この安らぎの時間をずっと続けたいと願ってもいいですか①
ジュリアン様、キャシー様、そしてお兄様とたくさん時間を過ごして。。。
色々悩んでお揃いにしたアクセサリー選びや雑貨など、ただ楽しい買い物を終えて、皆んなで流行りのお店で食事をして、この領地で楽しめる目一杯の時間を存分に堪能して。。。私たちは、シルヴァン家に帰りました。
たくさん話して、たくさん、笑って、、、
いっぱい、いっぱい、優しい時間を共有して。
これからもずっと、気の置けない友として、共に過ごせると、疑いもしないで、、、私たちの、進む未来を語り合って。。。その先にない白地図に、自ら道を綴っていく、、、
伸ばした筆の先は、違えた未来が広がろうとも、私は、友から受けた変わらない安らぎに、感謝を込めて。。。忘れたりしない。ずっと、大切な、友。
だから、子どもでいられるこの最後の夏休みを、彼らと噛み締めていたいから。
「ありがとうございます。皆さまと楽しい時間を過ごすことができて、幸せです。」
「改まって、どうしたんだい?」
お兄様が、訝しそうに、私に返します。
「いえ。今日まで皆さまと安らげる時間を過ごせていたことが、とても奇跡のようで。。。幸せであることを噛み締めていたのです。」
「まぁ。ディアナ様ったら。なんて当たり前のことを仰るの??私たち、幼少期からずっと同じ時間を過ごしていたでしょう?これからだって、変わらないわ?ね、ジュリアン様。」
「ああ、そうだよ。君たちと過ごす時間は当たり前で、変わらない日常だ。それは、ずっと先も変わらない。だから、ディアナ嬢。何も、心配することはない、、、」
「ジュリアン様。。。それは、とても幸せなことです。けれど、大人になって、変わるものが出てくる様に、ずっと昔のままでいられないのを1番知っているのは、第二王子であるジュリアン様たちです。だから、私がしたいこと、好きなこと、大切なもの、それが第一になるこれから、同じ時はずっと過ごせないと思ってて。。。だけど、楽しい時間だから、終わってほしくなくて、、、」なんでしょう。言いたいことはいっぱいあって、感謝をしたいはずなのに、3人に慰められていると、本音も一緒に溢れ出してきます。どうしましょう、ウルっとしてきました、、
どうしようもないほど、これからはずっと皆んなでいられない、それを理解しているから。
本当は、ずっとずっと、冗談を言い合ってそこに打算もなく時間を過ごしたくて。でも、学園を卒業する皆んなは未来を考えてて、私だって、この世界を自分のために生きたいと願っているから、お別れの時を挨拶して、次に関わる時には、友としていられるかなんて、わからない。
それは学園を卒業したお母様と王妃様も、頻繁に会えない様に、大人になるのは、貴族というのは、そんなものなのだと、噛み締めて。
「ディー。ディアナ。何をそんなに怖がっているんだい?君は、何に怯えて、この世界を生き過ごしている?ずっと、ずっと不穏なほどに、君は、小さなディーは、まるで見えない何かに恐れている様だ。僕たちに、話してごらん??」
お兄様が、私をギュッと抱きしめながら諭す様にお話ししてくれます。
だけど、これは私の、前世の不安だから、、
今ではないここでの不安だから。。。皆んなに迷惑を掛けるほどのことではなくて、、、
「いいの。大丈夫。お兄様。。私は、何も怖くなんてないの。ただ私は、、これからの学園生活で皆様に会えないことを思って悲しいだけだから、、、!」そう、嘯いてみたんですが。
「……。ディアナ様。貴女はずっと、周りに気を配ってました。それはまるで、恐れを払拭するためのように。周りに自然と溶け込める様に、周りを安心させる様に、、、本当の貴女のそれは、何を想っていますか??」
「君の感情が不安定なのはわかっていた。だけど、僕たちの時間を大切にしてくれているのも分かっている。だから、僕はそんな君のおチャラケに気づかないフリをしていたんだ。僕も君といたかったから。だから、その不安が僕たちで和らげるのなら、教えてほしい。」
「……。お兄様、キャシー様は、、?」チャリ、首にかけるネックレスを揺らしながら、お兄様に聞きます。
「キャシーは、大丈夫。僕が保証する。それに、ディーは知っているね、、?」
キャシー様が、他言などするような方でもなく、どんなことでも受け入れる器量があると知っています。
だから。。。ネックレスを外します。
「………私の前世のことなのです。だから、私には関係のないことなの。この世界にあるはずもない、前世の私の悔恨が、今の私に焦燥を駆らせているだけ。だから、これは私が自分で答えを出す必要があるの。。。」
瞳が黒く染まり、キャシー様が少しの驚きと納得をする様子が伝わってきます。だけど。
