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 30s   作者: リョウゴ
万魔剣製と遊園地蹂躙
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鋼鉄人形



 識杏を抱えて走る。


 識杏の言うとおりに走った先にあるのはこの遊園地の事務所だったと俺は記憶している。恐らくは真っ直ぐ外に逃げるよりも安全だろう。軍が来るはずだからだ。一般の客が今どうなっているかは分からないが、それらに関しては気にしていない。


 何故ならば。


「っ!!? 父さん……」


 識杏がじたばたと腕の中で暴れる。識杏が降りようとするなら抵抗する理由はないので力を緩めると、識杏はばっと俺から距離を取った。


「よっす、止水。話は聞いていたが本当にいたんか!」


 父さんは笑いながら近づいてくる。


「あー。うん。俺のことは良いから」


「おやその子は……識杏ちゃんか? 大きくなったなー!」


「父さん……話を聞いてくれる?」


「分かってるから睨まないでくれ息子よ……民間人の避難はちゃんとやってる。この俺は逃げ遅れが居ないか確認しに来てるわけだよ」


「そっか……良かった」


「止水の同級生の子達がちゃんとやってくれたお蔭で魔獣も落ち着いた。目撃された黒い鎧と交戦中らしいが」


「任せて来たから知ってる」


「……そっか。ただなぁ、どうしたってこんな急にぞろぞろと来たんか不思議だよな」


 それは識杏を狙ってのことだろう。識杏に大規模に仕掛けるだけの意味があるのだろう。


「……父さん、識杏を任せても良いか?」


「何しに行くつもりだ?」


「そりゃ、あの黒い鎧をしばき倒しに」


 紫野と藍逆を思い出しながら提案した。黒い鎧さえ無力化してしまえば撤退するのではないかと言う考えもあった。


 けれど父さんはそれを一秒も考えずに否定する。


「止めとけ。いつでも助けに入れるようにしてるが、必要無さそうだからな」


「そうなのか?」


「それよりも脅威度の高い奴を抑えてる方……いや、これはお前が介入しちゃいけないか。取り敢えずこんなだだっ広い場所で立ち話もなんだ。歩こうか」


「…そうだね」


 父さんはそう言うと今俺達が向かっていた方角に歩き始める。


「───強そうな奴、はっけーん」


 軽い声色が降ってきて。そして、父さんは胴体から上下に真っ二つに成った。


「………は?」


 分断された父さんの体の前に一人の男が立っていた。抜き身の刀を担ぎ、左目に眼帯をした男だ。恐らくはこの男が父さんの腹をかっさばいたのだろう。


「酷いなぁ、人形とはいえ、痛いんだからね?」


 父さんはまるで生きているかのようにそう言いはなった。なんてことはない、そういう能力だ。


 痛いとは痛覚ではなく、単純に能力の負荷において一体重傷を負うことが痛手だと言うだけだ。多分。もしかしたら本人の意識の殆どをここにおいていたのかもしれない。


「あれ? 綿? もしかして"鋼鉄人形"?? うっわぁ、これはいいなぁ!」


「斬られた俺は良くないけどね」


 父さんの斬られた断面からは綿が出ている。血も、内臓もない。真っ白な綿だ。


 父さんは、人形である。体は綿と布で出来ている。しかも体をいくつ造っても問題のない複製自由の能力。まあ、今日は母さんと一緒に来ているのだから本人は居るだろうけれど、恐らく表には出て来ないだろう。


