第二十四話
昨夜、公爵家での夕食会を終え、宿に帰った僕達三人は、翌日、また公爵家へと来ています。
「さあ、トキン。見せてくれるかな」
執務室のテーブルの上に、三つのアイテムが並びます。
いずれも幸運+1の効果を持つ【古代の逸品】です。
【青鷲の羽根ペン】
【マホガニーの筆記箱】
【永遠イカの墨壺】
僕は、【マホガニーの筆記箱】に【青鷲の羽根ペン】を入れ、蓋をします。
【マホガニーの筆記箱】が僅かに発光します。
「おお、聞いていた通り、発光現象が起きたね。トキン、続けてもらえるかな」
レオナルドさまの言葉に、僕はにっこり頷いて続けます。
【マホガニーの筆記箱】の蓋をあけ、【永遠イカの墨壺】をしまいます。
ぴったり収まります。また蓋をします。
【マホガニーの筆記箱】が先程より僅かに強さを増して発光します。
「鑑定」
鑑定結果
【【幸運の筆記用具 共鳴】】
【マホガニーの筆記箱】
【青鷲の羽根ペン】
【永遠イカの墨壺】
幸運+9
僕は鑑定結果を羊皮紙に書き写し、レオナルドさまに渡します。
「ありがとう、トキン」
レオナルドさまは真剣な表情のまま、羊皮紙をしばらく眺め、母さまに手渡します。
母さまとジーヤが、羊皮紙を静かに見つめます。
皆、レオナルドさまの言葉を待ちます。
「希少な鑑定スキルを得て、リペアという唯一の固有スキルを併せ持ち、アイテムの力を取り戻す。この事実だけで、王国の国力を左右しうる重要人物となるな、アニー」
「そうなりますわ、お兄様」
「しかし、話は、それで終わらず【古代の逸品】の効果上昇という新たな発見をしたと。この功績だけでも、伯爵級の叙爵もあり得る、と思わないか、ジーヤ」
「その通りですのぅ」
「しかし筆記用具箱にペンやインクを収めるのは、極々当然の行為。それが建国以来、千年もの間、なし得なかったのは何故か。アニー」
「それは幸運のアイテムを揃えることが、如何に難しいかを千年という時が物語っていますわ、お兄様」
「その通りだ、アニー。しかしトキンだけは違う。幸運のアイテムを見つけ、修復し、更に効果を高めるすべを知る。まったく、何という事か」
「改めてそう聞くと、何とも規格外な力じゃのぅ」
ジーヤが心の声を漏らす様につぶやきます。
レオナルドさまが、鑑定結果をメモした羊皮紙を、また手にとります。
しばらく見つめたのち、魔道具で小さな炎を出します。
火のついた羊皮紙を、ガラスの灰皿に置きます。
執務室に匂いが周り、静寂が包み込みます。
羊皮紙が燃え尽きるのを皆、静かに見届けます。
レオナルドさまが、意を決した様に勢いよく立ち上がります。
「アリアンナ」
「はい、お兄様」
母さまも、立ち上がります。
「レオナルド・ヴェネートの名において、本日より其方の、ヴェネート家復帰を正式に認める。これよりアリアンナ・ヴェネートを名乗ることを許す」
「賜りました」
と母さまは笑顔で、カーテシーをとります。
「トロヴァーレ」
これは僕のことだな、と思い元気にお返事して立ち上がります。
「はいっ」
「レオナルド・ヴェネートの名において、本日より其方を、ヴェネート家の継承権を持つ養子とする。これよりトロヴァーレ・ヴェネートを名乗ることを許す」
「賜りました」
僕はにっこりでぺこりします。
「ジーヤ」
「ははっ」
ジーヤがゆっくり立ち上がります。
「其方にはトツカーナ伯爵領シェーナ街にある、ヴェネート家別邸の筆頭執事を頼みたい」
「謹んでお受け致します」
ジーヤも笑顔で礼をとります。
その後、簡単な取決めがされた様です。
やっと一息つきます。
レオナルドさまが、ニコリの笑顔で聞きます。
「トキン、待たせてしまったお詫びに選ばせてあげよう。このままティータイムにするか、公爵家自慢の宝物庫を私と観に行くか。どちらがいいかな」
僕はにっこりで宝物庫を選びます。
トキンのメモ
鑑定 ランク2 (73/200)
リペア ランク2 (195/1000)
幸運コレクション (16/100)
アイテム数 10個
7個+(3個×3倍)=幸運+16




