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1億総活躍社会のディストピア  作者: シャム猫ジャム
ジパング
19/87

サバイバルゲーム

健の家に寄ってから帰宅しようと思う。

百合さんはもう少し哲さんの様子を見るらしい。


「そういや、お前は夏休み何してたんだよ」

「行く前に言ったじゃん。お婆ちゃん家に行くって」

「じゃなくって、何したのか、っつーことだよ」

「あー。自然の中で遊んでたよ?

海入ったり、野菜採ったり、畑手伝ったり」

「仄々(ほのぼの)してんなー」

「健十郎は逆にゲロったんでしょ?」

「ゲロってねーから。それ誰に聞いたんだよ」

「百合さんだよ。ジェットコースター乗っただけで気分悪くなってたって」

「ゲロったなんて一言も言ってねーじゃねーか」

「てへぺろ!じゃー他には何もなかったの?」

「あとは氷像・・・」

「え、なんて?」

「恐竜博物館に行ったな。婆ちゃんがヤバかった」

「それより恐竜博物館って何あるの?」

「普っ通に恐竜の化石が展示されてたな。

あと、復元された実物大の模型とか、歴史的資料とかもな。

地層や鉱石といった、化石というより考古学や発掘に関係しそうなものが多かったな」

「へー、面白そー」

「飛鳥はそうかもな。俺は退屈だった。邪魔者もいたしな」

「邪魔者?」

寛九郎(かんくろう)だよ。

電子生物のうんちみたいにくっついて来やがってな・・・」

「あー。あの陰湿そうな人?」

「そうそう。暗くてジメジメしてるしな。

でな?婆ちゃんがサバイバルでとんでもねー強さでさ」

と、健十郎が興奮気味に話す。


-------------


終皇79年7月24日 雨

室内は快適だったらしい。


ウェルテル恐竜博物館。

ここは恐竜を飾ってあるだけでなく、実物大の模型も作るのだが、動きも再現しようと試みる施設でもある。

忠実に再現したため、捕食行為も再現されている。

当初はロボットとして開発する方針だったが、DNAの複製で恐竜を本当に生み出したそうだ。

恐竜は身体的能力が凄まじいので、制御プログラムを脳に埋め込んであるらしい。

これは人間に適用するための、2段階前のテストを兼ねているそうだ。


【只今より、サバイバルを開催いたします。

参加希望のお客様は、地下までお越しください】


サバイバルゲームは、地下10階から地上20階まであるウェルテル恐竜博物館で、地下1階~7階を占めるスペースで行われる。

地上1階では、地下の様子が俯瞰(ふかん)でき、モニターに依って参加者の動向を確認できる。因みに地上1階には飲食店もあるので、食べながら観戦できるようだ。

婆ちゃんもこれに参加する。


「お前は参加するのか?」

「当たり前だろ?ゲーマーなら絶対に行く」

「あーはいはい」


参加者は、恐竜、一般、満了者(ターミナス)である。

一般と満了者(ターミナス)にはペイント弾が装填されたライフルやピストル、リアル感を出すための見た目は軍用の服、高性能ヘルメットが支給される。

サバイバル中はヘルメットの着脱しないように警告されている。

正確には、着脱した影響に対して責任は持たないという意味で警告されているに過ぎない。

恐竜には制御プログラムが入っているので、一般人はヘルメットさえ被っていれば、噛みつかれたとしても怪我すらしない安全な試合となる。

満了者(ターミナス)は逆に、ヘルメットを外すか、衝撃が加わると爆発するので外す時点で終わりである。

ヘルメットにはレーダーや照準補正機能が付いているので外すメリットが全く無い。


【それでは、本日1回めのサバイバルを開始します】

婆ちゃんはド真ん中からスタートのようだ。

【本日の挑戦者は、ティラノサウルスのティルノ君とスーパーサウルスのアパト君です!

皆様、蹴散らされないように注意してくださいね!

因みに、一般参加者は120名、満了者(ターミナス)参加者は20名となっております】


-------------


婆ちゃんには負けられないな。

まず狙うは・・・恐竜だな。

2匹しか居ないから、一番のお楽しみをとられるのは(しゃく)だ。

頭にペイント当てさえすれば退場にできるし、無理ゲーではない。

ただ、デカすぎて照準が定まるかどうかが大きいか。

とりあえずやってみるか。


「ティルノの位置情報が欲しい」

【マーキングできていない未確認対象です。

位置情報を開示するためには権利を1つ消費しますが、宜しいでしょうか?】

「問題ない」

【現在地から北東に約350mです。

これより、自動的に位置情報が表示されるようになります。

更新頻度は1分毎(ごと)になります】


少し遠いか。

途中で遭遇した奴も倒しておくべきか。

「ステルスモードを起動」

【ステルスモードを起動しました。

走ると解除されるので、ご注意ください】


少し歩くと人影を発見した。

木が邪魔でヘッドショットが狙えないな。

移動するか。

そう思って動いた瞬間、木にペイント弾があたった。

【弾道の算出により、東からの狙撃と断定しました。

発砲されたため、対象がレーダーに映ります。

ロックオンの自動検出を起動しますか?】

「え、そんな機能があるの?」

尋ねながらも隠れることにした。

【権利消費のオプションプログラムになります】

「権利の一般的な活用方法は?」

【権利は3つ有ります。

人気があるのは自動蘇生、弾道予測、ホーミング支援、緊急離脱の4つです。

自動蘇生は1回限定で退場判定を覆すことが出来ます】

「弾道予測は?」

【自分が狙われていない場合の弾道も全て可視化されます。

但し、ロックオンの自動検出よりも判定が遅いため、防衛には不向きです】

「なるほどなー。じゃあ連射や威力強化はある?」

【ございます。連射は弾の消費速度が上がるだけですが、威力増幅は権利を消費します】

「おっけー。ホーミング支援と威力強化に権利を使用で」

【権利を消費し、ホーミング支援と威力増幅を適用します。

威力増幅により、飛距離が3倍になります。

木を貫通させることも可能となります】


発泡してきたやつは逃げたようだ。

よし、試し撃ちだ。

木の向こうの奴にペイント弾だ。

ペイントは木に付いたが、判定は1キルだった。

残念ながらまだこの程度までしか再現できてないらしい。


次はホーミングの練習だな。

北東に更に進むと狙撃しようとしている人を発見した。

チャンスなので、ロックオンした後に銃を逸らして発射させた。

気持ち良い程滑らかなカーブで直撃した。

これでバッチリだな。


【これより5分間、全ての参加者がレーダーに映ります】


なんということだ。

ティルノの周囲に沢山のマーカーが点灯している。

そこにアパトが向かっていると思われる。

カオスだな・・・。


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