知っておくべきだったこと
月の一部をまばらな雲が覆い隠す中、空港の滑走路には照明が灯り、飛行機が規則正しく離着陸を繰り返していた。
空港ターミナルの中では、旅行者たちがそれぞれの目的地へ向かって行き交っていた。スーツケースを引く者もいれば、フライト情報の表示板を確認する者もいる。夜遅い時間にもかかわらず、思っていたほど静かな場所ではなかった。
俺はスマホを取り出し、画面に目を落とした。
22:00。
「おお……本当に遅い時間になったな」
俺はスマホをポケットにしまい、スーツケースの取っ手を握って出口へと向かった。
ついに……
日本だ!
俺の顔には満面の笑みが浮かんでいた。どれだけ抑えようとしても、興奮を隠すことができなかった。
これまで東京の街並みを写した写真や、その雰囲気を紹介する動画を何度も見てきた。だが、実際に自分の目で見るのは、まったく別の体験だった。
光、そして日本語で書かれた看板、入り混じるさまざまな音……すべてが、まるで別世界に足を踏み入れたかのようだった。
「この街……本当にキラキラしてるな!」
俺は顔を上げ、窓に反射する光を眺めていた。しかし、ある照明のまぶしさが目に飛び込んできて、思わず目を細めた。
「うわっ! 思ってたよりまぶしいぞ!」
落ち着け、ハリール。楽しむ時間はまだまだあるんだ。
そのとき、突然スマホが鳴った。
「ん?」
ポケットから取り出すと、画面には一つの名前が表示されていた。
母さん。
俺の笑顔が少しだけ消え、代わりにぎこちない笑みが浮かんだ。
「あはは……そりゃそうだよな」
また心配してるに違いない。
電話に出ようとしたが、時差のことを思い出して手を止めた。
ちょっと待ってよ、母さん……こっちはもう遅い時間だけど、そっちはまだ……
そこで、俺の思考が突然途切れた。
目の前で画面の色が乱れ、幾重もの線が入り混じる。さらに、着信音まで途切れ途切れになり、まるで何かに喉を締めつけられているかのような音になった。
「……は?」
俺はスマホを顔に近づけ、眉をひそめた。
何だこれ? もう故障したのか?
確かめようとするよりも早く、突然、激しいめまいが俺を襲った。
周囲の照明が揺らぎ、一瞬暗くなったかと思うと、再び明るくなった。まるで空港全体が目の前で点滅しているかのようだった。
俺はその場に立ち止まった。
何が起きてるんだ?
ほんの一瞬、周囲の空間を認識できなくなったような感覚に襲われた。自分と周囲のあらゆるものとの距離が消えていき、まるで何かに現実そのものから引き離されそうになっているかのようだった。
自分が本当に同じ場所に立っているのかさえ、分からなくなった。
そして……
すべてが途切れた。
めまいは消え、周囲から切り離されたような奇妙な感覚もなくなった。照明は再び安定し、旅行者たちは何事もなかったかのように歩き始めた。空港の喧騒も元に戻っていた。
俺はスマホを凝視した。
画面は正常に動作しており、着信もまだ続いていた。
「はあ!? 今のは一体何だったんだ!?」
俺は顔を上げ、何か異変が起きた証拠がないか、周囲を見回した。
だが、誰も何かおかしなことが起きた様子を見せていなかった。
全部、俺の気のせいだったのか?
