第四十二話
小さな鑑定屋さん『トキンの虫眼鏡』開店です。
大きくて頑丈そうな西門に目を向けます。
元気な四人組が手を振って帰って来ます。
僕もにっこりで手を振ります。
「よう、トキン。今日も頼むぜ」
「今日は稼げなかった泣ける」
「マジで不調。魔物少なすぎ」
「腹も減ってない」
四人がアイテムを並べます。
「二つで3,000ゴルドになります」
開店以来ほぼ毎日来てくれる常連さん。Eランクパーティー『たぬきの皮』さん達に、にっこり伝えます。
「おう、それで頼むぜ」
「泣ける稼ぎ」
「マジ不調、魔少」
「やっぱ、腹減ってたわ」
騒がしく帰って行く四人を見送ります。
Aランクパーティー『やばいモグラ』の八人が西門から帰って来ます。
リーダーのホルンさんが近づいて来ます。
「こんにちは、ホルンさん」
「やあ、トキン君。こんにちは。今日は依頼品が無くて申し訳ない。けどこのお礼は必ずさせてもらうからね」
と、白銀色に輝く鉢巻を親指で示します。
僕はにっこり頷きます。
手を振って別れます。
ホルンさんは仲間達と合流し街へ消えていきます。
その後もDランクパーティー『トライアングル』さんやCランクパーティー『やまびこ』さん達が帰って来ますが、僕に手を振って街へ向かって行きます。
ふむぅ〜ん。今日は鑑定依頼品が無いのでしょうか。
そういえば最近調子を戻していたはずの『たぬきの皮』さん達も今日はダメだと言ってました。
しばらく人通りが途絶えます。
静かな時間が過ぎます。
本を読んで過ごします。
西門を大きな荷馬車がくぐります。
顔を青くした商人さんが詰所に駆け寄ります。
バーン門番長さんがスッと姿を見せます。
「魔物だっ、魔物がダンジョンから溢れてる。街に向かって来るぞっ」