「……だとしても。君は僕の大切な妹で、大切な家族だ。君が、ディーが悲しいなら、辛いなら、悔恨を抱えるなら、僕が君の助けになるよ。全てを賭けて君に、安らぎを与えたいんだ。それくらい、僕は君のお兄様でありたいんだ。」
「ディアナ嬢。僕は、君に振られた。それは、わかってる。だけど、友であることは、これからも変わらないし、変えてなんてやらない。だから、君が助けを求めるなら、僕は僕の出来ることで、君の憂いを払いたい。それが、友としての僕の矜持だ。」
「ディアナ様。幼い頃から貴女は、私を立ててくださいましたわね。リアム様と外出する時は声を掛けてくださったり、同じ女の子として、気も遣っていただきました。私、こんなに仲良くできた女の子は他にいないのですよ。それは、貴女だから。そんな貴女だから、私も貴女の悲しみに寄り添いたいのです。。。」
何なんでしょう。この人たちは。私が私であることを、私が苦しいことを、こうも簡単に、肯定する。
そして、助けになると言ってくれる。これがどれほど、重荷になるか、、
そしてどれほど、何よりも心強いか、知らないのでしょうか、、、
だから私は、甘えたくなる。縋りたくなる。ずっとこの温かな時間を、繰り返したくなる。この、優しい人たちのいる世界で全てを忘れて、微睡んでいたい。
だけどそれでは、前に進めない。ここで停滞したままであれば、私はあの子を否定してしまうのだ。
だから、私の1番大事な子に向き合いたい。ずっとずっと、大切だって、後で気づいた私だから。
終わらないものはないと、想いを伝えることがどれほど大切だったか。今さら、全てが終わってから知ってしまったのです。
それは、どうしようもない私の間違い。前を向いて、全てを曝け出すことに躊躇った代償。
それを伝えて楽になれたら、どれだけ良かったのか。あの子に、私の本当を渡したかった。。。
「…私の、前の世界で。ずっとずっと、大切だった人がいたの。一緒に笑って、冗談を言い合って。たまに悲しいことがあっても喜び合える。ずっと側にいて欲しい。あの子の笑顔は誰よりも何よりも勝る特別で。同じ時間を共有した、どこの仕事場でもいる仲のいい同僚だった。愛らしくて、私の1番で。誰にも渡したくない子だったの。」
「ディーは、その人が愛しかったんだね。」
「そうね。誰よりも、大好きだった。けれど、、、」
お兄様たちになんと思われるか、想像がつかないから、私のこの焦燥を上手く伝えられません。。。
そう、少し躊躇いがあるんです。
だってあの子は、前世でも現在でも、女の子に生まれてしまった私と同じで。あの子も、女の子だったんです。
普通ではない。それは抱くことさえ許されない想い。だから、言葉の全てを飲み込んだ。誰にも理解されない想い。だから、全てを噤んだ。
「けれど?……何が君をそんなに空虚にしたんだ?何を悲しんでいるんだ??共に笑い合って悲しみを共有した君を、そいつは見捨てたのか?だから、君はこうも諦念を持つのか?」
「いいえ、そうではないのです。私が、自分で壊したのです。関係を壊したくなくて、元よりも壊してしまったんです。だから、悲しむ資格すらないんです。それが、余計に苦しくなる。。。許されない想いが、心から溢れて私の全てを壊したのです。全ては、一歩を踏み出さなかった私のせい。」
「…それでは、ディアナ様は、最も大切だった方との関係を壊してしまって、お辛い気持ちを抱えて生まれ変わったのですか?」
「いいえ。むしろ壊したくなくて、全てを諦めたのです。あの子の言葉に、返さなかった。口を噤んで、想いを閉じ込めた。あの子は、勇気を出したのに、、」
「そいつの想いに、応えることをしなかった。それが、ディアナ嬢を苦しめているのかい?そいつは、君を引き止めることもしないで、逃げたのか?そんなやつは男の風上にも置けないやつだ。君は何も悪くないさ。」まるで、自分のことの様に悔しさを滲ませるジュリアン様が私に慰めをしてくれます。
けれど、そうではないのです。私の気持ちは。
「……私の気持ちは、ただ1人の女の子に向けていました。。いつも朗らかで真っ直ぐな、優しい子。誰よりも私を慕ってくれていた年下の女の子なのです。それが、私の愛しい人だったの。。」
驚きの表情をしている3人に、私は続けます。
「私が前世で男であった訳でもないのです。それ故に、私は、想いを閉じ込めた。愛しい子の想いに気付かないフリをして、言葉で突き放した。それが、あの子と最後に笑い合った時です。。。そして、その子の結婚披露宴の日の夜、不慮の事故で死んだ私は、この世界に生まれ変わりました。それが、最期に希った、【世界から消えたい】。この想いが叶った結果なんです。だから、全てに後悔をしていますし、悔恨の念が、ずっと付き纏っているのです。。」




