27/55
27
一凛の肩が震える。
海理は抱き締めながら舌を絡ませる。
互いの吐息だけが耳に残り、溶けてなくなりそうな感覚。
慣れないキスで呼吸が出来ずに一凛が引き剥がした。
はぁはぁ、と荒くなった呼吸。
赤らめて苦しそうな表情を、海理は一凛に馬乗りの状態になって見ていた。
獲物を狙う狩人の様に。
刻一刻と二人の時間は過ぎていった。
暫くして、力尽きて倒れるように寝た一凛。
その呼吸は安定していて、顔色も良かった。
「……もういいですよ、先生。それともラウルと読んだ方が良かったか?」
「そうだね、ラウルで行こうか。それが素かい?」
「誰だって一面だけで生きてる訳じゃない。それにようやく出逢えた運命の人だ」
「……ただ見た目が好みだっただけでしょう。明日、決行します。良いですね?」
「分かった。それとなく誘導しつつあの場所へ行くわ」
「……これ以上は邪魔かな。もう行く」
「分かった。ああ、そうだ。アイツは叩くよ」
「鼻からそのつもりだ」