「やばっ! 母さんを待たせたままだ!」
俺は慌てて電話に出た。
「はい、もしもし!」
母さんの声が聞こえてきた。少し聞いただけで、母さんが心配していたことが分かった。
「うん、うん! 今、着いたところだよ!」
俺はスーツケースを引きながら、出口へ向かって歩き続けた。
「あはは、返事が遅くなってごめん。ちょっと忙しかったんだよ。ほら、分かるだろ? 空港ではいろいろ手続きをしなきゃいけないからさ……」
少なくとも、完全な嘘というわけではない。
実際に忙しかったのは確かだ。ただし、本当の理由は空港の手続きではなかったが。
外へ出ると、乗客を待つタクシーが何台も並んでいた。夜の冷たい空気が肌に触れ、俺は目の前に広がる明るい通りをしばらく眺めた。
「うん、今ちょうど外に出たところだよ。これからタクシーに乗るね」
俺は一台のタクシーに近づき、スーツケースをトランクに入れてから後部座席に乗り込んだ。
母さんとの通話を続けているうちに、この電話は永遠に終わらないんじゃないかと思い始めた。
「分かったよ。ホテルに着いたら連絡するから。俺は元気だし、そんなに心配しなくても大丈夫だって。もう子供じゃないんだからさ」
母さんは、俺の言葉を信じていないかのように、すぐに返事をしてきた。
「はいはい、分かったよ! ちゃんと気をつけるから!」
ようやく電話を切ることができた。
「はぁぁぁぁ!」
俺は座席に頭を預け、長いため息をついた。
「この電話、永遠に終わらないかと思ったぞ!」
まあ、ホテルに着いたらメッセージでも送っておこう。
顔を上げると、バックミラー越しに運転手と目が合った。彼は俺が行き先を告げるのを待っていた。
……
あ。
そうだった。
俺、行き先を伝えずにタクシーに乗っちゃったのか。
さすがだな、ハリール。最高のスタートじゃないか。
俺は姿勢を正し、自信を取り戻そうとした。
練習してきた日本語を使うときが来た!
少し顎を上げ、持てる限りの自信を込めて口を開いた。
「東京アマンホテルまでお願いします!」
運転手はうなずいた。
「かしこまりました」
エンジンがかかり、タクシーが走り出した。
……
やった!
あはははは! 失敗しなかったぞ!
俺は窓の外へと視線を向けた。
光に彩られた東京の街並みと高層ビルが、次々と目の前を流れていく。窓ガラスには自分の顔が映っていた。俺は黙って街を眺めながら、ずっと訪れたいと思っていた場所に、ようやく自分がいるのだという事実を噛みしめていた。
本当に、新しい始まりだ。
そのときの俺が望んでいたのは、ただホテルに到着し、ゆっくり休んで、翌朝になったら街を散策することだけだった。
それが俺の計画だった。
そして、その計画は十分に簡単なものに思えた。
……
道路の明かりの中を遠ざかっていくタクシー。その車を、空港の出口付近に立つ一人の人物が目で追っていた。
その人物は、細かな金糸が織り込まれた白いローブを身にまとい、長い髪を肩の周りに垂らしていた。夜風が吹くたび、その髪がそっと揺れた。
タクシーが完全に見えなくなるまで、その人物は身動き一つしなかった。
そして……
その顔に、温かな笑みが浮かんだ。
---
翌朝……
俺は鏡の前に立ち、シャツのボタンをきちんと留めてから、うっとりと自分の姿を眺めた。
「今日も最高だな、俺!」
俺は少し顎を上げた。
「今日のハリール……いや、今までで一番イケてるぞ!」
「あはははは! おいおい、もう自分を褒めるのはやめろよ、俺! 恥ずかしくなっちゃうだろ!」
ふと動きを止め、周囲を警戒するように見回した。
もし誰かに自分と会話しているところを見られたら、間違いなく頭がおかしいと思われるだろう。
俺は首を振ってその考えを追い払い、靴ひもを結ぶために身をかがめた。結び終えるとスマホを取り出し、時刻を確認した。
午前8時8分。
「うーん……母国じゃまだ早い時間だな」
俺はしばらくスマホの画面を見つめた。
母さんにメッセージでも送っておこうか?
