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紅の赤  作者: 青階透
鬼殺し編Death of Shadow Village編
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外伝 もう一人の妖気法使い


 特別企画です。エイプリルフールなので何か書いてみました。

 セリフとかは少ないのですが、本編ではほとんど出番のないキャラクターの外伝を特別に書いてみました。そんなに長くはないです。あと、この内容、一部これから書く影村寿雄と遺書と被ります。


 1914年 東京


 裕福でもなければ、貧乏でもないそんな家柄の私。家はここが江戸と呼ばれていた頃から続く商人の家庭。これといった才能もなければ、欠点もない。まさに凡人だった。


 私の名前は向月輝音(むかいつきてるね)。ただの一四歳の少女だ。多分、それなりの男の人と結ばれて、それなりの幸せな人生を歩むんだろう。

 

 そう思っていたある日、一人の老人が家を訪ねてきた。彼は自分を『———』と名乗った。その人は私を見るなり、特別な才能があると言い放った。それは『妖気法』と呼ばれる神秘の力らしい。


 そこから私の人生は一変した。

 この物語は決して未来に残らない凡人、二人の妖気法使いに隠れたもう一人の妖気法使いの人生である。



 Scene1


 木製の民家。ガラス戸の前に一人の老人が佇んでいた。その老人の後ろには二人の若者がついており、何かただならぬ雰囲気を醸し出していた。

 見知らぬ来訪人に母が対応した。父と二人の兄は仕事で家におらず、私は3人の弟妹をみながら、耳を澄まして四人の会話を聞いていた。


「お宅の輝音さんには特別な才能がある。どうか、ワシの元で教育させてもらえませんか」


 老人のそんな言葉が聞こえた。対応している母は言葉に理解を示せず。混乱していることを、何故か察することができた。

 老人は言った、私に特別な才能があると、しかしそれは実感できない。私は普通の人間だ。昔いたと言われる武士さまというものとは違うのだ。


「そんなわけがありません。輝音はただの女の子なんですよ。どこの誰かも知らない人に預けるなんてできません」


「心配していることはいいことです。ですが、ワシはあの才能を開花させずに生涯を終わらせてしまうことなんてできません。だから、どうか信じて。YES と言ってください」


 老人と母の話し合いは長く続いた。この会話の結末が私の人生の分岐点であることはなんとなく察していた。私に一体どんな才能があるのか。それは真実であるのか。


 もっと詳しく話を聞こうとしたその時、双子の妹が共鳴したように泣き出した。咄嗟に二人をあやすために意識をそちらに向けた。どうやら部屋が急に冷えていたようだ。


 しばらくすると老人たちは帰って行った。母は何事もなかったように居間に戻ってきた。居間に入るなり何かを感じ取り、そのまま私の顔を見た。その視線はどこか軽蔑するような。まるで人ではないものを見るような冷たい視線だった。


「部屋から出て自室に居なさい」


 冷たく言い放たれて、私は無理やり居間を追い出さられた。いつもの母とは異なる雰囲気、不気味さで肌が凍えた。


 その日の晩は、何故か私の分の食事だけが無かった。それについて問いただす父たちに、母は耳打ちで何かを話した。すると父は顔を真っ赤に染めあげた。急に立ち上がり、私の腕をい力強く掴み、家から追い出した。


「お前は、化け物だ。俺の子じゃない。二度とその顔を見せるな。どこかでくたばれ」


 そう強く言い放ち、扉を大きな音を立てながら閉じた。冷たい夜風が私の肌を撫でる、暗闇の怖さと冬の寒さに当てられ、私は泣きながら、家の戸をなん度も叩いた。しかし、彼らはそれを全て無視した。


「うわェーーーーーーーん」


 泣いても叩いても、その戸は開かない。しかし、必死に叩いたその一撃はいきなりガラスを粉砕した。衝撃で戸は大きく吹き飛び、破壊された。

 血まみれの手を見て、家族は全員が恐怖の視線を向けた。その瞬間に、冬風が吹き、それが父の手を凍らせた。そして砕け散った。赤い氷が廊下に散らばり、また風が吹いた。今度は母が全身凍りついた。


「どうして」


 母の氷像が倒れて砕けるのを見て、そのまま私は意識を閉じた。最後に聞こえるのは、大事な家族の悲鳴だった。


 目が覚めると、そこは古民家だった。私の顔を覗き込んでいたのは、昼に現れた老人だった。


「起きたか」


「誰なの?ここはどこなの?私をおうちに帰して」


 狭い部屋を見渡すと、老人の後ろにいた二人の若者も一緒にいた。一人は野生児のような服を、もう一人は良い所の家の人が来ているような上等な服を着ている。まるで正反対だった。そして、目の前の老人は浮浪者のようなボロキレを着ている。


