リリィちゃんと前に進むと決めたから、その物語の先に行きます。
「さぁ、お話をしましょうか。貴女方の生まれる前の、この世界のお話を。」
曽お祖母様のお話は、とても、とても、気が遠くなるような、乙女ゲームや少女漫画にあるような冒険譚でした。
まるでそれは、曽お祖母様が物語のヒロインのようで、曽祖父ウィリアム・アッシュフィールドが彼女を守るナイトのような、、、
……いえ、、
徐々にヒーローとなるその彼との、冷めた政略結婚から始まる、この王国を根底から変えるための、壮大で情熱的な愛を持って突き進む、はちゃめちゃな、曽お祖母様の改革のお話。
元々、この王国は長い歴史の中で、領民と貴族の間では、誰も疑うことがないほどに、搾取や横奪が平然と行われていました。‘民は手足、貴族の奴隷’。
この頃の貴族にはこの考えが当たり前で、その生まれ方で全てが決まると、奪われる側の領民も貴族たちも、そう、信じきっていました。
……それ故に、シルヴァン家を始めとした3大貴族以外、己が一族のみが豊かになることしか考えないような、俗に言う‘腐敗しきった貴族’しかいなかったそうです。
ただ、3大貴族は一族の使命を、‘王国の繁栄’に定めているため、元々の考え方が異なっていた。
その考えを、この世界を、子孫の未来に託すため、変革をもたらすために、‘腐敗した貴族’をなくすことを信念に、その当時の王である兄と結託しながら、ウィリアム曽お祖父様を巻き込んで、内側から政治を変えていきました。
この時、曽お祖父様との考えのすれ違いがあったこと、そのことで喧嘩を思いっきりしたこと、全てを出し切ったこと、それが上手く噛み合って、仲の良い夫婦となったんだとか。。
これにより2人は、豊かな王国には領民が健全であることが必要だと考え、初等教育によるその領民たちへの意識改革から始まり、貴族に従う領民たちの在り方、衣食住の安定化のため貴族への変革を目指し、貴族自体の意義と意味を再定義し、貴族の義務を与えました。
領民と領主、双方に与えられた義務教育、その中身の統一化、領主の政策的な責務、領民のための制度の見直し、これらが少なからず、全ての国民への意識改革として成功したことで、私たちの現在に繋がっているようです。
ただし、全ての貴族ではないですが、やはり自分だけを見る方は貴族だけでなく、領民の中にもいるようで。。。
それが、以前から私たちが目撃しているような人たちです。けれど、搾取されるだけだった力のない市民が、力を、知恵を得ることで、対抗することができるようになった。これが今の私たちの王国です。
その話はまるで、世界史の教科書を開く様な驚きがあり、一つの長い長い物語を聞いている様な、中世ヨーロッパでの改革期を目の当たりにした様な気持ちにさせます。
それが自身の曽祖母たちによりもたらされたとは、到底信じられないですよね。
いやほんと、現代日本で一般庶民だった私には荷が勝ちすぎていますね、、
この世界がゲームの世界だって言うだけで驚きだったのに、その転生者がこの世界では何人かいて、祝福者と呼ばれるというのも大概驚愕に値しますし、悪役令嬢である私とヒロインであるリリィちゃんまで転生者って、ほんと物語の展開、全部覆していますよね。
本来の物語どおり全く進めていないでしょうから、私たち、どこに向かうか全くわからない状況ですよ。
それに、それだと当初の目的、曽お祖母様へ目指す先にヒントを貰うって、私たち、達成できるのでしょうか??
………ん?
あれ??リリィちゃんもこのゲームを知っている様子でしたが、物語を進めるような様子も、なかったような、、、??
それに、世間一般的にイケメンなジュリアン様や、超絶イケメンのお兄様に自ら話し掛けに行く姿、見たことないですね、、?
といいますか、ふっつーに、最初から私に話し掛けに来ていたような、、、??
この物語、進める予定、あったんですかね??
「あの、、、ディアナ様。。わたし、この物語自体、薄っすらとした記憶なので、、物語を進められるほど記憶は残っていないんです、、だから、その、、むしろ、、、ごめんなさい!!ディアナ様がどういった方だったのか、この世界がどんな世界だったのか、自分の記憶を確かめたくて、貴女様に近づいたんです!!」
ガバッと、またもや私に大きく頭を下げているリリィちゃんが、教えてくれます。いや、待って!私、直接聞いてないんですが!?何で考えてること分かるんですか??!それに、その近づいた目的は、ちょっぴり寂しい、でも当たり前な理由ですね、、
「お嬢様、、とても、わかりやすい表情をされておりましたよ、、」
黄昏ていたら、ルルから呆れるような言葉を投げかけられました、、
そして、私の疑問にも即座に答える優秀さ、、私も鼻が高いですよ、、、
あぁ、なぜにこうも読まれるのか、、、??
「ディアナちゃんって、こんなにわかりやすい子だったのね、、原作でもこれくらい言いたい事を言える子だったら、違っていたのかしら、、?」
いや、そうかもしれないですが、私、声にはまだ出してませんよ??
それに。それだと物語進みませんし、悪役がいないと、ストーリーにキレがなくなりますよ??
なんて、見ていたからですね。
「あら、ストーリーが進まなくても、ディアナちゃんが幸せになるなら、そんなエンドも見てみたいじゃない?ディアナちゃん推しとしてはね?」
……また、答える前に表情を読まれました、、
ズーンと、何だか居た堪れない気持ちになりますよ、、リリィちゃんにまで読み解かれて回答されて、ルルには呆れられ、私の扱いって、、、
なんて、思っていたら。
「……ディアナ様が、貴女様で良かったと思っています。確かに、物語の貴女様は、警戒をしなければならないほどに、その、、‘典型的なお貴族様’だったはずでした。ですが今の貴女は、様子を窺う目的で近づいた私にも、優しく接してくださいました。それは、記憶にある姿とはあまりにも掛け離れていて、、本当に驚きで、後ろめたさが募るほどで、、、けれど貴女は、それを振り払うほどに私に近づいてきて、、それがこの学園で独りだった私に、仲間を、友を与えてくれました、、感謝したんです。我武者羅な私に、優しさをくれた貴女に。独り学園で過ごす私に、近づいてくれた貴女に……周りに愛される貴女に、私も加わりたいと希うほど、近くにありたいと、思いました、、だから、優しい貴女の憂いを払いたいと、貴女と共に進みたいと、思ったのです、、例えそれが、貴女の望まぬものであっても、私は、貴女に答えを見つけて欲しい。。貴女の世界に、光を取り戻して欲しい、、なんて、自分勝手にも願っているのです。。」
真剣な、真っ直ぐな、リリィちゃん。そんな、私がいなくても、友だちがいたリリィちゃん。そう、思っていたのに、そんなふうに想って、考えて、側にいてくれた、、
優しい貴女。真っ直ぐな貴女。そして、信念を持って突き進む貴女に、私の方こそ、勇気づけられたというのに。。。
この子は、私に優しさを感じたと言ってくれる。そんな、自分本位に、見たいものを見たい部分だけ見ていた私に、温かさを返してくれた貴女。
それが、どうしようもないほどに嬉しくて、幸せで、、、
そう、私だって、貴女にもらった温かさを返したいと思っているのに。
友となって、私の不安に寄り添ってくれた貴女に、感謝をしているのに、、
だから、この先も共に歩みたい、それを想い、リリィちゃんと見つめ合っていました、、、




