第一章 パンドラの箱
「はぁ。」
俺、健一はため息をつきながら歩く。
ため息の理由は様々だ。
今日帰って来たテストの点が悪かった。高校生にもなって、いじめをしている奴を止めることが出来なかった。車に轢かれそうになった。鳥の糞が服に落ちた。
俺は、憂さ晴らしのために、小石を蹴った。
飛んでった石が、コツンと、小さな正方形に当たった。
それは白い箱の縁と、面の模様に青色が入った神秘的な正方形だった。
「なんだこれは?」
俺はそれを持ち上げる。
突如、視界が青色に染まる。
「うっ。」
その光に、俺は目を閉じる。
そして、目を開けると、青色の空間にいた。
そして目の前には───
「『初めまして、ご主人様。』」
───青い髪を長く伸ばし、白と青色の混じったアイドルのような衣装の6歳程度の少女がいた。目はラピス・ラズリのように青く、そこに当たる光のせいか、金色に見える部分もあった。
少女は、浮いており、俺を上から見下ろしていた。
「誰だ君は!俺が主人だって?」
俺が反応したのが嬉しかったのか、彼女はくるくる回りながらこちらへ近づく。
「『『パン』ちゃんは~、『パンドラ』って言うの。そして、『パン』ちゃんの箱に触った人は、『パン』ちゃんのご主人様になるの。そしてそして、なんと、『パン』ちゃんはご主人様の願いをなぁんでも叶えてあげることが出来るんだ〜。』」
「願いを?」
「『そう!大金持ちになることも、好きな子とカップルになることも、嫌いな人を殺すことだって。』
『ど〜んな願いでも叶えてあげる。だからほら!願って願って。』」
パンドラと名乗る少女は、むしろあちらが何かをねだっているかのように言った。
俺はそれに不信感を抱いた。
「なにか代償でもあるのか?」
パンドラはそれに笑顔で返す。
「『あはは!そんなの無いよ〜。強いて言うなら〜。1度願いを『パン』ちゃんにかけたご主人様は、『パン』ちゃんにずっと願いをかけなきゃいけないってことぐらいだよ。』」
「どういうことだ?」
「『『パン』ちゃんは〜。人の願いを叶える為に産まれたんだ〜。だから〜、人の願いを叶えられない『パン』ちゃんは無価値になっちゃうんだ。』
『だから〜。ご主人様には、何回も願いを言ってもらうようにしてるんだ!大丈夫!『パン』ちゃんはな〜んでもできる!!』
『あは!『クラ』君みたいな事言っちゃった。』」
1人で勝手に笑うパンドラに、俺は問いかけた。
「クラ君?」
「『うん。『パン』ちゃんのお友達だよ〜。まぁ、『クラ』君のことは置いといて〜。早く、『パン』ちゃんに願い事を聞かせて〜。』」
ウキウキしながら、願いを待つパンドラに、俺は問う。
「どんな願いでもいいんだよな?」
「『うん!いいよ〜。な〜んでも言って〜。』」
俺は試しにと、1つ願い事をした。
「この服に付いた鳥の糞。取ってくれるか?」
俺の願いに、パンドラは爆笑した。
「『あはははは!最初に願うことがそれ〜?ご主人様ってばおもしろ〜い。』」
パンドラは笑いすぎて出た涙を拭きながら、言った。
「『いいよ。それじゃあこの箱に触れてね〜。』」
そう言うとパンドラは、彼女の手のひらサイズの箱をどこからともなく出現させ、俺の方に近づけた。
俺はそれに触れる。
すると、視界がまた、青く染まる。
青色が消えると、元いた場所に戻っていた。
そして、鳥の糞は消え、俺の手には『パンドラの箱』が置いてあった。