「ワシは『———』だ。今日から君の先生だよ。彼らは緋麿(ひまろ)寿雄(としお)。二人ともワシの教え子だ。今日から二人は君の兄だ」


「おうちに帰して」


「無理な相談だな。輝音ちゃん、君の家族はみんな君が殺してしまった。君に帰る家はもうない」


 残酷な言葉だった。あの時見た凍りつく母の姿は真実だったのか。


「君には特別な力がある。でも、それを使いこなせないと、君の周りの人に大きな被害が出る。だから、これからはワシが君の先生だ。いいね」


 私は家族を殺したという真実に大きく泣いた。大きな声で、泣き叫んだ。家族との思い出が今でも込み上げてくる。

 自分が化け物なんだと実感した。すると、再び冬風が古民家を襲った。周囲の木々が凍りつき、全てを砕く。


「寿雄ッ!今すぐ彼女の記憶を奪え」


「任せろ。緋麿()ィッ!『百々眼目森(トドメメモリー)』ィ!!」


 野生児風の若者がもう一人の男にそう指示した。そして、指示された若者は私に左手のひらをかざした。そして、

 瞳が瞬きをした。


 自分の人生が奪われるような感覚に襲われた。そして実際に全て塗り潰されたかのような感覚に襲われて、私は再び意識を閉した。



 Scene2



 一晩空け、私は胸に空いた穴に違和感を感じながらも、彼らに続いて古民家を出た。老人たちは私が眠りについている間に、服を用意してくれたそうです。

 服は寿雄が知り合いのツテを使って、海の向こうの上等品を取り寄せてくれました。


「ありがとうございます。寿雄様」

「いいや。妹のためだ、それと様はいらねぇ。俺のことは兄と思って軽く呼んでくれや。緋麿兄ィも同じだな」


 向月輝音はそこから、彼らと共に生活を送る。この特別な才能を使いこなすために。

 先生は私に告げた。その才能は妖気法能力によるものだと。そして彼女の力は『雪女』と呼ばれる妖怪に近い。吹雪を操る力。訓練せずに能力を発現させる人は、緋麿兄様と私くらいらしいのです。相当特別な存在だと。


 訓練の初めは妖気法能力の基礎から、妖気を身に纏うところから始まりました風に吹かれながら、ひたすらに走った。隣では、寿雄兄様が右手を地面に向けて、新しい能力の開発を、緋麿兄様は地面に胡座をかいて、小石などを浮かせる訓練を行なっていました。


 寿雄兄様はどこでそんなにお金があるのかわからないくらいに、たくさんお金を持っていました。それと昔話をあまりしてくれなかったのです。いつも町の降りると美味しいものを買ってくれて、私を本当の妹のように可愛がってくれました。しかし、本当に自分の過去には踏み込ませてくれなかったのです。人の過去は能力で平気で覗くくせにそこは不公平だと感じていました。


 緋麿兄様は、対照的に少し私に厳しく、私を甘やかしてくる寿雄兄様によく怒っていました。それでも私が怪我をしたら一番に駆け寄ってきてくれます。やはり優しい人です。寿雄兄様に聞くと、彼は風の民と呼ばれる山に暮らしていた民族の末裔らしく、代々、天狗の血と呼ばれる特殊な酒を飲んで風を操作する能力を獲得しているようです。


 先生は、みんなの父親のように振る舞っていました。二人の兄のいいところをつなぎ合わせたような人でした。。時に厳しく時に優しい。そして、いつも何か、外国語の本を読んでいました。

 兄様たちに聞いたけど、突然現れて、二人を教え子にしたらしくて、どこから来たかも分からないし、どんな能力を持っているのかも分からないのです。


 三人との生活が続いて半年、全員が理想の能力を手に入れたと感じた時、その時は訪れました。先生が心臓の病で倒れてしまいました。そして、治療の当てを知っていると、そして『必ず戻る』と言い残して、私たちの元から去ってしまいました。その後、先生は二度と私たちの前に姿を現すことはなかったのです。


 それから一週間、街に降りた寿雄兄様が血まみれで帰ってきたのです。緋麿兄様が問いただしても、兄様は復讐を果たしたとだけ言って、暗い顔のまま眠りにつきました。それから三日、兄様も姿を隠してしまいました。時折、私たちの当てに手紙が届きます。どうやら日本中を旅しているらしいのです。


 そこから私と緋麿兄様の二人で修行を続けました。一年経ったある日、兄様は自分も弟子を取ると言って、街から才能のある子供達を一〇人ほどつれてきました。どうやら、寿雄兄様が旅の途中で弟子をとったことに感化されたのでしょう。

 緋麿兄様は私も弟子を取らないのか?と問いかけてきましたが、私はそれを遠慮しました。昔よりは能力を使いこなせるようになったけれど、まだその段階ではない気がしたのです。それに、弟子を取れば、この世界から足を洗うことができないと思ったのです。

