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オマケ・俺が愛していた妻・婚約者は

ランキング入りを果たしていたのでオマケを執筆しました。

元悟で元ビクスタ視点でのお話。来世編です。

それは突然だった。

婚約者との結婚式を終え初夜も済ませた翌朝妻となった女が目覚めるより早く目を覚ました俺の脳裏に聞いたことがあるような無いような不思議な音が聞こえてきた。


ーーミズホじゃない。


ミズホとは? その単語が分からず首を捻ったと同時に……前々世と前世の記憶が一気に蘇って来た。瑞穂とは日本で暮らしていた妻の名前で俺が愛していた女。子どもが中心の生活で俺を見向きもしなくなってその寂しさを紛らわすために浮気をした。そしてバレて離婚されて瑞穂と子どもを失ったことが許せなくて殺してしまった……。前世ではこの世界のとある王国の王太子とその婚約者だった。俺はディータナを愛していたが婚前交渉に否定的だったディータナとそれを尊重していたが抑えきれない欲望をどうにかしたくて愛してもいないディーの妹・ドルテアと浮気した。それがディーにバレて俺はディーと結婚したものの彼女と家庭を築く事は許されずドルテアと家族を築かされた。

ドルテアに産ませた息子に王子教育を施そうとしていたディータナを俺は知っていたがドルテアがそれを拒んだ。今でも鮮明に思い出せる。


「お姉様は子どもが産めないからって私から子ども達を奪うつもり⁉︎」


ドルテアはディーをそんな風に詰った。子どもが産めないのではなくディーを裏切った俺の所為でディーは子を産まない選択をしたのだ。それに俺は王太子。ゆくゆくは国王だ。つまりドルテアが産んだ子ども達も王族で王子教育・王女教育は施す必要がある。けれどディーに反発する事で俺の愛を得ていると思っているドルテアが素直にディーの選んだ家庭教師を受け入れるわけがなく。自分で育てる事に固執したドルテアの子が王子と王女の自覚など芽生えるわけがなかった。

それに見切りを付けた国の重臣達から側妃を娶るように言われて2人側妃を娶った。本当は1人の予定だったのだが1人だとドルテアの嫉妬がその側妃に集中する可能性がある、というディータナの助言により2人以上を迎える事になってしまった。だが最低の人数にしたいと言ったのは俺だ。ディーを裏切った俺だが愛しているのはディーで。そのディーをこれ以上悲しませないように最低の人数である2人で手を打った。だがディーにはそんな俺の気持ちは当然届いておらず「愛するドルテアのためですわね」と美しい笑みを浮かべて俺の心を抉った。側妃2人は初めから政略だと割り切って子どもを1人産んだら解放してくれ、と初夜で言われたのでどちらも妊娠するまでの期間限定だった。どちらの子も女児で側妃2人は務めは果たしたとばかりに俺を放置した。そして俺の子であるはずなのに側妃2人は其々の愛人と共に我が子を育て始めた。ディーは側妃2人の意思を尊重していて王女教育も側妃達の意見で施した。まるで我が子のようにドルテアの産んだ子も側妃2人が産んだ子も慈しんでいたディーだが、ドルテアとの間の子はドルテアの怒りに抵触するから援助しか出来ない。側妃2人の子、どちらかの王配に何れは俺の跡を継がせるつもりらしい。


それが分かっていても俺は国王になってから正妃ではなく共同統治者になったディーの優秀さに卑屈な思いをした。それが嫌でディーに全てを押し付けた俺はドルテアとその子ども達と遊び歩く事を選ぶ。その金をディーに出させて。そうして国王の位について10年も経たないうちに俺はディーと宰相から王城を追放されて我が国にある王家の離宮にドルテアとその子ども達と共に幽閉されてしまった。

その後この離宮で働く使用人達の噂では、側妃2人が産んだ娘達に王配を付ける話も最初は出ていたそうだが俺が国王の職務を放棄した事でディーに擦り寄る方が賢明だと判断したらしく王配候補の貴族達はディーに代わり権力を握る事を放棄した、らしい。それを受けてディーは側妃2人の意思を確認して俺を王城から追放し離宮に幽閉という道を選んだ。


つまり自業自得だった。その後の記憶は曖昧だからおそらく離宮で幽閉生活を送ったまま死んだのだろう。そうして現在。前世と同じ世界の別の国の商人の三男に生まれた俺がいた。隣でまだ眠っている俺の妻は貧乏子爵家の令嬢で金の欲しい子爵家と貴族と商売をしたい俺の父との思惑により5年前に婚約し昨日結婚した相手。そしてーー悟の時の浮気相手でありビクスタの時はドルテアと名乗っていた女だった。

そう。俺は瑞穂と出会う前に前々世と前世の浮気相手と結婚したのだった。そこで気づく。俺がいてこの女がいるのなら瑞穂いやディータナも生まれ変わっているのではないか、と。そこそこに金持ちな俺の家だ。顔も広い。瑞穂を……ディータナを探そうと決めた。そして今度こそ彼女と幸せな結婚生活を送る。俺が浮気なんてバカな真似をしなければ瑞穂と離婚しなかった。ディータナと幸せな家庭を築けた。だが今回はまだ出会ってないし浮気もしてない。この女とはさっさと離婚すれば良い。彼女に会えば直ぐに分かる。彼女も俺の事を愛してくれていたから俺を見れば分かるはず。意気揚々と眠る妻となった前世のドルテアを置いて寝室を出た俺は直ぐに最愛の彼女を発見する事になる。


