろう。

 ローシェンナはフォースバスターを横に転がるように避けると、ローシェンナが居た場所にフォースバスターが着弾して爆発を引き起こす。さすがに近距離での爆発である、いくらローシェンナが争奪戦で経験を重ねたと言っても、近距離での爆発を避ける事なんで出きるわけがなかった。

 そのため、爆発の衝撃によりローシェンナは吹き飛ばされて、ついでに着ていた派手なドレスもところどころが破けたり、焼け焦げた後を残したりした。それでもローシェンナの体力は尽きてはいなかったのだろう。ローシェンナはすぐに立ち上がると、再び逃げ出そう駆け出そうとするが立ち上がった時点で身体が動かなくなっていた。

 その事に激しく動揺するローシェンナ。そんなローシェンナの後ろから静かに声が聞こえてきた。

「エアーバイント。今のあなたは空気の鎖に縛られている状態。だから動く事も出来ないし、空気だから鎖を断ち切る事も出来ない。つまり、あなたは逃げる事は出来ない。後は……今回の戦いに幕を引くだけ」

 後ろから聞こえてきた声にローシェンナは唯一だけ動く首を後ろに回すと、そこには昇とシエラがゆっくりとローシェンナに向かって歩いている。その事にローシェンナは動揺よりも恐怖を感じていた。

 それは負ける事の恐怖よりも、シエラを痛めつけた事による報復を想像させたからの恐怖なのだろう。そんな恐怖を感じながらもローシェンナは体を動かそうとするが、シエラが言ったとおりに、まるで無数の鎖で縛られているかのようにローシェンナは一切、身体を動かす事が出来なかった。

 そんなローシェンナの横を通り過ぎて、昇とシエラはローシェンナの前に立つ。そしてシエラは少しだけ意地悪な笑みを浮かべながら口を開くのだった。

「これがあなた達が嫌った妖魔の能力。私の能力である大気のルーラーは全ての大気を自由に操る事が出来る。もちろん、そうやって空気だけで相手の動きを封じる事も出来る」

 そんな事をわざわざ説明するシエラ。どうやらシエラはローシェンナが報復で痛めつけられると勘違いしている事に気付いているようだ。だからこそ、シエラはわざわざ自分の能力について説明するのだった。隣で少し呆れている昇を見ないようにして。

 そして、そんな説明を受けたローシェンナは恐怖から動揺するばかりだ。

「こ、こんな事をして、いったい、どうする……つもりなんですの?」

 そんな質問をしてくるローシェンナにシエラは更に意地悪な笑みを浮かべるが、昇はそんなシエラの肩に手を置くと、シエラより一歩だけ前に出た。

「決まってるじゃないですか。終わりにするんですよ……こんな戦いも、こんな差別も……そして僕は大切な家族を取り戻す。それだけです」

 最後はローシェンナに向かって微笑む昇。そんな昇の微笑を見てローシェンナは動揺しながらも首を傾げるばかりだ。

 そんな昇がシエラに顔を向けると黙って頷く。一方のシエラは少しだけ残念そうな顔をしながら昇に向かって頷くのだった。どうやらシエラとしては怯えるローシェンナを仕返しに、もう少し怖がらせてやりたいと思っていたのだろう。

 だが未だに琴未達は戦っている状態である。昇としては、この戦いを一刻も早く終わらせたかったし、これ以上の戦いは無益だと思ったからこそ、シエラに向かって頷いたのだ。

 そのシエラがウイングクレイモアをローシェンナに向けると真剣な眼差しになる。そんなシエラを見てローシェンナは、もうプライドも何もあったものじゃない。ただ思った事を口にするばかりだ。

「い、いや、ダメ、ダメよ。私は、もっと……もっと」

「悪いけど、これ以上はあなたと話すことは無い。だから……この一撃で終わらせる」

 ローシェンナの言葉を遮って、そんな言葉を口にし終えたシエラはウイングクレイモアを突き出して、背中の翼を羽ばたかせると未だに動けないローシェンナに向かって突っ込んでいくのだった。

 そして次の瞬間にはローシェンナに何も喋らせない内にウイングクレイモアがローシェンナの身体を貫く。なにしろウイングクレイモアはかなり大きい、そんな物が身体を貫いたのだからローシェンナは致命傷を負って、このまま死んでもおかしくは無いだろう。

 だが、この戦いは争奪戦であり、精界の中は精霊世界と言っても良いほどの環境だ。つまり、精界が張られて行われる争奪戦では人が死ぬ事は無い。一部の例外はあるものの、通常の争奪戦では死ぬ事は無い。

 ならトドメとは何を意味しているのか。それは契約者の中にある器の破壊である。契約者は致命傷を追うと、その致命傷の代償として己の中にある精霊王を受け入れる器が壊れる。そして器は争奪戦に参加するチケットと言っても良いだろう。それを失う事になるのだ。

 実際、ローシェンナの身体を貫いたウイングクレイモアには一滴の血も付着していないし、シエラはしっかりとローシェンナの中にある精霊王の器を破壊した感触をしっかりと感じ取っていた。

 それからシエラはウイングクレイモアを一気にローシェンナの身体から引き抜く。器を破壊された契約者は争奪戦に参加も出来ないし、精霊との契約も出来ない。つまり争奪戦から完全に落とされた事になる。

