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【オムニバス掌説集】WEIRD DISHESー料理はかわいいお皿にのせてー  作者: 夏の月 すいか


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ためいき -完結編ー

 水道屋は道具を取り出して元栓やらなんやらイロイロいじり出した。

 「うち以外にもこういった事はあるんですか?」

 「……そうですね。最近は多いですよ。でもお客様のところはタメ息なだけマシですよ」

 知らなかった。最近は多いのか。しかもタメ息はマシなのか。

 「ちなみに他の家だと例えばどんな…?」

 「私が対応したのだと、女性のヒステリックな金切り声が出るとか……中年男性の歯軋(はぎし)りとか…」

 それは嫌だな。確かにそれに比べたらうちはまだマシなようだ。

 「あとは…当たりだと風鈴の音とかししおどしの音とかですかね。北極の流氷が流れっる音っていうのもありましたよ。なんか風流ですよね」

 そんなパターンもあるのか…?

 「なるほど。こうなってしまったのも地球温暖化の所為なんでしょうね」

 とりあえず適当な事を言ってみた。

 「いえ、違いますよー」

 水道屋は見た事ない工具を使いながら中腰で作業を続けている。

 「これの原因はですねお客様、ストレス社会の所為なんですよ。ストレスは何でも原因になるんですよ」

 うむむ。一理(いちり)ある。

 ストレスは胃潰瘍(いかいよう)にもなるし髪も薄くなる。手足の痺(しび)れも引き起こすし、顎(あご)が開(ひら)かなくなることだってあるのだ。

 「各家庭のストレスが流されて水道管が詰まってしまうんです。それが…入り組んで入り組んで、回り廻って回り廻って、巡り巡って巡り巡って…シャワーや水道から流れ出てくるんです」

 「ほほう。そうでしたか」



 「………よし……これでOK!…お待たせ致しました」

 水道屋は得意気に元栓を工具でカカンッと叩いた。

 ちょうどきっかり一時間だった。水道屋が請求書を書き始めた。

 「直って良かったです。それにしても、もし北極の氷が流れる音が自宅で聴けたら、それはそれで贅沢(ぜいたく)な気がしますね。どうせなら今度はそういうのがいいなぁ」

 「贅沢ですけどねぇ……水の音だけ聴こえて来ても水が出ないのは不便ですから。のん気な事言ってられませんよ。ま…お客様はこれで当分詰まる心配はないと思いますけど」

 「ありがとうございます。……それじゃあこの現象は世界中で起こってるんですね?知らなかったなぁ」

 「そうですよ世界中ですよ。今や世界なんて近所です。リアルタイムで繋がってますから。なんてったって水道管のこの詰まりもAIの仕業(しわざ)ですからね」

 ――はて?ストレス社会の所為ではなかったか?

 「お客様、シャワーが直ったのを確認して頂いてもよろしいでしょうか」

 


 シャーーーーーーーー



 お湯が出た。無事に直った。



 「それでは今回の請求がこちらになります」


 「…これ…ですか…?」


 「はい、こちらになります。当日出張なので、この場で現金でお支払いいただくことになります」



 35万円の請求書を持って私と水道屋はコンビニのATMに行った。



 ………

 ………………

 ……………………………



 一人で自宅に戻った私はシャワーを浴びた。

 シャワーからはお湯が出て、排水口に流れて行った。

 私のタメ息は巡り巡ってどこかの家のシャワーから出るのだろうか。



 

 


 

 

 

 


 

 


 


 

 

 

 

 




 

 


 

 

 

 


 

 


 


 

 

 

 

 



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