7 ギャル、プリンセススライムとダチになる
ピクシーにみちびかれるようにしてやってきた泉の奥は、森の中でもひときわ静かだった。
水面は鏡のように穏やかで、風が吹くたびに薄く波紋が広がる。
「ついたヨ!」
「きたノ!」
リコとリンが自信満々に指差す。
私は腕を組んで、静かに観察した。
「……本当にここに喋るスライムがいるのか?」
スライムは珍しくもない魔物だ。だが、基本はただの粘液の塊。会話などできるはずがない。
――そのときだった。
泉の中央で、水面がぷるん、と不自然に揺れた。
「……?」
次の瞬間、水色――というよりほぼ透明のスライムが勢いよく飛び出した。
「こ、こんにちわなのです!」
そこには淡い水色の髪をしたかわいらしい少女。髪も肌も透き通っている。
少女はシャナの顔をじっと見つめる。
「……そ、それ」
プリュリィの目が大きくなる。
「それ何ですか!?」
「え?」
「この、目の上の……ふさふさ!」
「つけま?」
「つけま!!!」
感動したように震えるスライム姫。
「顔を飾る文化……!すごい……!」
まさか、つけまに感動する者がいるとは。
「盛れるギャルメイクだよ!」
「盛れる…ギャルメイク…?!」
「ってか、そのことでお願いがあって~」
「お願い?」
「粘液っていうの?わけてほしいんだよね」
スライム姫はあわあわとしながら、えんえんと半泣きで話し始めた。
「・・・でもあてぃしはだせないのです」
「スライムなのに粘液が出せないとかあるのか?」
「あぃしはプリンセススライムなのに!出しても出しても透明なんです~!」
「しかも粘り度も低くて毒もなくて~!」
少女の話をまとめると王族は普通、濃い青色で粘度の高い毒液が出せるらしい。
だが、少女の粘液はほぼ透明で、さらさらで毒もない。
「それって最高じゃん!」
シャナはあっさり言った。
「めっちゃコスメ向きだし!何色でもできるじゃん!」
「なるほど。色を混ぜればちょうどアイライナーになるということか。」
「それなー!」
「黒色なら煤トカゲの灰がいいヨ!」
「捕まえられるとこ、知ってるノ」
「・・・ふぇ?」
「あんたの粘液は最高ってこと!」
少女はしばらく固まったあと、少しずつ輝き始めた。
「じゃ、じゃあ……!あてぃしの粘液、使っていいのです!」
プルプルンっ。
透明なのに光を反射してキラキラ輝く小さなスライムがうみだされた。
「はわわ!またキラキラさせちゃったのです」
涙ぐむスライム姫にシャナは満面の笑み。
「それラメじゃん!めっちゃ最高!」
「ラ、ラメ?」
「グリッターも出せるとかマジ神!」
「あ、あてぃしが役に立てるなら、いくらでも出すのです!」
さらに輝きをました小さなスライムのようなものがシャナの足元ではねる。
「君はそれでいいのか?」
スライムのことはしらないが王族の矜持とかあるのでは・・・?
「はい!いくらでも出すのです!いつか王国に戻って、役立たずじゃないって証明したいのです!」
シャナが笑顔で手を差し伸べる。
「じゃあ一緒に証明しよ!あーし達と魔界ギャルブランド作ろ!」
少女の目がキラッと光った。
「・・・あてぃし、やるのです!」
「ね、あんた名前は?」
「な、名前?プリュリィなのです」
「プリュリィ・・・なんか噛みそう。プルリンって呼んでいい?」
「あてぃしはプルリン・・・!」
プリュリィ…もといプルリンの頬が桃色に染まる。
ぷるん、ぷるぷるぷるりんっ――
小さくそしてキッラキラなスライムたちが泉の周りで跳ねる。
シャナは笑った。
「ラメスライム、まじ最高!」
こうして、私たちは大量のアイライナー素材を手に入れたのだった。