「おいおい。初夜の翌朝くらい新妻と共に居てやれよ」


大きく溜め息をついたのと同時に吐き出された声に振り返れば次男である兄さんがいた。長男は既に父の跡継ぎとしてその手腕を発揮し妻と共に商売を盛り立てている。次男の方は商売よりも文官になりたい、と王城の財務部門の文官として俺が婚約する1年くらい前から働いている。我が家とは関係ない女を自力で見つけて妻に迎えている。本当ならば俺が結婚した子爵家の令嬢はこの兄と結婚する予定だったらしい。だが兄がそれを受け入れると父の商売を手伝う事になるから嫌だと断り俺に決まった。


「兄さん……。珍しいね。実家に泊まるなんて」


文官の兄はとっくにここを出て一人暮らししていた。そこへ兄が見つけた女を妻として迎えている。


「莫迦か。お前の結婚式に出席しているんだ。泊まるに決まっているだろうが」


冷めた目を向けられてそれもそうか、と頷いた。兄さんが暮らす家から此処までは馬車で2時間程かかるから結婚式の後の披露パーティーまで出れば結構な遅い時間。そこから帰るよりは妻と共に実家に泊まる方が心配無いだろう。


「そういえば義姉さんは?」


昨日の結婚式にも参加していた次兄の妻の姿が見えない。


「ああちょっと手加減しなかったら起きられなくてな。おそらく昼まではベッドの上だ」


しれっとした発言に初夜の俺より凄いな、と笑った。次兄もニヤリと笑う。自分で見つけただけあって兄さんは義姉さんを溺愛している事に俺は気付いていた。


「そうだ。俺の昇進が決まってな。今まで以上にこっちには帰って来られなくなった。もうお前も結婚して兄さんが跡継ぎとして頭角を現しているし、お前も兄さんを支えてくれるらしいから俺はお前に任せても構わないな? なかなか帰って来られないから後は頼んだぞ」


「分かった。兄さんも文官の仕事を頑張ってな。義姉さんと仲良く」


「おう。もちろんだ。昼過ぎには帰る。お前も妻と仲良くな」


それで話が終わったように兄さんはキッチンへ向かう。義姉さんのために軽食を持って行くそうだ。俺は食事を終えて仕事をすることに決めた。最愛の彼女を探し始めるのは次兄を見送ってからでもいいだろう。

そうして俺の妻となった女が起きてから次兄夫婦が昼過ぎに帰るから見送る話をしたあと、前々世と前世でそれなりに関わった事もあり一応身体を労ってやる。恥ずかしそうに俯き照れる顔は変わらないな、と思いながら瑞穂を、ディータナを思い浮かべる。……ああ会いたい。早く手に入れたい。


その願いがこんな形で叶うとは思わなかった。


次兄と義姉を見送るので2人を待っていた。そして俺は記憶を取り戻してから初めて義姉を見て絶望する。瑞穂は……ディータナは次兄の妻として俺の前に立っていた。こんな再会なんて酷すぎる。瑞穂とディータナを傷付けた罰なのだろうか。俺が妻となった女と離婚しても次兄と義姉が離婚する事は万に一つもない。次兄は義姉を溺愛している。今だって甲斐甲斐しく声をかけて世話を焼こうとしている。


俺の最愛の彼女はそれを呆れつつも嬉しそうに幸せそうに受け入れている。幸せ、なのだとその表情が物語る。彼女は俺を見ても何とも思わないようで「ご結婚おめでとうございます。お幸せに」と俺と妻に言った。妻も「これからよろしくお願いしますね、お義姉さん。お義姉さんもお幸せに」とか挨拶している。

俺の最愛は俺に何の反応もする事なく……次兄と共に去って行った。

来世は幸せになって欲しい、とディータナ(瑞穂)に対して感想を頂いたので来世編を執筆してみました。いかがだったでしょうか?


裏設定。次兄の妻である元ディータナは割と早くから記憶を取り戻していたため、どうにかして元ビクスタと会わないように考えていました。が。次兄に捕まり相思相愛になり結婚したら出会ってしまったわけです。焦った元ディータナちゃんですが元ビクスタが記憶を取り戻していない事に安堵して必要最低限の関わりしか持たないように気をつけてました。それには夫の協力も不可欠でしたが、夫に正直に話したところその話から夫も記憶を取り戻しました。

実は夫である元ビクスタの兄は瑞穂の時には離婚に協力的だった弁護士の従兄弟。彼は瑞穂を密かに好きだったけれど瑞穂の気持ちが全く恋愛ではないことに気付いていて諦めていました。それが思いもかけずこのような形で願いが叶い益々元ディータナを溺愛するという余談。当然弟に最愛の妻を奪われる事を警戒していました。最愛の妻から弟の妻が悟の浮気相手でディータナの妹のドルテアだと知って全力で2人の結婚をプッシュしていました。結婚したのでようやく安堵。次兄夫婦は幸せに暮らす事でしょう。


ちなみに元ビクスタと元ディータナと元ドルテアを一切無関係にしようかとも思ったのですが、親兄弟・恋人・友人などは生まれ変わってもまた近しい距離になる。という通説を元に執筆しました。ということで結局3人の縁は切れない……。それは元ディータナにとっては幸か不幸か。どちらでしょうね。


以上、オマケと裏設定でした。

感想・ポイント等ありがとうございました。

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