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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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ロウソクが余った時

 日本では少数派のクリスチャンの船瀬乃亜。おまけに実家を継ぎ、教会の牧師までやっているわけだが、その実情は案外、普通。


「あー、どうしよう。クリスマス礼拝で使ったロウソク、余ってるわ」


 牧師室の消耗品在庫ケースを見ながらため息が出る。最近、聖書関連の資料を大量に買ってしまい、ちょっと置くスペースも確保したいし。


「しかしこのロウソク、何か使えないかね?」


 乃亜は三十二歳だ。高齢者の牧師が多い中、かなり若手。女牧師を認めない教派もあり、嫌味を言われることも多いが、今は余ったロウソクの方が問題。


 ちなみに服装は地味なパンツスーツ。牧師というと何か特別な服装を想像する人も多いようで、拍子抜けされることも多いが、実際はこんなもんだ。テレビを見ながら政治家に文句を言うし、お気に入りのアイドルもいるし、余ったロウソクにも頭を悩ませる。


「そういえば教会員の能田さんに聞いたら、なんかわかるかね?」


 能田はベテラン主婦だ。この教会の婦人会で一番仕切っている存在でもあるが、フードシェアの時は大活躍している。お米の小分け袋も「アイラップに入れたらいいんじゃない? そうしたらこのまま湯せんでご飯炊けるし」と言うアイデアも出し、評判が良かった。


 このロウソクも「クリスマス礼拝前に冷凍するといいわ。ロウが垂れなくなっていいから」というアドバイスもくれたと思い出す。


 さっそく乃亜は能田に連絡をとる。


「何? ロウソク余って困ってるの? だったら洗面所の流しに持っていって。蛇口とかにロウソクぬると弾いて掃除しやすくなる」

「なるほど!」


 さすがだ。良いアイデアをくれた。実際、教会では洗礼式がある。水を使った儀式の為、意外と流しや風呂場が活躍するので、このアイデアは大変良い。


「あと襖とかにも塗ると滑りが良くなるから」

「わー、能田さん! ありがとう! さっそく試してみる!」


 おかげで余ったロウソク、どうにか活躍できた。流しや風呂場も掃除が楽になって大満足だ。牧師室の掃除も捗り、資料も無事に収納できた。


「あー、良かったわ」


 思わずホッとして呟くが、神様の恵みは無駄がなさそうだ。こんな余り物も大活躍している。聖書にも全てのことが益になるという言葉もある。実際、乃亜は女牧師としていろいろと叩かれたりもしていたが、その分、信仰心が深まった面もある。全てが順調だったら、偉そうな牧師になって嫌われていたかもしれない。


 そんなことをしみじみと考えている時、教会のチャイムが鳴った。近所の女子大生らしい。教会は高齢者が多いので珍しいが、最近、スピリチュアルや陰謀論に騙されて聖書に興味を持ったという。


「こんな私ですけど、大丈夫ですかね?」

「大丈夫!」


 乃亜はどんと胸を張り、笑顔を見せていた。

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