スマホ画面がベトベトしている時
最近、なんか頭に霧がかかったような気がする。熱はない。痛みもないが、なんか変な感じ。その上、寝られなくて、SNSを見ていた。
特にショート動画は沼だ。一度浸かったら、もうズルズルと見てしまう。
「あれ?」
気づくと、もう夜中の二時だ。二谷優杏は大学生だ。徹夜も時々しているぐらいだったが、どうも変。体調不良とはいえな感じなのに、スッキリしないというか。
次の日、なんとなく冴えない感じで大学へ。いつもと同じ授業だったのに、集中力が続かない。レジュメの文字もよく追えないし、教授の声がちゃんと聞こえない感じ。
昼休みになる頃はぐったりだ。寝不足のせいか、何なのか。
カフェテリアについても、どうも違和感は消えず、スマホでSNSをチェック。一度見てしまったら、案の定沼。昼ごはんもそっちのけでスクロールしまくっていた時。
「優杏、どうしたん?」
そこに友達の有木真美に声をかけられた。友達といってもそんな親しくもなく、時々みんなと飲みに行くメンバーの一人っていう感じだったが、なぜか心配そうな目線を向けてきた。
もしかして、ここ頭の中が霧にかかったような違和感が真美にはバレているのだろうか。隠しても仕方ない。スマホをテーブルの上に置き、相談してみることにした。
「それ、もしかしたらドーパミン中毒かもしれない」
「ドーパミン?」
「うまく使えばやる気を促すし、ワクワクした心にもなるけれど……」
真美はさらに怖いことまで言う。ショート動画やSNSの情報など簡単に報酬が得られるものにコミットし続けると、やる気がなくなるし、リアルで頑張ろうって気分になりにくいらしい。そうしていつのまにかリアルで恋愛や仕事の成功を逃したりする。
「な、何それ……」
優杏の口からうめき声が漏れる。思い当たる節がいっぱいある。ショート動画やSNSの情報を見るたびに、やる気を失っていたのも確か。こんな簡単に報酬が得られるなら、頑張る意味とか、コツコツした努力とか無駄に見えて……。
「まあ、現代病みたいなもんだね。だから最近の音楽はドーパミン中毒者向けにわかりやすくサビから入るの多いし、WEB小説も起承転結といいより起転転転って感じみたい」
「そうなんだ……」
そんな話を聞いた優杏。何か大事なものを失っているような気がして背中が寒くなってくる。
「だったらどうしたら?」
「リアルで報酬をもらえることを頑張るんだよ。運動がいいね。あとは料理ととか掃除とか。時間がちょっとかかって疲れるもので」
そう言った真美、優杏のスマホに目を向けた。指紋や油でベトベトになった画面が気になるみたい。
「まずはスマホ画面、綺麗にしてみたら?」
真美のアドバイス通りにしてみることにした。まずはティッシュで拭いてみたが、あんまり綺麗にならない。
「あ、思い出した!」
確かレシートの印字部分でスマホ画面を拭くと、綺麗になるって言われてた。ダラダラと見ていたSNSで知った知識だったが、全く役に立たないことではないらしい。おかげでスマホ画面はキレイになった。
「あ、キレイになった。これがリアルの報酬ってやつ?」
想像以上に心もスッキリしてしまった。SNSで得られる報酬より満足度がある。
「そうだよ。やっぱり、スマホ画面の中と外は違うってこと」
真美は深く頷き、キレイになったスマホ画面を見つめていた。




