「スカウト」と書いて「旅立ち」
えっ?俺がAV男優に?
帰宅中のバス中で、俺、千乃 工口は幸運にも女子高生とそのば限りのお知り合いになってしまった。
俺は彼女との快楽に酔いしれている最中に、止むを得ない事情が起こってしまい、バスを降りることことを余儀なくされた。
これで、彼女とのお別れと思っていたのだったが、なんと、俺の落とした定期券を拾い追いかけて来たのであった。
彼女も俺の後にバスを降りていたのだった。
俺は定期券を受け取ると、それをきっかけに何とかお知り合いに、と思ったのだったが、そんな場数に恵まれていない俺は、そのチャンスをいとも簡単に逃してしまった。
俺は帰宅後自室にて、彼女とのバス中での色々な想い出を肴に、事を起こしていた。
当然のことである。
しかし、何と俺の行為を隣の屋根上から、覗く奴がいたのだ。
俺は不覚にも見られてしまったのである。
そいつは俺の方を眺めながら、逆行を浴びてミニスカートのシルエットを揺らしている。
ところが、事件はそれでは治まらなかった。
なんと、そいつは、俺の部屋目掛けて飛び降りたのである。
なんだ~!
あぶないっ!
窓にぶつかるー!
何で、そんな時にアヒル口なんだ!!
☆★ 第 6 話 ☆★
*「スカウト」と書いて*
☆★♀「旅立ち」♂☆★
俺は顔から血の気を引くのを感じ、思わず目を閉じていた。
多分、真っ青な顔で大きな口を開けていたことだろう。
俺の頭はこれから起こる惨事からの回避方法を、大脳の自動検索機能で探っていた。
だが、
おやっ?
想像していた音が、いつまで経っても耳に届いて来ないのだ。
何が起こったのか?
俺の脳内は疑問で膨張してしていく。
それを喰いとめるには、目を開け事実を認識するしかない。
怖い!
怖いが俺は、前へ進まなければならない。
俺は恐る恐る目を開けた。
すると?
「どぉぉぉーー!!!」
俺は、仰け反るところを、座椅子の背もたれに喰い留められた。
距離にして2メートル弱。窓を背にして、ミニスカート姿のもじもじした少女が一人立っているのだ。
逆光でもこれだけ近ければ、俺の視覚機能でもはっきりと捉える事が出来る。
今、俺の目の前のミニスカートは、シルエットの時のスカート丈と、寸分の狂いもなく一致している。
「う、う、うそだろ~」
俺は慌てて窓を確認する為に視線を移すが、決して窓は開いてはいない。それどころか鍵まで掛かっている。
ガラスが外れているのか?
俺の部屋の窓は汚れている。一目でわかる。
ドアの開いた音もしなかった。そんなに早くドアから入って来れるはずもない。
認めるしかなさそうだ、目の前の現実を!
どう言う物理現象が起きたのか、彼女は俺の部屋の窓をすり抜けたのだ。
それが現実だ!
現実を受け入れた俺に、遅ればせながら記憶の抽出と言う機能が働いた。
目の前の彼女と結びつく記憶が、なんと俺に存在しているのだ。それも、極最近のことだ。
んっ、あれ?
何処かで見たことのある顔だ・・・。
耳が隠れる程度の黒髪で、少し厚めのショートヘアー。
大きな黒い瞳に、今は真っ赤に染めているが白い透きとおる様な肌、全体的には細面にも関らず、少しだけふっくらとした頬。
漂う香りは、某メーカーのフィットレスシャンプーに違いない。
清楚な地味目の濃紺の制服、アンバランスなマイクロチックに仕立て上げられたミニスカート
ブラウスの胸元のボタンは、火照った体を冷やすかの様に、三つ開いている。
さっきは二つだったはずだ。
間違いない。
円らな瞳で小首を傾げる姿が愛らしい・・・まほまほ・・・だ。
たった今使わせて頂いたまほまほが目の前におられる。
「ま、まほまほ!」
俺は、叫んでいた。
いったい、一体、どうなってんだ?
