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 30s   作者: リョウゴ
帰国子女と異界騎士
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戦い方の違い



「……勝者、結城止水」


 担任の金槻零司が宣言すると、観客席が俄かに沸き立った。その騒がしい歓声を聞いて、漸く負けを理解する。


 攻め方を誤った。遠・中距離から攻撃するのが正しかったはずだ。 恐らくは近接武器を用いた至近距離の戦闘においてはかなりの実力者でありそのような相手に透明化してたとはいえども近接戦闘をするのはあまり良くなかったのだろう。一人だけ気配の質が異常だったから警戒はしていたつもりだったのだけれど。


「おーい、大丈夫?」


 結城が、仰向けに倒れた私の顔をのぞき込むようにして立っていた。彼が手を差し出したので、それを掴んで立ち上がる。


「…………」


 0組は能力を持たない集団と聞いた。あるのは腕輪から出た武器と盾と弾丸だけと。だが、あの炎は何だろうか。あの瞬間移動は何だろうか。


「このクラスは所謂能力を持たない集団と聞いた。アレはどうやってやったの……?」


「……えっと、最後のなら結構気配で分かったし、何となく?」


 そっちじゃない。確かに気になったけれど、アメリカでもそれが出来る人は居た。所謂達人と呼ばれる人達だが、居たことを知っているから理解できない程じゃない。突然それをされて動揺したのは確かだけど。


 蹴りの動作を付けて改めて聞いた。


「そうじゃなくて、燃えてた」


「あー。あれは武術の一種だよ」


 ああ、ブジュツならたしかに………武術? ブジュツってあの武術???


「ブ、ジツ??」


「……そんなにおかしいかな?」


 結城は首を傾げていた。もしかして日本の常識だろうか? これは私が不勉強だということか??


「集合しろー」


「はい! 行くよ湯沢さん」


 ……釈然としない。少し調べてみよう。そう思いつつ結城の手を手放して追いかけた。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「と言うわけだ、分かったか?」


「何がですか」


 集合させると担任はただそれだけ言った。前置きも何もかも足りない二言につい俺は聞き返してしまった。


「日本の能力とは違って、アメリカの能力は職業(クラス)に準じた能力を得るのだ。まあ、あの辺りの異世界とこの辺りの異世界は違うからな。能力の性質も違うのだ」


 担任は一息置いてもう一度言った。


「違いが分かったか?」


「分かりません」


 どっちにしろ、俺達に出来ないことをしやがるってことだけしか分かっていない。どっちもそう言う点は同じだろう。


「こっちは一芸特化になりやすいが、向こうは職業(クラス)毎に出来ることを変えられる。卑怯極まりない」


 卑怯て。それをアメリカの能力者の前で言うのはどうなのだろうか。当の湯沢は深く考え込んだままであまり聞いてる様子はないが。


「さっきのはそれを分からせるために?」


「そうだ。今日からしばらく一緒のクラスになるんだから仲良くしろ」


「それなら殴り合う必要なかったんじゃないんですか!?」


 担任は面倒くさそうにしながら溜め息を吐いた。


「それな」


 それな、じゃないでしょうが。






 ──放課後。


 『親睦会やりましょー!』なんて女子の一部が騒ぎ立てていたけれど、俺はあんまり関係ないなと話し合いに参加せずに教室から逃げ出した。


「それで、何でこんなところに来ているんだ?」


「調べたら、使用状態になってる訓練場あったから紫野じゃないかなとか紫野だったら使わせてくれるんじゃないかなとか思ってね」


「……そうか。まあ、使う分には構わないが……邪魔はするなよ?」


 紫野は十メートル位の土で出来た直方体に触れていた。自分の能力で作ったらしい。


 大きいな。


「……何だ?」


 紫野は俺が彼女の作ったであろう土の塊を見ていることに気が付いたのか、怪訝な目で俺を見てきた。


 まるで邪魔をするなよ、と改めて言いそうな目つきに俺は、見てただけじゃないか、と言い返したくなった。


「何するつもりなの? これで」


「人工精霊の頭の強化、それと操作機構の精度の向上。つまり能力精度の向上に向けて色々するつもりなんだな、これで」


 巨大な土塊を親指で指差す。俺はなるほどな、と呟いて剣を引き抜く。


「お、おい、何をする気だ!?」


 何をする気、ねぇ。


 こうする。


「まず魔弾を壁に当てる」


 左手、親指を立てて人差し指をまっすぐ伸ばし、他の指を折り曲げる。銃の形を作り親指と人差し指を目印に壁に照準を付けてから目を閉じて魔弾を撃つ。


 ──ごっそりと体力を持っていかれる感覚で腕を下ろしそうになる。魔弾が壁に当たって炸裂するまで三秒程であった。


「時間から距離を割り出して葉刃で殴る。………あれ、外れた」


 かなり手前の地面に葉刃が刺さっていた。


「……普通に目を使って狙えばいいだろ」


「かもしれないけどね。これは遊びだよ、遊び」


「……遊びなら帰れ、邪魔するな」


「目が使えない状況で距離感を測る技がほしいんだよね」


「気配察知とかすればいいだろ、出来るんだから」


「……あ、それもそうか」


 単純に、魔弾をあまり使っていないからたまには使うか、ぐらいの気分で考えたんだけどやっぱダメか。


「………つか、出来るのか」


 ものすごく小さな紫野の呟きが聞こえた。


「じゃあ魔弾を撃ちまくってみるか」


 一発撃つだけで疲労感を感じるのだからもしかしたら向いてないのかもしれないけど撃てるなら練習しといて損はないだろうし。


 中には打てない人も居るらしい。彼の名は五月雨牧男。腕輪のレベルアップで使えなくなったらしい。


 もしかしたらそうなるかもしれないが使える局面は必ずあるのだ。練習しといて損はないはずだ。


「──そうだ、ちょっと面白そうなものが出来そうなんだ。詳細は省くが、助手のよしみだ、出来上がったら見せてやろう!!」


「……おう?」


 突然で対応できなかった。何の話?

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