ウィル目線2
...一回削除してしまって書き直したら大した長さじゃなくなってましたが...どうかよろしくお願いします!
「ははっ、どれだけ驚くんだよ。」
「いや驚くだろそりゃあ!お前、別に金に困ってるとかではないんだろ?今までお前が特定の主人の元で働くとこなんて見たこともないぞ!?」
そんな必要なんてリアンにはなかったし、仕事内容に寄ってはいつも単独行動というわけではなくとも、彼は常に特定の誰かと組んだり仕えたりなど、したことはなかった筈だ。
「誰なんだそれは?......まぁ、言えないなら仕方がないが。」
本音では聞きたいのは山々なのだが、守秘義務等もあるだろうしな。
「あはは、ウィルってほんと良い奴だよね。」
「はあ?馬鹿にしてんだろお前。」
「してないって。......まあでも確かに、今のところこの仕事に関しては言えない事が多いけどね。......でもきっと、必ず話すときが来るよ。」
窓の外の月を見上げたリアンの横顔は、殆ど見えなかったんだが。まあなんとなく複雑そうだったので、俺はできる限り軽く返事をしておいた。
その、次の日のこと。
「......おい、飯だぞ。」
「まあ、御苦労なことですわね。」
そう言いながらも待っていましたとはばかりにこのお粥っぽい何かを受け取ってくるこの女からは、牢屋に入った頃の気迫が薄れている気がしないでもなかった。と、いうか大分痩せ細ったというか。こんなところにいれば仕方がないが、かなり顔色が悪いように思う。
ゆっくり味わうようにお粥を食べるクラウディア=オストカーレを眺めながら、俺は少し昨日リアンが去り際に言ったことを思い出していた。
ーーーそう言えば一番奥の牢屋にオストカーレ家のご令嬢が投獄されたんだって?
ーーー?ああ、そうだな。それがどうしたんだよ?
ーーーいーや?貴族嫌いのウィルの事だから、そりゃあこっぴどく苛めたりしそうだなってー
ーーーあ?俺は職務には忠実な方だ!......多分。
あいつはそっかーとか言って笑っていたが、あれって何かの牽制ではなかろうか。
今回の仕事に、こいつが関わっている、のだろうか......?
「......おい、クラウディア=オストカーレ。」
と、殆どなにも考えず口に出してしまい、後悔して慌てて取り繕う。
「?なんですの?」
「......いや。なんでもない。」
「そう?もしかして私の死刑執行の日でも決まったのかと思いましたわ。」
だとか突然こいつが言うので、俺は思わずランタンを取り落としてしまった。
「ち、ちょっと危ないじゃない!......え、まさか......?」
「い、いや違う!余りに平然と言うから驚いただけだ!......何なんだお前。」
俺の知ってる貴族ってこんなんだっけか......?
「知りませんわ!貴方何と比べて驚いてるのよ。」
「......いいや。何でも、ない。」
「貴方そればっかりね。」
あからさまに呆れた、という顔をしたクラウディア=オストカーレは、なるべく腹に溜まるようにか、その後も少しずつゆっくり食べて、あのお粥を平らげた。
「ふう。ごちそうさまでした。」
俺はもう淡々と椀を受け取り、またずいぶん奥にあるその牢を去った。
......俺は少し、おもってしまった。
あの貴族令嬢は、言われているほどの性悪女なのだろうか、と。
貴族は確かに嫌いだし、あいつもいけ好かないが、リアンの仕事に何らかの関わりがあるというなら、それは一体ーーー......いや、リアンが話してくれるまで、俺はこの件の詮索はしないと決めているわけだし、もうその必要性が出てこない限り俺は傍観者でいる。
俺は一人そう誓い、雑務へ戻った。
お付き合い下さりありがとうございました!!