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 30s   作者: リョウゴ
空想錬金と二人一組
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オレ、店開くわ



「このカフェ、最近話題なんだって。識杏を誘ったらどうだい?」


「え、じゃあ早速誘ってみるよ」


 早速レインから識杏へとメッセージを送る。内容は『このカフェ興味ある?』って感じで、店の外装の写真も送る。


 ぴこりーん、と近くから音が聞こえた。


「ん?」


「行動早いね止水、てっきり帰ってからかと」


「いや、最近見てないからさ、一刻も早く送りたかったんだ」


「そうかい」


 あれ。で、さっきの音は何だったんだろ───と振り返ってみたところで俺の携帯から通知音。返信が来た。


『ない』


「……おうふ」


「へぇ、またあの子は……」


 依田が画面を横から盗み見て、溜め息。吐息が首に当たったんですけどそう言うの心臓に悪いから止めてくれ……。


「ま、貸してみせたまえよ止水」


 そう言うやいなや手から吸い取られるように飛んでいった携帯はすっと依田の左手に収まる。


「『行かないか』っと」


「っておい!? 勝手に何送って」


 反応が遅れた。そして動いたときにはもう手遅れであった。


 依田は携帯を放り投げて俺の眼前で止める。俺はそれを受け取るとすぐに画面のメッセージを確認する。



『行かないか?』


識杏『予定がある』


『明日?』


識杏『そう』



「ちょ!? 勝手に約束取り付けようとして断られてるじゃないか!」


「はっはっは」


「笑い事じゃないでしょうが!!」


「笑い事だよ」


 笑いながら依田はそう宣った。ふざけてない? 協力してくれるんじゃなかったの???


「まあ少しは意地があるんだろうけど、端から見れば笑い事だよ」


「??」


「結果の分かりきってる事なのにね」


 目を伏せて、そんな事を呟いた。俺はそれに対して、首を傾げているだけだった。


「あ……いや、と、とにかく明日、待ち合わせ時間を打ち込んで待ってるからなとか打ち込んでおけば絶対識杏は来るからね、絶対」


「そういうの良くないと」


「いーの! それくらいで折れるんだって分からせてやらなきゃいけないんだから」


「ん? 折れる?」


 やってしまった、と言ったような表情に俺も流石に怪訝に感じる。しかし何事もなかったかのように繕い話を転換させる依田。


「おっと、それはこっちの話だよ。止水が気にする事じゃあないさ」


「そうか?」


 無駄に追求する必要はないと思った。まあ、知ってもどうしようもなさそうだし、と言うのが一番の理由だ。


「じゃあ、言われたとおりやってみるよ」


 俺達はカフェの前を通り過ぎていく。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ───時は遡ること数週間。どこかの屋敷の大広間で何人かの男が集まっていた。明確にはその内の一人が集まるように言ったからだ。重大発表などと銘打って仲間を呼んだ。


 そうして集まった仲間の前でその男は決心を口にする。


「オレ、店開くわ」


 ……………………………。


「はァ?」


 最初に理解が追いついたのは、隈の深い痩せ気味の男だった。彼は不眠から来る目つきの悪さを一層強くして、ドスの利いた声を上げた。


「いや、単純な話、オレの夢だったんだ。カフェ」


「かふぇ……ああ。喫茶店の事ですか。まあ、良いでしょう」


 神官の装いの男が店を開くと言った男の言葉に許可を与える。一応この神官がこの一団のまとめ役であった。


「良いのか?」


「ええ、情報収集の一環でしょう?」


「いや、どう考えてもコイツの趣味だろ、場所は何処に開くつもりなんだよ」


 痩躯の男が言った内容にその通りだと笑いながら店を開くと言った男が話す。


「あ、それな? 納詫高校の近くにでもするわ、いちおー情報収集の一環だしな」


「一応かよ」


「そうだグラッジぃ、お前一応ここの奴らの中じゃ一番常識あるし従業員として働いてくれないか?」


「はァ? なンで俺がお前の下で働かなきゃいけねェんだよ」


「そりゃお前……アドラーも剣豪もアンガーもグリーフも他の奴もまともじゃねぇじゃん」


 その言葉にもとより悪い目つきを悪化させてグラッジは舌打ちした。


「話が纏まったかな? じゃあ頼むよ?」


 まともじゃないと言うことを気にする様子もなく神官アドラーがグラッジの肩をたたく。グラッジはもう一度舌打ちした。




 ────時は戻り、納詫高校の近くに出来たカフェ店内。


 やけに賑わった店内を見渡し、黒のエプロンを着たグラッジが呟く。


「この店の何処が良いのやら」


 店長となった辺りから渾名がマスターになった男は客を眺めてグヘグヘ言っている。正直言って気持ち悪い。


 ──趣味ってコーヒーとか作る事じゃなくて女子高生眺めることかよ。


 口には出さないが、店内眺めて鼻の下を延ばしているマスターを見れば確定的である。


 真面目に働いてるグラッジは、こんな店潰れてしまえば良いのに。と考えながらも結局仕事に従事していた。


 最悪なことにここは納詫高校の間近にある。下手に行動を起こせば即座に鎮圧されるだろう。それが内輪揉めでもここに来る客はあの高校の大事な生徒であり、この国の未来の軍事力なのだ。危険の芽は潰されるだろう事は容易に想像できる。


 要するにここでは情報収集とやらをするしかないという事だ。グラッジは正面から戦えない悪魔だ。いや、悪魔には戦闘力がないというわけではないのだ。ただ呪いに特化しているからか、戦闘自体に慣れていないだけで。


「………つか」


 バイトの従業員は当然いる。そもそも納詫はバイト禁止とかじゃなかったはずだ。男性用はグラッジが着ているような暗めの制服に装飾もろくにない黒エプロンだが、女性用がひどかった。


「丈のクソ短ぇ上にクソフワフワしたフリルスカート、黒なのはまあ良いがクソ装飾過剰のエプロン……あのクソマスター趣味が良いな」


 注文を処理しながらボソボソと呟く。


 マスターは店員に着せた後バレないように盗撮してる、まあさっさと捕まれ。


「失礼な。無許可ではあるけどオレは一切やましい目的の写真はとってないからな」


「おァ? 口に出てたか」


「パンツ見えるような写真を撮ったらそれこそ犯罪じゃないか。オレは犯罪者になりたい訳じゃない。可愛いモノを愛でたいだけだ」


「さいで」


 無許可の地点でアウトだよ。


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