第三十九話
ソフィア・トツカーナ伯爵令嬢との婚約が内定します。
これから色々な手続きに入るそうです。
まずは今夜、婚約内定パーティーを内々で開催するそうです。
五歳になってからの環境の変化が激しいです。
黒の冒険者さん風に言えば「これも定め、それは天命」なのだと思います。
今日あたり来てくれそうな予感がします。
でも鑑定屋さんは急遽お休みです。
これも定めです。
僕達は一度、小さなお家に帰って来ます。
家ではみんなからお祝いの言葉をかけられます。
あまり実感はないけどやっぱり嬉しいです。
そういえば、ソフィからの手紙で中断した素材整理の片付けをしていませんでした。
手紙をもらって喜んでいたのがついさっきです。
今はもう婚約者です。
びっくりです。
作業部屋に行き簡単に片付けして戻ります。
おめかしして伯爵邸に来ています。
立食式の婚約内定パーティーでは、両家の主だった者の紹介がありました。
こちらは、母さま、僕、筆頭執事のジーヤ、メイド長のサーラ、馬丁長のニンジーノの紹介をします。
トツカーナ家は、ブランド伯爵、ヴィットーリア伯爵夫人、ソフィ、執事長のジュゼッペさん、メイド長のニコーレさん、ソフィお付きのメイドのバーヤさんが紹介されます。
祝いの場です。
皆にこやかに会話と食事を楽しみます。
「これからは私達の息子でもある。親しみを込めてトキン君と呼ばせてもらうよ」
「私達のこともお義父さん、お義母さんと呼んでね。トキン君」
「はい、これからよろしくお願いします。お義父さま、お義母さま」
ブランド伯爵とヴィットーリア伯爵夫人がニコニコしています。
僕もにっこりです。
「ソフィアさんも私のことは、お義母さんと呼んでね。どうしてもというなら、お義姉さんでもいいわよ。ふふふ」
「はい、わかりました。アリアンナお義姉さま。フフッ」
「いやいや何いってるの、母さま。ソフィも言わなくていいから」
にこやかな時間が過ぎます。
パーティー会場に楽器を手にした人達が入って来ます。
会場に弦楽器が奏でる軽快な曲が流れます。
トツカーナ伯爵夫妻が踊るようです。
トツカーナ家の家人達もペアを組み自由なステップで踊ります。
まさかのニンジーノとサーラが参戦です。
僕はソフィを見ます。
ソフィは皆が踊るのをニコニコしながら見ています。
ソフィをダンスに誘いたいと思います。
僕も一応ダンスはできます。
クマの人形相手にダンスは練習済みです。
ぶっつけ本番です。
最近気づきましたが、ジーヤが二年間教えてくれた「社会」の勉強は、どうも「貴族社会」の勉強だったようです。
僕はスッとソフィの前に立ちます。
「私と踊って頂けますか」
紳士然として、手を差し出し、こうべを垂れます。
「はい、喜んで。フフフッ」
ソフィの小さな手が、僕の小さな手におかれます。
そっと握って会場の真ん中へ進みます。
今日の主役である小さな二人の参戦に、会場から歓声があがります。
左手で指を絡ませ、右手をソフィの腰に添えます。
ソフィも僕の肩に手を添えます。
音楽に合わせリズムをとり体を揺らします。
視線で合図してソフィをリードします。
「はははっ」
「フフフッ」
楽しくて笑ってしまいます。
嬉しくて現実じゃないみたいです。
そんな時間が流れます。
「二人は心から笑っている様に見えるのぅ。ふぉふぉふぉ」
「えぇ、心を通い合わせてますわ。ふふふ」
ジーヤとバーヤさんが壁際でニコニコしています。
曲が終わり会場中から、僕とソフィに歓声と拍手が送られます。
「直感」スキルがここだ、このビッグウェーブに乗れと告げます。
僕はソフィの前で片膝をつきます。
ソフィはキョトンとしています。
周囲も静かに見守ります。
僕はポケットに忍ばせていた首飾りを見せます。
「ソフィ、君との婚約の記念に贈り物を用意したんだ。受け取ってくれるかな」
「本当、嬉しいわ。トキン」
「ソフィの澄んだ瞳と同じ、青サファイアの首飾りなんだ。僕がつけてもいいかな」
「ええ、トキンにつけてもらいたいわ」
僕はにっこりしながら、ソフィの細い首にサファイアの首飾りをつけます。
ソフィの胸元に蒼色の首飾りが光ります。
【癒青の首飾り】
魔力消費−10%の逸品です。
ソフィの横髪にはイチョウの葉をデザインした金色の髪飾りも光ります。
「ありがとう、トキン」
ソフィが最高の笑顔を見せてくれます。
静かに見守っていた会場が今日一番の熱気に包まれ、僕達を祝福してくれます。




