緋(あか)の貴公子 蒼(あお)の騎士 9
ブクマありがとうございます
少しでもお楽しみ頂けるなら幸いです
アウローラの私室には今現在怨嗟の声に満ちている。
「酷いです。お嬢さま~」
「うぅっ・・・・・・お兄ちゃんを捨てるんだね」
「アウローラ・・・・・・お姉ちゃん。僕以外の男とおどるの?」
「婚約者である僕以外と踊るなんて浮気かっ!?」
ある者はは片膝立ちになりながらアウラのドレスの裾を掴み、またある者は自嘲に満ちた笑みを浮かべ俯き、別の者はクッションを抱えながらあざといまでの可愛さアピールをしている。
王子のストレートな物言いの方がいっそ好感が持てるから不思議だ。
「・・・・・・」
鏡に映る自分の姿は前世で見たチベットスナギツネの顔をしていた。
そもそもこんな状況になったのは先日、ヒイロからの誘いを受け彼が帰った後、母にダンスパーティーの件を話し了解を貰った後、母はすぐにドレスの新調をすべく仕立屋を手配した。
すぐにやって来た仕立屋と母を交えドレスの打合せをした。
あまりにも製作までの期間が短いので既製品でも・・・・・・とこちらが言えば、仕立屋からの猛反発を受けデザインから考える事になった。
日数が少ないので無理はしないようにと言い添えれば、「お嬢さまの為なら2、3日寝ないで作れば問題ありません」と返ってきた。
それ大丈夫じゃないやつだ。
そう思ったが仕立屋が張り切っているので心の中で秘めておくことにした。
数日後、出来上がったドレスを持ってきた仕立屋と衣装合わせをしていた所に兄シリウスがやって来た事から冒頭の出来事は端を発する。
「やあ、アウローラ! お兄ちゃんだよ」
ノックもせずに部屋に入ってきたシリウス兄さま。
外での態度と家の中での態度が違いすぎるのはいつもの事。
でもね、兄さまノックはしよう。
扉を開くなり目を見開いた兄さまは私に近寄り褒めちぎる。
「可愛いよ! アウラ。お兄ちゃんが何も言わなくてもわかってくれるなんて僕たちやっぱり赤い糸で繋がってるんだね」
「そうですね。家族としての深い絆で繋がってますねー」
兄は嬉しそうに私の新調したドレス姿を眺め、「でもね」と切り出した。
「そのドレスの色は今回はちょっと合わないかな~」
私が着ているのは白地に金糸で細かい刺繍を施したドレス。遠目で見れば金のドレスを着ているように見える中々に凝った代物だ。
髪を纏めている飾りは金と紅玉で作られた花の形をした髪飾り。首飾りと耳飾りも揃いの物だ。
少し前人気部屋を出ていった母からお墨付きを貰ったので特に問題はないはずだ。
不思議に思い兄に問う。
「何がです?」
「え、だって学院でのダンスパーティーで僕と踊る為に用意したんじゃないの?」
「違いますが」
ええ~、と言いながらも兄は「言ってなかったししょうがないか」と自己完結している。
「あのね。今度、学院でダンスパーティーをするんだ。それで学外の人間もダンスパーティーに参加しても良いことになってるから、お兄ちゃんと行こう」
学生の間だけの事だから婚約者がいても別のパートナーを選んで踊っても構わないとはなってるけれど、気にする者もあるとかで学外に婚約者がいる生徒のため等もあり、そのような処置になったそうだ。
兄からの誘いは嬉しいが、今回ばかりはヒイロとの約束もあるので受けるわけにはいかない。
「お誘いは嬉しいのですが今回は別の方とお約束がありますので」
相手をぼかしやんわりと断りを入れたものの、セバスチャンの密告により事は発覚。
騒ぎ立てた兄が弟を呼び、弟は何故か王子を呼んだ。
そして冒頭に繋がる。
私はドレスを掴むセバスチャンの手をこじ開け、メイド長に頼み兄たちを部屋から出すと仕立屋と最後の調整をした。
脱いだドレスは私の部屋に置いておく兄たちによってなくなる可能性があるので母に預かってもらう。
また、ヒイロには今回の一件について手紙で報告しておく事にした。
返ってきた返事が【頑張る】の一言だけで酷く文字が乱れていたので何があったのかは察した。
兄たちはきっとダンスパーティーでも色々とやらかしてくれるに違いない。
そんな不安に満ちたダンスパーティーは3日後だ。
お分かりの方はいるかと思いますが、アウラのドレスはヒイロの目と髪に色を合わせてます
お兄ちゃんの色ではない