少し考えたあと、スマホをポケットに戻した。
「いや、あとで電話すればいいか」
部屋を出て、後ろ手にドアを閉めた。
---
通りに出た瞬間、俺は足を止め、周囲の建物を見渡した。
「素晴らしい……美しい……感動的だ!」
俺の笑顔がますます大きくなった。
「そうだ! ここに来てからずっと言いたかった言葉は、これだ!」
俺は突然、人差し指を立て、まるで重大な発見をしたかのような仕草をした。
「そして……いよいよ、最も重要な時間だ!」
俺は悪巧みをするように目を細め、スマホを取り出した。
「俺が日本に行くって言ったとき、信じなかった連中に、思いっきり自慢してやる時間だ!」
あははははは!
フロントカメラを起動し、録画を始めた。
「うおおお! みんな、こんにちは!」
「ああ、なんて最高の気分なんだ!」
俺は顔をカメラに近づけ、まるで重大な秘密を明かすかのように声を潜めた。
「この気分の正体、知りたいか?」
満面の笑みを浮かべる。
「それは……ざまあみろって気分だ! 間違いない!」
あははははは!
俺はカメラを周囲の通りや建物に向け、それから再び自分の顔を映した。
「みんな、俺が今どこにいるか分かるか? 日本だ! そう、本当に日本にいるんだ!」
俺はレンズに向かって指を突きつけた。
「そうだよな、みんな驚いてるだろ! でも、知ってるか? 俺をバカにしてきた連中の血圧を上げるには、ショックを与えるのが一番なんだ!」
俺は笑いながら、さらに続けた。
「俺の計画なんて、ただの失敗する夢だって言ってたのを覚えてるか?」
わざとらしく頬をかき、気まずそうな顔を作った。
「まあ……確かに、その九割は失敗してるけどな」
俺は大げさに悲しげな顔をして首を振り、それから拳を突き上げた。
「だが、問題ない! 生きている限り、俺は挑戦し続ける! だから、俺を疑ってた連中……悔しがるがいい!」
あははははは!
俺は録画を止め、動画をさっと確認して満足げにうなずいた。
「よし。送るのはあとでいいな。最高のタイミングを見つけてから送ってやる」
スマホをポケットに戻し、両腕を広げて朝の空気を吸い込んだ。
「ああ……最高だ」
朝の風は暖かく、街は新しい一日を迎えようとしていた。
俺は目の前に伸びる道を見つめた。
「よし、ハリール……この新しい世界で、最初の一歩を踏み出すときだ!」
俺は一歩前へ進んだ。だが、向かい側の歩道に立つ人物が目に入り、足を止めた。
思わず動きを止めてしまった。
この距離からでは顔立ちまではっきり見えなかったが、その姿は少女のように見えた。
ん? あの子は誰だ?
理由は分からなかった。だが、何か奇妙なものに引き寄せられるように、俺は彼女を見つめ続けていた。誰なのかさえ知らないのに、どうしても目をそらすことができなかった。
そして、俺が再び歩き出そうとした、その瞬間……
ビーッ! ビーッ!
「はっ!?」
音のした方向へ振り向いた。
一台のトラックが猛スピードで俺に向かって突っ込んできていた。運転手はブレーキを踏み、必死に停止しようとしていた。
「お、おい、おい、おい! ま、待っ……待ってくれ!」
俺は目を見開いた。
「こんなの、嘘だろ!?」
アニメや漫画で、こんな場面を何度も何度も見てきた! でも、それを現実世界で自分が体験することになるなんて!?
トラックがものすごい勢いで迫ってくる。その一方で、周囲のすべてがゆっくりと動いているように感じられた。
動け! 動けよ、ハリール!
だが、俺の足は動かなかった。
本当に死ぬのか、俺!?
俺は苦労して唾を飲み込んだ。
しかも、どうしてだ!? ただ朝の散歩を楽しもうとしていただけなのに!
そのとき、恐ろしい考えが頭に浮かんだ。
まさか……俺は日本で有名な殺人鬼、トラックちゃんの犠牲者になるってことか!?
「いやいやいや! 冗談を言ってる場合じゃないだろ!」
次の瞬間、誰かの手が俺の肩を強くつかんだ。
「はっ!?」
その人物は、俺を勢いよく後ろへ引っ張った。
ヒュンッ!
