パープルな蝶
「ナッツ、あなたそれでも小悪魔なの!」
怒られました。
魔界に帰って傷心をかかえたナッツは、尊敬するアゲハお姉さまに相談に行きました。
あんまり苦しくて。
久しぶりに会ったアゲハお姉さまは、相変わらずの超絶美形。
出るとこ出て、引っ込むとこ引っ込んだ悩殺ボディ、カラスの濡れ羽色の巻き髪。憂いを秘めた長いまつげの奥の紅玉の瞳。
ああ、うらやましい。
紫色の蝶をあしらったショールを羽織って木陰で休むアゲハお姉さまの横には、お姉さまに心酔するしもべたちがわらわら控えている。
人も魔物も悪魔も。
そんなアゲハお姉さまに、ナッツは泣きついた。
こんなこと相談できるの、アゲハお姉さましかいない。
ルークとの3か月をあれもこれも全部話した。
私は泣いていて、みっともなかった。
アゲハお姉さまは全部聞いてくれた。
そして、怒った。
「ナッツ。自信を持ちなさい」
自信。
ありました。
私、可愛いし。
好き好き言ってくれる人も魔物も悪魔もいるし。
でもね、ルークには通用しなかった。
「人間の魔術師には気をつけなさいと言ったでしょう。あいつらは、底意地悪い」
アゲハお姉さま、若干、目が怖い。
何か、人間の魔術師に恨みでも?
「私も一度使役され、それはそれは大変だった。ルークって、夜の民の末裔っつった?また、あいつらか」
おう。過去に因縁が?
アゲハお姉さまがガシッとナッツの肩をつかみましたよ。
「ナッツ。あんた、負けて終わる気?」
え?
何だ、この方向性。
「私の分も頑張んなさい。あんたは魔王の13番目の末娘。ポテンシャルなら誰にも負けないはずよ」
アゲハお姉さまは長子。
アゲハお姉さまのほうがずっと能力は高いんじゃ。
そんな私の気持ちを読んだのか、アゲハお姉さまがニッと笑って言った。
「私が行きましょうか?たぶらかされて泣いて終わるなんて屈辱、悪魔にあってはならないことよ。落としてなんぼでしょ」
「私が行きます!」
ナッツ、反射的に口が動いた。
アゲハお姉さまは色っぽく笑って言った。
「傷ついたんでしょ?私が行くわよ。最近、暇だし。骨がある人間の男を落とすのも一興」
「お姉さまにピッタリなバンデュラっていう男がいます!」
さらば、バンデュラ。
せっかくやる気で山賊界に復帰したところ申し訳ない。
堕落してくれ。
ナッツ、事細かにバンデュラのことをアゲハお姉さまに吹きこんだ。
アゲハお姉さまは興味深くふむふむと聞いた。
「じゃあ、ルークにはあなたが行くのね?」
う。
どうしよう。
私のためらいを見て、アゲハお姉さまの目が光った。
「ナッツ、あなたそれでも小悪魔なの!」
うう。
「たらしこまれてどうする!たらしこみなさい!」
ごもっとも。
「あんた、ルークをどうしたいの!」
「はい!落としたいです!」
言っちゃった。
そう言えば、そんなもん。
落としたいの。
私に。
どこまでも、私だけに。
アゲハお姉さまが嫣然と微笑んだ。
「それができてこそ、(小)悪魔でしょう」
私の心は決まった。
「がんばれ!小悪魔ナッツ」
アゲハお姉さまのしもべの皆さま、応援ありがとうございます!