俺は目を疑ったが同時に間に合ったと思った。本人の目の前であればどれだけの快楽が・・・!
いや、何て後ろ向きな。本人と直接・・・。
ちょっと、待て。いかん、いかん。
今はそこではない。
何者かも分らないのに、簡単に催すな。
まほまほは、そんな浅ましい俺に向って口を開いた。
「そ、そんな言葉叫んではいけないれす。私はそんな、お下劣な名前ではないれす!」
言葉としては怒っていると取れるが、口調は愛らしい。
2m先のまほまほ、いや、彼女は俺に向って口を膨らませている。
怒ってるのか?
顔は既に真っ赤なので、口の形で判断するしかない。
多分怒っている!
俺は何で怒っているの変わらなかったが、女性には取り敢えず誤った方が無難だ。
考えるのは、それからだ。
「ご、ごめんなさい」
俺は素直に謝った。
「何でそんな言葉を簡単に口にするかなぁ~」
彼女は両手を腰にあて、俺を睨みるつける。
と言われても、バスの中で口走っていたのは他ならぬ目の前のまほま・・、いや彼女である。
「わかった、わかったから」
と宥めるのも間違っている気もする。不法侵入されているのは俺である。が、既に俺が全身で歓迎しているのは間違いない。
「まあ、今回は多めに見ることにするれす。もう、全く・・・」
彼女がぶつぶつ言っているので、俺は彼女に対して下手に出た。
「あの~、俺に何か、用があるのではないかと・・・?」
「そう、そうでしたのれす。
私の名前は、”ララカー・ミラミ・アポストロ ”と言います。”ラミア”と呼ぶれす。千乃工口、あなたをスカウトに来ましたれす」
彼女は、初めて凛々しい態度を取り、右腕を真直ぐに伸ばすと、俺に向って指さした。
目的を達したのか、安心した表情に変わった彼女の顔は、次第に持ち前の白い肌を取り戻していく。
「ちょっと、待ってくれ、スカウトってなんのことだ、?」
「私は、あなたを選びました。きっと、AV界で大成功を収めます・・・。ん~、多分、きっと・・・」
出だしは意外と威勢が良かったが、次第にトーンが下がっていく。
自信満々に話すならまだ説得力もあるのだが、可愛いだけに・・・。だが、そんな弱気に言われてはお人好しでも乗りはしない。
「AV界って、俺をAV男優にでもしたいのか?」
「は、はいれす、いや、AV男優と言っても、この世界の・・・」
また、もじもじとし出した。
俺には、語尾がはっきりと聞き取れなかった。
「あいにくだが、AV男優になれと言われても、俺はまだ高校生だ。大学だって受験するし」
それに、バリバリの日本人顔で、名前が何んとか?って言う横文字なんて、胡散臭さ過ぎる。それに、何で、ラミア何だ!
名前との結びつきが全く分らん。可愛いが・・・。
もしかすると、外で怖いにいちゃんが待っているのかもしれない。
俺は真剣な顔で断った。
「だめ、・・・れ、す、か」
彼女は座っている俺に対して、泣きそうな顔で上目使いをして来た。
工口よ、ここで負けるな。女の泣き顔を信じるな。
ほら、涙が出ているか?
出ているかもしれない気がする。だが、ここは帰ってもらうのが無難と言うものだ。惜しい。
「惜しいが、いや、残念だが・・・他をあたって・・・」
そう言い放った言葉を途中で遮る様に、彼女は俺に飛び掛かって来た。そして、覆いかぶさって来ると、俺の言葉を唇で止めた。
俺の決意の牙城が、一気にくずれ落ちる。
唇って柔らかいんだ・・・。
彼女の重みが心地よい。全身が酔いしれていく。
俺は柔らかい体に溺れる様に、無意識に彼女の腰に手を回していた。
時間よ、一生止まれ!
その時、俺は彼女の可愛さに気を取られ、彼女が窓ガラスをすり抜けて来た事など、すっかり忘れていた。
そうだ、舌を入れることさえ、すっかり忘れていた。
<つづく>