トラックが目の前を通り過ぎた。ほんの一瞬でも遅れていたら、衝突していたと思えるほどだった。
俺は慌てて頭や胸、腕を触って確かめた。
よし……どうやら、まだ体はバラバラになっていないらしい。
俺は安堵の息を吐いた。だが、背後から声が聞こえてきた。
「信号が赤だったぞ」
「え?」
俺は動きを止め、それからゆっくりと声の主へ振り返った。
信号機に目を向けた。
確かに赤だった。
数秒間それを見つめてから、俺は助けてくれた人物に視線を戻した。
「ほ、本当に……赤だ!」
短い沈黙が流れた。
ちょっと待て……
俺の笑顔が引きつり、額から汗が流れ始めた。
つまり、俺は信号を見なかったせいで、死にかけたってことか!?
……
俺はどうにか立ち上がり、気まずそうに頭をかいた。
くそっ……今頃、信号を確認せずに道路を渡ろうとしたバカだと思われているに違いない。
俺は心の中でため息をついた。
なんて最悪な始まり方だ。
俺は頭を下げ、たった今助けてくれた少年に謝った。
「あははは……俺のために、わざわざ手間をかけさせてごめん」
だが、彼をよく見たとき、俺は何か奇妙なものに気づいた。
どう説明すればいいだろう?
彼は少し俺に似ていた。身長もほぼ同じくらいで、髪は茶色、目も茶色だった。
彼は俺に微笑みかけた。
「旅行者か?」
俺はうなずいた。
「あはは、まあ、そんなところだな」
彼は信号機に目を向け、それから再び俺を見た。
「それなら、信号を確認せずに道路を渡ろうとした理由も分かるな」
……今、こいつにバカにされた気がする。
だが、反論することはできなかった。何しろ、ほんの数秒前に命を救われたばかりなのだから。
あははは……まあ、気にしないでおこう。
「実は、周りの景色にちょっと見とれてたんだ」
だが、俺が言っていたのは、正確には街の景色のことではなかった……
さっき見かけた、あの少女のことだ。
もちろん、そんなことを彼に話すのは賢明ではないと思うが。
少年は再び俺を見た。
「君、アラブ人なのか?」
俺は少し目を見開いた。
「どうして分かったんだ?」
彼は軽く微笑んだ。
「まあ、君が話しているのを聞いて、そうじゃないかと思っただけだ。それに、君があんな面白い感じで自撮りしてるところも見てたからな」
くそっ! こいつ、まだ俺をバカにし続けるのか!
この街の住人には遠慮ってものがないのか!? おいおい、俺にだって守るべきプライドがあるんだぞ!
俺は気まずそうに頭をかいた。
「あははは……悪い、ちょっと興奮してたんだ」
彼は穏やかに微笑んだ。
「まあ、気持ちは分かるよ。実は俺も、アラブ人と日本人のハーフなんだ」
「おお! 本当か!?」
「ああ。アラブ系のルーツはどこなんだ?」
「うーん……チュニジアだよ」
彼は一瞬動きを止め、それから驚いたように俺を見た。
「チュニジア!? 本気か? 俺もチュニジア出身なんだよ!」
「あはははは! 信じられない! すごい偶然だな!」
少年は軽く笑った。
「世界って、本当に狭いもんだな」
それから、彼は俺を少し眺め、さらに言葉を続けた。
「それに、俺たちって少し似てるよな? 鏡の前に立ってるみたいだ……まあ、俺のほうがイケメンだけど!」
……おい! また侮辱かよ!?
「あはははは!」
少年は相変わらず穏やかな笑みを浮かべていた。
「まあ、健康面では君のほうが優れてるな。俺はちょっと痩せすぎてるから」
あははは……なるほど、そういうことか。
俺も彼に笑顔を返したが、気の利いた返事が思いつかず、結局笑うだけにとどめた。
ピピッ! ピピッ! ピピッ!
