お買い物はまだまだ、楽しみますよ。
ジッッと、アクセサリーのコーナーを見つめているお兄様。何だか一点に集中して吟味してます。だけど、ここは貴族御用達のような上質な装飾品ばかりではないので、お手頃価格が揃っています。
恐らくこれは、あと少しで到着するキャシー様へのサプライズプレゼントでも狙っていますね。
そんなお兄様を私も見ていたせいですかね?店員さんが私たちに近づいてきちゃいました。
「お客様、失礼します。商品のご説明をさせていただきますがよろしいでしょうか?」
「ああ、折角だから、聞こうか。」
「恐れ入ります。こちらのブレスレット、若い女性への贈り物に大変人気の商品になっております。実はこちらのシリーズ、メインストーンに魔石を使用しておりますので緊急時は金具を引っ張ると自動で魔法を発動いたします。例えばこちらの風属性が付与されたものですと、風の刃で悪漢へ切り付けることが可能です。そのためもしもの際に身を守れると、男性から女性へ、護身用として贈られております。。。如何でしょう?ご同行者様は美しいストロベリーブロンドの髪色をお持ちですので、薄緑に染まった魔石を嵌め込んだこちらのブレスレットが大変お似合いになるかと存じますが……」
なんと、勘違いをして私へのプレゼントだと思われてしまってます。キャシー様は、私よりも淡めの蜂蜜色をした髪色ですよ?葡萄石に似た薄緑の魔石よりも、ローズピンクなどの柔らかい色合いがキャシー様へはお似合いでしょう。。。
ちなみにですが、この風属性付きのブレスレット、少し良いくらいの結婚指輪の額です。私たち貴族だとポンと購入可能な額ですが、珍しいものですからね。この店舗形態にしては庶民向けの額ではないですよ。私たち、カモだと思われてそうです。
まぁ、お兄様次第でしょうが、あまり合わない色合いをキャシー様に選びますかね、、、?
「そうか。それなら、このピンクゴールドの石を嵌め込まれたものだとどうだろうか?」
え、その色合いだと魔力鉱石に込められた魔力って、強くないのでは?お兄様もご存知のはずなのに…。
だって実は魔力鉱石って、無色透明なんです。
といいますか、そのままだと単なる魔力も持たない普通の鉱石なんです。だけど、不純物がなく空っぽだからこそ、純粋な魔力を込めることができる。
だから、‘魔力鉱石’って呼ばれているんです。
だけどそうすると、どうやって属性魔法を付与して色味を出しているのか?
わかりやすくいうと、付呪師と呼ばれる人たちが魔力鉱石を素体として切り出したものに魔力を注いでいるんです。この無色透明な素体石に付呪師がその得意な属性魔法を付与することで、色味のある魔石に加工しているんです。
そして、その加工された魔石を魔道具として細工する人たちは細工師と呼ばれていますが、付呪師と異なりピンキリとされています。ある程度の器用さと独創性があればなれることからそう云われますが、付呪師は魔力の付与をうまくやらないと上質な魔石を作れないので一定以上の技術が求められます。
これは先程話に出た色味に関係しますが、強い魔力を得意な属性で込めれば色が濃くなり、その魔力を均一に付与すれば、その素体石に行く魔力が万遍なく染み込むため透明度が増し、光に反射すると何層にも重なって見えます。
ですので、本来火属性の魔石を選ぶならガーネットのような色合いを選ばなければ、魔石の価値は低めになります。むしろ敢えてピンクゴールドにするなら、始めから色味が薄く魔石としては劣るため、宝飾品として価値のある透明度のあるものを選ぶ必要があります。
ですので、このピンクゴールドのブレスレットは宝飾品としての価値を求めて透明度は上げてありますが、単純に色味が強いものより技術は必要でも、魔石の価値としては、魔力自体が弱いので、場合によったら大分子ども騙し程度の発動魔法だってあり得ますよ。
だから、店員さんだって驚きます。
「なるほど、、、差し出がましい真似をいたしまして大変恐縮でございます。そちらの色合いですと、宝飾品としては大変人気となりますが、発動魔法としては、火魔法が目の前で軽く発火する程度ですので、悪漢が目の前に迫った頃でなければあまり効果は見込めないかと、、、」発火できる分にはまぁ、悪くないですが、やっぱりそんなに強く効果はないみたいです。
「うん、それくらいならいいか。どちらかと言えば、この色合いは大分技術がいるものだ。値段だって悪いものではないし、手頃な価格だ。」
お兄様が、にこやかです。魔力の付呪の強さよりも、贈り物としての華やかさを選びましたね。
まぁ、元々うちの領土の魔力鉱石自体は他領のものより抜きん出て透明度が高いため、上質なものとしてブランド化されてますからね。
華やかに細工されたものであっても、その付与された魔力の繊細さは、石のグラデーションでわかります。ここでは付呪師も細工師も、ブランドに見合った一流しかいません。というか、生半可な力量ではここの領地でやってはいけないだけなんですけどね。
だって、シルヴァン家自体が昔からの爵位を持っているところですよ?結構歴史のある一族から興っていますから、それに仕えて残った付呪師も、一流の技術者しかいないんですよ。そのため魔道具の効果としては低めといっても、ブレスレットとしてのモノが良いのでピンクゴールドであっても、極端に値段が低くなるわけではないんです。
本当は、他の領土で採れたものだと、もう少し価格も抑えられているんですけどね。実は付呪師自体、他の領土内にも含めた、ファンタジー漫画でありがちなギルドというか、協同組合を持っているんです。
要は、付呪師といっても、魔力がある時点でただの市民という事ではないので、過去に何かしらの身分のあった人たちです。そういった人たちが街などに住んで馴染んでいき、一族的な繋がりで行っているので、今も普通の市民とは異なります。だからなのか、その組合の意味がどちらかといえば自分たちの保護というか、今までの誇りから存在しているものになりますので、シルヴァン領での付呪師は、我が公爵家でも何人か専属がいる程です。
シルヴァン領産ってだけで付加価値で高くなっている状態です。ですので、贈り物やお土産としても人気なんですよね。
それを理解した上でお兄様は、キャシー様へは魔道具としてというか、ちょっとした宝飾品としての贈り物にしたんでしょうね。うん、無駄に殺傷力の高いものを贈るよりも好感度を上げようとしてますね。
やりますね、お兄様。。。。
「承知いたしました。ただいま贈り物用にご準備させていただきます。しばらくお待ちください。。。」
「ああ、よろしく頼む。」
ニッコリ、嬉しそうな顔をしてお兄様がブレスレットの準備をお願いしました。その間、私も手持ち無沙汰になるので、クルッと店の中をルルと見て回ります。
「待たせてごめんね、ディー。そろそろお昼時だけど、この辺で食事にしようか?」
「そうですわね。時間もいい頃合いですし、私もお腹が空いてまいりましたわ。
「そうだね。よし、ジョシュア。入る店を任せていいか??」
「御意。我が主人、お任せを。」
手を前にペコリと綺麗に頭を垂れ、ジョシュアがお店の手配に行きました。
「ディー、待っている間あのベンチに座ろうか。」
「お兄様、ありがとうございます。私ちょっと足が重くなっていたから有難いわ。」
「お様様、足元お気をつけくださいね。」
お兄様が手を貸してくれる隣で私を心配してくれるルル。やっぱり優しい子です。
誤字に気づき修正しました。