「っ!?」


「よっとぉー! んー?」


 間抜けな掛け声で掬い上げるような逆袈裟斬りが識杏に仕掛けられる。体ごと間に入るならばその一撃は速過ぎた。盾を滑り込ませた。


 すると刀が盾に接触する寸前に、刀を止め引き、盾を唐竹割りにせんと刀を振り上げた。


 盾を砕かれる前に俺は眼帯男の脇腹を蹴り飛ばす。


「おうっ! 良い判断だねぇ!!」


 蹴りの感触が甘い。咄嗟の動きで飛び退きそれだけで蹴りの衝撃をほぼ無効化してしまったのだ。それは動きが先読みされていたことに他ならない。


 得物である細く鋭い日本刀を左手で握っている。構えらしき構えをしないでへらへらと笑っているのは余裕からだろう。


「いやぁねぇ? 殺し合い、したかったんだ」


「は?」


「こ ろ し あ い !! 血湧き肉踊る殺意と殺意のぶつかり合い!! 常に死と隣り合わせのスリルを!! 俺は味わいたいん、だ」


 また識杏へ。刀を無造作に振る、その終点に盾を置く。しかし、識杏を守ろうと意識的に前に出た俺に何時の間にか刀の刃が向いている。


 見ていたのに、いつ俺に狙いを変えたのか分からなかった。


 腕輪から飛んだ葉刃を掴みとり振るう。葉刃は根元に大きめの穴が空いていてその部分を握ることが出来るようになっていた。


 両手に葉刃を掴み捌いていく。眼帯男の剣閃は鋭く、速い。おまけに出鱈目で読み辛い。縦横無尽に襲い来る刀を慣れない双剣で立ち向かうのはなかなかに難しい。


「ははっ!! いいねいいね!! 最高だ!!」


 眼帯男は高揚した様子で叫ぶ。捌ききれない一撃は当たる寸前に意識を引き延ばして盾を挟み込むことで対応しているがこのままではマズい。


 まずそもそも俺の間合いに眼帯男が入っていない。前に出なければいけないのに、猛攻が続き出ることが出来ない。


「ほらほらどうした!! そんなもんか!! そんなもんなのか!!?」


「るっせぇな!! 幻闘流疑似魔法《風雅(ふうが)》!!」


 荒れ狂う暴風が葉刃を包む。風の勢いを乗せた突きを放つ。触れれば切れる風の前に眼帯男は大きく飛び下がった。


 俺はそのまま螺旋を投げ放ち、追撃を仕掛けるが眼帯男には刀で弾きながら身を反らされて避けられる。


 腕輪から剣を抜き放ち、相変わらず左手に葉刃を握ったままもう一度攻勢に出る。


「──止水くんっ!!」


 識杏の声だ。一瞬で状況を確認した俺は敢えて葉刃をバラまいてから飛び下がる。左手は魔弾を放てるように空けた。


 次の刹那に落ちてくる何か。慌てて下がった眼帯男に葉刃が殺到するが、まだ同時となると直線的になってしまうのが徒となったのか全て弾かれてしまう。


「鋼鉄人形、お目にかかれるとは!」


「褒めても何も出ないよ?」


 そう、俺が先居たところに降ってきたのは父さんだ。全身を金属の光沢に輝かせて拳を構える。まさに鋼鉄人形と言うわけであり、異名の由来はこの姿だ。


「ヤバそうなので母さんに頼んだら大喜びでやってくれたよ」


「だろうな」


 鋼鉄化。それは母さんの能力。触れるものを金属に変えてしまう能力で、昔は殆ど制御できなかった能力らしい。己の身を金属にして戦うことも他人を金属にしてしまうことも出来る。


 父さんは人形だ。母さんの能力は人間であればハイリスクハイリターンである能力であったが人形にリスクなどない。詰まるところ金属になったところで得しかない。


「さあ、眼帯のお兄さん? そこの愚息はおいといて俺と殺し合いしようじゃないか!」


「いいねぇそいつぁ!!! 強い奴はぁ、大歓迎だぜ!!」


 どうするかなんて分かり切っている。介入する必要は無い。明らかに父さんの方が場数を踏んでいて尚且つ地力も強い。そしていま守るべきは識杏だけ。


「別に俺はプランBにおいて主力を抑えれば良いってわけだ!! おまえを抑えれば十分だろ!!」


「プランB? それに俺は一人じゃない。俺一つ抑えたところで」


「知ってんぜ? マトモな頭は一つなんだろ!? 他はほぼ自律出来てもまともに俺みたいな奴と渡り合えるのは一つだけってな!! これでも俺ぁ随分まともじゃねぇ自覚がある、そんな俺を余所見しながら抑えられるとでも思ってるならさっさと死んでくれよな!!」


 斬り合い殴り合いながら会話を続ける2人。


「あの神官は今回で目を捧げるつもり出来てやがるからな!! 俺はお前と殺しあえれば良いが!! 精々頑張ってみやがれ!!」


 眼帯男の目が、俺を見た。


「ただ一つしかない目で余所見って? 余裕だな!」


「殺し合いのスパイスだ、楽しく殺ろうぜっ!!」


 ベラベラと喋った眼帯男の嗜虐的な笑いに。とても、いやな予感がした。


「止水くん……行こう?」


「そう、だな」


 識杏は、俺が守らないと。


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