 そしてローシェンナが死んでいない証拠にウイングクレイモアが貫いた部分の服は切り裂かれているものの、ローシェンナの身体には傷一つ残っていなかった。これこそが器を破壊された証拠でもあり、ローシェンナにトドメを刺した証拠であり、昇達の勝利を示す物であった。

 シエラはウイングクレイモアを引き抜くのと同時に大気のルーラーでローシェンナを縛っていた大気の鎖も解除したのだろう。すっかり気を失ったローシェンナが倒れるのを見ていると昇がシエラの隣に歩いてきて、倒れているローシェンナを見るが、すぐに視線をシエラに移動させた。

「これで終わりだね」

「うん、こちらの作戦通りに行ったから楽だった」

 どうやら全てはシエラの作戦だったようだ。確かに昇とシエラが力を合わせて、巨大な砲撃を放り込めば。それだけでローシェンナを倒す事が出来ただろう。だが、万が一という事もシエラは考慮して、ここは確実に倒せる作戦に出たのだ。

 それが昇の砲撃で気を逸らせて、シエラがエアーバインドで相手の動きを封じるという作戦だ。たとえ昇の砲撃が直撃していたとしても、シエラの力なら確実にローシェンナの動きを封じる事が出来ただろう。いや、直撃しただけに動きを封じやすかっただろう。

 後はシエラが直接攻撃でトドメを刺すだけ。なにしろ相手の動きを封じているのだから。動かない的に攻撃を仕掛けるようなものだ。だから確実にトドメをさせる可能性が高くなる。だからこそシエラは確実にローシェンナを倒す事が出来る、この作戦を選んだのだ。

 そこには、こんな戦いを一刻も早く終わりにしたいというシエラの気持ちもあったかもしれない。けど、それ以上にこんな運命を導いたローシェンナを自分の手で確実に倒したかったのだろう。

 もし、シエラとアレッタが別の出会い方をしていれば、あのような結末は迎えなかったかもしれない。そんな思いがシエラの中にあったからこそ、シエラは自分の手で確実にローシェンナを倒せる作戦に出たのかもしれない。

 最後は自分の手で戦いに幕を引くことでシエラは過去の因縁と昇達への謝罪を一緒に解消することが出来たのだ。最後の最後まで人の手でやってもらうと、どうしてもシエラの中に後悔では無いが、悔やみが残るだろう。

 けれどもシエラはローシェンナを自分の手で倒した事とアレッタと和解できた事で少しだけ、ローシェンナ達に感謝していた。なにしろローシェンナがアレッタと契約して、アレッタを連れてきてくれたからこそ、シエラはアレッタと和解できたのだから。

 だが、それと同時にアレッタとは別の出会い、再び味方として出会いたかった。という気持ちがシエラの中では強かった。もし味方として出会っていれば、アレッタと戦う事無く。お互いに本音を話し合うだけで済んだかもしれないのだから。

 だからシエラは複雑な心境だった。

 そんなシエラの隣で昇が静かに口を開く。

「終わったね」

「……うん」

 短く答えてきたシエラに昇は視線を向けると少し驚きを示した。なにしろシエラが涙を流してるのだから。昇としては、なんでシエラが涙を流しているのかが分からない。だから、その事を聞こうとしたが、やっぱり別の質問に変えた。

「なんで泣いているか……聞いて良い?」

 そんな昇の質問にシエラは驚いた表情をすると慌てて涙を拭った。どうやらシエラは自分でも涙を流していた事に気付いていなかったようだ。そんなシエラが涙を拭き終わると自然と穏やかな顔付きになった。そして昇の質問に答える。

「後で話す。今は……大切に仕舞っておきたいから」

「そっか、分かったよ」

 シエラの答えにすんなりと承諾の言葉を返す昇。どうやら昇にも分かったようだ。シエラが流した涙の理由が、だからこそ今はそれ以上の事は聞かなかった。

 そして昇が黙り込むとシエラは昇の腕に抱き付き、そのまま昇に寄り添ってきた。そんなシエラを見て昇は微笑むと、いつものように優しい口調でシエラに話しかける。

「そんな事をしてると、また琴未から攻撃されるかもしれないよ」

「その時は返り討ちにするだけ、だから……今だけは」

「……分かったよ」

 昇にしては珍しくシエラの行為を受け入れる。それもしかたないだろう、なにしろ昇も始めて見るのだから。シエラが……幸せそうな顔で昇に寄り添ってくる姿を。







 はい、そんな訳で、やっと終わりましたね~。これで白キ翼編のラストバトルは終わりです。まあ、正確に言うと、まだ少しだけ残っているんですけどね。まあ、それは次回のお楽しみ~、という事で。

 そんな訳で白キ翼編も残り数話となりました。ちなみに予定では、後二話ぐらいで終わりにしようかな~、と思ってますけど……終わるのかな? まあ、なんにしても白キ翼編はそれぐらいで終わりにしようかと思っております。

 そんな訳で次編の予告を少し。次編は少し本筋から離れた番外編……じゃないですけど。う~ん、なんていうか。本編とは少し話の流れが違う……劇場版? みたいな感じの話にしようかと思っております。

 そんな訳で次編は一応本筋とは繋がっておりますが、一編完結の話にしようかと思っております。だから次編は一切の伏線を残しません。確実に一編だけで話が終わります。

 とまあ、そんな感じで次編をやって行こうかと思っております。

 さてさて、予告も済んだところでそろそろ締めましょうか。

 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。更に評価感想もお待ちしております。

 以上、そろそろ本気で社会復帰しないとだな~、とか思っている葵夢幻でした。

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