彼の腕時計が鳴った。
彼は時計を確認し、それから顔を上げて俺を見た。
「ああ、悪い。大事な約束があるんだ。そろそろ行かないと。それじゃ、会えてよかったよ」
俺も笑顔で返した。
「俺もだよ。時間を取らせて悪かったな」
彼はうなずき、背を向けて立ち去った。
俺は彼が遠ざかり、人混みの中に消えていくまで、その姿を見送った。
あっ、そうだ!
俺は大事なことを思い出し、片方の拳をもう片方の手のひらに打ちつけた。
名前を聞くのを忘れていた!
彼が去っていった方向を、俺はそのまま見つめ続けた。
まあ、聞いたところで教えてくれたかどうかは怪しいけどな。
俺は首を振り、それから街へと視線を向けた。
「とにかく……」
満面の笑みを浮かべ、両腕を空へと突き上げた。
「新しい冒険の始まりだ!」
「うおおおおお!」
---
そう、確かに素晴らしい冒険だった。
もしかすると、俺が耐えられる限界を超えるほど刺激的だったのかもしれない。
まず、スマホが奇妙な形で壊れた。
それから、喫茶店の店員らしい制服を着た少女と出会った。誰にも見えていないような気がして、周囲の人々から無視されていると感じていたとき、彼女だけが俺に違った態度で接してくれた。
そして、スマホを修理できる場所を探すのも手伝ってくれた。
もちろん、俺の美貌と素晴らしい人柄のおかげで……
彼女の個人の電話番号まで手に入れた!
あはははは!
だが、どうやら俺の幸運はそこまでだったらしい……
---
まさか、日本への旅がこんな形で終わるとは思ってもいなかった。
俺の足は線路の端で金属部品の間に挟まっており、どれだけもがいても抜け出すことができなかった。
顔を上げると、運転手が制御を失ったトラックが、滑りながら俺に向かって迫ってきていた。その車体には、大きな広告看板が取り付けられていた。そこには眠っているコアラの写真と、こんな文句が書かれていた。
「絶滅する前に、平和に暮らそう!」
なんてくだらない冗談だ……
笑う時間すらなかった。
すぐ近くでは、ナイフを持った男が俺に向かって走ってきていた。一方、列車の音はどんどん大きくなり、近づいていることを告げていた。
そのうえ、空からは飛行機まで墜落してきていた。
ははは……こんな形で人生が終わるなんて、あり得るのか?
死にたくなかった。まだ訪れたい場所がたくさんある。経験してみたいことも、叶えたい夢も残っていた。まだまだ時間はあると思っていたのに。
母さんだって……昨日から一度も電話していなかった。
せめて一度くらい、電話しておくべきだった。
俺は最後の力を振り絞って足を引き抜こうとしたが、やはり無駄だった。
そのとき、彼女が見えた。
数メートル先に立っていたのは、細かな金糸が織り込まれた白いローブを着た少女だった。周囲の混乱のせいで顔立ちはよく見えず、その顔は謎めいたままだった。
あれは、今朝見かけた少女と同じじゃないか!?
彼女は奇妙なほど落ち着いた様子で俺を見つめていた。逃げようとも、身を守ろうともしなかった。
彼女を見つめるたびに、何か得体の知れない感覚が湧き上がってきた。説明することも、その正体を理解することもできない感覚だった。
やがて、彼女の唇が動いた。まるで俺に何かを伝えようとしているかのようだった。
何を言ってるんだ……?
声は聞こえず、唇の動きから言葉を読み取ることもできなかった。
そして次の瞬間、凄まじい爆発音が響き渡り、光がすべてを飲み込んだ。
街。
空。
音。
そして、静寂が訪れた。
もう痛みは感じなかった。自分の体の感覚さえなかった。
それでも、たった一つの疑問だけが頭の中を巡り続けていた。
あの少女は、一体誰だったんだ?
答えは見つからなかった。
そして数秒後、俺は闇に包まれた。




