愛に満たされた花
スマホを切った後に後悔が押し寄せる。授業中なのに1人で来てほしいとか、私の花を見て嫌われないかとか、ドロドロした感情が胸を焦がす。
もう一度水道で顔を洗ってからブランコに戻る。背後で近所のおばさんが会話をしながら歩いていくのが聞こえた。
『縁起の悪い花』
『あの娘のお母さんが死んだのもきっと―――』
昔言われた言葉を思い出して思わず耳を塞ぐ。昔言われた言葉がゾワゾワと耳に入り込んでくる気がした。
「流李」
「!」
ドキドキしながら長い、けど短い時間を待っていると、優しい野太い声が聞こえた。
「剛さん」
「流李…その花…」
「…」
私は息を吐いて決意をして、頭に咲く菊の花を3本千切った。
「!、何を…」
「剛さん…コレが私の気持ちです。どうぞ」
「えっ…」
自分では見えなかったから気付かなかったけど、赤とピンク色の菊が咲いていた。
でも、そんなことはもうどうでもいい。
私が知りたいのは、剛さんがこの花を見てどう思うかだけだった。
私は見届ける為に、上を向いて剛さんを見た。
「コレを…俺に?」
「…はい」
「…ありがとう、有り難く頂戴する」
そう言って剛さんが優しく微笑んで赤い菊を選んで、大きなその口の中に放り込んでしまった。
「ぅえええっ!?」
それには流石に予想外で思わず変な声を上げてしまった。吃驚している内に剛さんは大きく喉を鳴らして飲み込んでしまった。
「ん?どうした?」
「えっ何で食べたんですか!?」
「え?花人から赤い花を受け取ってそれを食べる事は、愛の告白なんだろ?」
「えっ」
「流李、俺は流李が好きだ…だからその告白を受け取る為に飲み込んだ」
「っ…」
剛さんの愛の行動に胸が熱くなって、涙が溢れた。さっきまで泣いてたのにまだまだ枯れる事がなかった。
「それに調べたよ、菊の花の花言葉」
「えっ…」
「栗原先生に言われてスマホで調べた…どれも美しい花言葉で、立派な国花じゃねぇか」
『良い流李、菊の花はね。愛に満ちた花言葉で溢れた素敵な花なのよ。お葬式で使われるのもその人が愛に包まれてあの世に行けますようにって使われてるの。だから菊の花の良さが分かる人がきっと現れるわ』
お母さんの言葉が脳裏に過ぎる。…お母さん、素敵な人が現れたよ。
「流李、これからはお母さんだけじゃなくて、俺にも菊の花を分けて欲しい。良いか?」
「…うん、剛さんなら良いよ。私も剛さんが大好き」
泣きながらの私の返答を聞いた剛さんは、私を抱き締めて背中を擦ってくれた。




