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【オムニバス掌説集】WEIRD DISHESー料理はかわいいお皿にのせてー  作者: 夏の月 すいか


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わたしの先祖はふたくち女

 ――うちの先祖には、二口女(ふたくちおんな)がいるんだぞ。


 男は幼い頃から何度もそう父に聞かされて育ってきた。


 二口女というのは、後頭部にも口がある女の妖怪である。

 長い髪を手の様に操り、後頭部の口で物を食べている挿絵(さしえ)が有名だ。

 

 男に二口女の子孫だという自覚はなかった。

 父の戯言(たわごと)だと聞き流していたが、この日、男はそれを認めざるを得なかった。

 


 朝目覚めると、男の後頭部に口があった。



 男が違和感を覚えたのは朝食を食べ終わったときのことだった。

 いつものように食事をしても、腹が満足していない。何か物足りない気がする。

 その原因は、後頭部が食事を求めているからだと直感的に分かった。


 男は妻に、頭に口が出来たことを打ち明けた。

 「あらまあ。お義父(とう)さんが言ってたことは本当だったのね」

 「うん、それで悪いんだけどさ。頭の口にも何か食べさせてやってくれないか」

 妻は男の後ろに立って、頭の口に食事を与えた。



 ……会社の人には打ち明けるべきだろうか。普段は帽子かカツラを被らねばならないだろう。見つかってSNSで流されでもしたら問題だ。世間で大騒ぎになって、妻に迷惑がかかってしまう……。


 男は、これからのやっかいな生活を想像し、どうしたものだろうかと思案(しあん)していた。



 頭の口は、妻が与える食事を吸い込むように飲み込んでいった。


 男の妻は、丸いたくわんを指でつまみ、後頭部の口にスッスッと入れながら、ドラえもんの貯金箱に小銭を入れる自分の姿を思い浮かべて微笑んでいた。


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