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第六十三話

 少し気分転換します。


 裏の作業場へいきます。

 四人は出かけているようです。


 僕はリペア待ちの一般品保管箱の底をあさります。

 色の付いた石の欠片を小箱に集めます。

 100個くらい集まります。


 鑑定室に戻ってリペア祭りです。

 スキル経験値は入らないので、ひたすらリペアします。


 さすがに魔力切れします。


 ここでマジックポーションの出番です。

 またひたすら無心でリペアします。

 リペア四十四回で魔力切れです。

 

 もう一本、マジックポーションに手を染めます。


 数分後、ようやくリペア祭りが終わります。

 祭りの終わりは呆気ないものです。

 残ったのは大小様々な大きさの宝石達です。

 カットのデザインも色々あって綺麗です。


 もう少し気分転換します。


 作業場の裏口から外に出ます。

 近くなら外出も大丈夫です。

 施錠も忘れません。


 大きく深呼吸してから歩きます。

 行き先は三軒隣りの宝石屋さんです。

 看板はシンプルです。


 

◆王室御用達◆

 宝石専門店

『オフィス ディ ラブ注入』



「こんにちは、僕はトキンです。買取りお願いします」


 お店の奥から細身の神経質そうなおじさんが腰をくねくねさせながらやって来ます。


「これはこれは、トキン・ヴェネート様。ようこそお越し下さいました。店主のラブと申します。お見知りおきを。奥の部屋にご案内します。どうぞこちらへ」


 ラブさんが腰をくねくねさせながら先導します。

 ちなみにラブさんの歯は全て銀歯でした。


 白を基調としたシンプルな部屋に通されます。


「トキン様、買取り希望とのこと。そちらの箱の中がそうですかな」


 僕は頷いてこたえます。


「はい、そうです。趣味でかなり集めたのですが、飽きてしまって」


 あまりに大量なので、公爵家の人間が金に物を言わせて集めた風を装います。


「そうでしたか。是非、拝見させて下さい」


「はい、お願いします」


 ラブさんが片眼鏡モノクルを目に当て鑑定していきます。


 応接室に若くて上品な女性が入ってきます。

 

 紅茶と蜂蜜とレーズンクッキーが並びます。

 僕はにっこりでお礼します。

 

 女性は一瞬だけ、ラブ店長に潤んだ瞳を絡ませ退室します。


 早めのティータイムで待ち時間を過ごします。


 ラブさんはものすごい勢いで宝石を捌きます。

 もう残り僅かです。


「大変、お待たせ致しました。傷一つ無い素晴らしい状態であります。さすがはトキン様のコレクションでございます。全て引き取らせて頂きます」


 ラブさんが買取り金額を書いた羊皮紙を見せます。


 僕はにっこりで頷きます。

 宝石専門店『オフィス ディ ラブ注入』の証文を受け取り店をでます。


 丁度、フォルトゥーナの鳴き声が聞こえます。

 我が家のティータイムのようです。

 お店に戻り、帰り支度をします。



 トツカーナ伯爵邸であるプッブリコ宮殿の離宮であり、ヴェネート公爵家の別邸でもある大きなお家に着きます。

 略して「別邸離宮」と呼びます。

 たぶんです。


 八人みんなでティータイムです。

 今日は紅茶と蜂蜜とレーズンクッキーです。


 ついさっき全く同じメニューのお茶をしましたが、そんな素振りを一切出さず軽食と会話を楽しみます。

 紳士のたしなみです。


「トキンや、ソフィアお嬢様の都合がついたぞぃ。二週間後なら行けると言っとるわぃ」


「本当」


「なんなら、泊まりでもいいらしいぞぃ。伯爵夫人は天然温泉がお勧めじゃと言っておったのぅ。ふぉふぉふぉ」


「いいの。それなら二週間後に泊まりでの方がいいけど。どうかな母さま」


「ふふふ、いいわよ」


「決まりじゃのぅ。先触れを出しておくわい」


「やった〜」


 はしゃいでしまいます。

 紳士では無いようです。

 

 スキップで部屋に戻ります。

 エリザとアンナもスキップに付き合ってくれます。

 

 二人に手伝ってもらい外着に替えます。

 手土産レーズンクッキーを持ってフォルトゥーナ号に乗り込みます。

 お店にトンボ帰りです。


 お店の正面扉の鍵を開けます。

 カランカラン♪

 『トキンの虫眼鏡』開店です。


 店内入って左手の壁にあるスライドドアをノックして開けます。

 門番ズに挨拶&手土産レーズンクッキーです。


「トキン、忙しそうだな。若いとはいえ、若すぎるからな。無理は禁物だぞ」


 バーン門番長が心配してくれます。


「二週間後にまとめてお休みするので、それまで頑張ってます」


 僕はにっこりで答えます。


「そうか、無理は禁物だぞ。休みは思いっきりゆっくりするといい」


 ニヤリの笑顔に、にっこりで頷きます。


 カウンターをくぐり鑑定室に入ります。

 さらに扉を開けて作業室を覗きます。

 四人は外出中のようです。

 手土産レーズンクッキーを作業台に置いておきます。


 

 ふむぅ〜ん。

 鑑定室でしばらく考えます。

 今日やるべきことに悩みます。


 二週間後のモンタルチーノ仕入旅行が決まります。

 

 当初モンタルチーノでは、小物雑貨の素材買取り、幸運アイテム探しと資金提供だけを考えていました。


 お店を見回します。

 行き場のない【古代の逸品】の小物雑貨が数十点、溜まっています。二階の棚にもあります。

 さらにリペア待ちの素材もあります。

 かなりの在庫があります。


 当初はここシェーナ街の北方、フィレンツ街にあるポーロ商会に卸売りしようと思っていたのです。

 フランネル織物と【古代の逸品】の小物雑貨をです。

 そのルート確保の為にトツカーナ伯爵に馬車をお願いしたのです。


 でも今後、モンタルチーノ街からの馬車が僕の店にも寄るのです。

 モンタルチーノとの馬車ルートが手に入るともいえます。

 

 

 ふむぅ〜ん、


 ・・・見えました。


 

 シェーナ由来のリペア済み【古代の逸品】は鑑定書付きでモンタルチーノ子爵へ委託販売します。


 モンタルチーノ由来のリペア済み【古代の逸品】はポーロ商会フィレンツ支店に委託販売します。


 ユニークスキル「リペア」を隠す為のルート処置でもあります。


 これで小物雑貨の処分先を二件確保できます。

 

 実は小物雑貨の扱いに困っていたのです。

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