 この選択から、私と緋麿兄様との距離を置き始めてしまいました。みんなの服の選択やご飯の調理などは今までよりも大変になりましたが、それでも楽しく暮らしていました。


 緋麿兄様の指導は優しく、弟子の子供達はすぐに成長していった。私はというと、今まで感情の起伏で起こっていた冷風の操作を兄様を参考により簡易的に行えるようになりました。

 人に危害を加えなくなってからは、私も自分の足で初めて街におりました。街に降りる前には、緋麿兄様が新しい服とリボンを買ってくださり、そのおかげで目立たずに街を歩けたのです。


 私も年頃の乙女。西洋から来たという新しい服や流行には目が奪われました。もらったお小遣いで自分で選んだ服なども買って少しはしゃいで、街を楽しみました。そんな中、街を歩く夫婦を見ると、私と同じぐらいの歳の女の子が幸せそうな顔をしていたのが目に入ったのです。

 私はもう一五歳。結婚していてもおかしな年齢ではないのです。でも、私は兄様たちとの、『妖気法使い』としての生活があって、その幸せは叶いません。


 また、いつもの生活に戻りました。でも、私は気楽に街に降りることができるようになって、少し満足していました。

 兄様との会話は減ってしまったけれど、この生活にすっかりなれてしまったのです。それから三年過ぎたある日、街を歩いていると、一人の青年に話しかけられました。その青年は歳は二〇で、少し裕福な家庭の人でした。名前を『康介(こうすけ)』さんと言います。康介さんは私に一目惚れしたといって、道のど真ん中で、求婚されてしまいました。

 私には私の生活があったので、一度保留にさせて欲しいといって、私は緋麿兄様に相談しました。さらに言えば、寿雄兄様にも手紙で相談もしました。二人からは同じ言葉をいただきました。それは、『自分で決めろ』という冷たい言葉でした。でも、なぜか嬉しかったのです。


 私は康介さんと何度もお出かけをしました。時折、緋麿兄様が様子を見に降りてきているのも気付きました。そして、二年ほど過ぎて、私はついに康介さんの求婚を受けました。簡単ですが式もあげました。そこには寿雄兄様とそのお弟子さん、緋麿兄様たちも参加してくださりました。

 それからは私たちは三人それぞれ別の道を進みました。私はこの危険な『雪女』の力を押さえて、新しい家族を得ました。だから、先生たちには感謝をしていたのです。



 Scene3



 結婚してから五年。子宝にも恵まれたある日、私たちの家に寿雄兄様が訪ねてきたのです。兄様は泣きながら自分の罪を私に告白しました。復讐のために家族を捨てたこと、そしてその過去が自分を襲っていると。そして、私に助けて欲しいと願ったのです。


 同様のことを緋麿兄様にも告げたようで私たち三人は再び集いました。相手は寿雄兄様が弟子として育てていた男の子。

 彼は妖気法能力の究極にまで辿り着いていたのです。『鵺』の力は恐ろしく強く。私たちも初めての戦闘ということもあり、苦戦を強いられました。緋麿兄様はこの戦いで次々と育てていた弟子たちが殺されてしまいました。そして最後の一人も目の前で殺されると、怒りに身を任せて攻撃を行いましたが、鵺はそれを簡単に防ぎ、たった一撃を以て兄様を倒してしまいました。幸いにも息はあり、まだ死んではいなかったのですが、とうとう寿雄兄様との二人になってしまいました。


 私は提案しました。私は全ての力を以て、鵺を凍りつかせる。だから、その隙に寿雄兄様に彼の全ての記憶を奪って欲しいと、初めて会った時に、私の本当の家族の記憶を奪ったように、そうすれば勝てると確信したからです。


 その提案を聞いた寿雄兄様は苦しい表情を浮かべましたが、それについて了承してくれました。だから、私は全力で妖気を使いました。凍てつく吹雪が最大に鵺の体温を奪い、体の自由を奪いました。

 そんな中、私の中でだんだんと生命が失われていく感覚に襲われました。体はどんどん冷たくなっていき、髪も肌も雪のように白く染まりました。


 最後に映ったのは、寿雄兄様が鵺に向かって左手を向けた姿でした。そうして視界が砕け、私は、向月輝音は、いいえ。結婚したので、『山門輝音(やまとてるね)』はこの世界から肉体を残さずに消滅しました。

 泣き崩れる二人の兄を残して。



 FIN


 ということで、外伝 もう一人の妖気法使いでした。

 彼女は本編主人公の祖先です。多分、遺書編に名前だけ出ます。


 次いつになるか分からないのですが、首を長くして待っていてください。


 ps.一日で書き上げたから疲れた。

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