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日常を彩るライフハック短編小説集  作者: 地野千塩


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流し掃除をしている時

 なんてこった。


「は? 何でツナ缶が流しの排水溝にシンデレラフィットしちゃってるの!? 何これ!?」


 長岡ひふみ、二十二歳。新卒入社をきっかけに一人暮らしを始めた。実家暮らしの方がお金が貯まるわけだが、ネットでは「子供部屋おばさんorおじさん」とバカにされているし、給料的にギリギリなわけだが、一人暮らしを始めた。


 今はネットで何でも調べられるし、一人暮らしなんて楽勝と余裕だった。実際、洗濯、ゴミ出しなどは余裕だった。


 しかし一点、予想外だったのはキッチンが狭いこと。ワンルームのキッチン、まるでおもちゃみたい。調理スペースなんてほぼないし、お湯を沸かすだけの場所という感じだ。


 狭すぎて包丁、まな板、食器類も床に落としやすいし、調理中のゴミですぐに床も汚れる。


 それに流しも問題。箸もうっかり流してしまい、取れなくなってしまった。ちょっと流しを掃除するだけで、このキッチンの狭さ、メンタルが消耗すると実感した瞬間、空のツナ缶が流しに落ちた。底の方にまでカラカラと落ちてしまい、排水溝にシンデレラフィット!


「な、何なの、これ。取れない!」


 シンデレラフィットすぎて手で取れない。隙間なく綺麗にハマってしまい、手を突っ込んでもガタガタ揺れるだけではないか。


 アイスの蓋が筒形スナック菓子の蓋にも合うとか、チーズの空き箱がポケットティッシュにピッタリだとかそういうシンデレラフィットは良いが、これはいただけない。


「何これ……」


 狭すぎるキッチン、本当に心が擦り切れそう。


 思えば想像力がなかった。かつてネットでバカにされ、ひふみ自身も笑っていた「子供部屋おじさんorおばさん」だってそれぞれに事情があったのかもしれないのに。


 ワンルームマンションのキッチンの狭さも想像できず、偉そうにしていた過去の自分、恥ずかしくて仕方がない。


「あぁ、神様、ごめんなさい。もう他人のことバカにしたり勝手に決めつけたくないです」


 こんな時は無宗教のひふみでも祈るしかなく、神様に縋りたい。


 その時だ。後ろを振り返るよ冷蔵庫にマグネット型クリップが目についた。


「まさか、ツナ缶にマグネットくっつえれば取り出せる?」


 すぐに試してみた。マグネットの磁力が弱めで何回か失敗した。


「いや、もっとゆっくり、ゆっくり釣りあげるみたいに持ってみるか?」


 何度か試したのち、すぽんとツナ缶が取り出せた。あっけなかったが、疲労感で肩が重い。


「本当、キッチン狭いよなぁ……」


 ため息しか出ない。


 その後、ネットで「自炊できない人はクズ」というインフルエンサーがいて軽く炎上しているのを見てしまった。昔だったら炎上ネタを見ながらニヤニヤしていたが、今は笑えない。


 狭すぎるキッチンを眺めてみた。今はこういうキッチンで自炊や掃除をする大変さがよくわかってしまい、ネットの炎上を見るのを辞めた。

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